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魅惑のご当地お肉料理を食べに行こう!超肉食ライターが案内するミートリップ(肉旅)の世界

魅惑のご当地お肉料理を食べに行こう!超肉食ライターが案内するミートリップ(肉旅)の世界

KINTO読者のみなさん、こんにちは。肉を糧に生きる肉食系ライターの小寺慶子です。雑誌やwebで“食”にまつわる記事を執筆するという仕事柄もあって、食べ歩きは私のライフワークのひとつ。仕事やプライベートで年間に700軒以上のお店を訪れますが、なかでも大好きな肉料理を求めて、全国各地を旅するのが人生の楽しみです。

日本には土地によって、さまざまな肉食文化が根付いており「こんな場所にこんなに美味しい肉料理が!」 という発見がたくさんあります。調理法や料理名も地方や店によって個性があり、こんな「未知なる美味しさの肉料理」を求めて旅することを、私はミートリップ(肉旅)と呼んでいます。気楽なひとりミートリップも気の合う(肉好きの)友人とわいわい出かけるミートリップもどちらも魅力的。今回は、これまでに出合った全国の肉料理のなかでも、とびきり美味しく、印象に残っているお店をご紹介します。その土地の食文化を体感できて「わざわざ旅に出てでも食べたい!」と思えるようなお店をピックアップしました。食欲のギア全開で、最後まで読んでいただけたら嬉しいです。

「えっなにそれ!?」に会いに行こう。「意外」を探すミートリップの世界

さて、食ライターの仕事は、美味しいお店はもちろん、土地の食文化やそれを支えるひとたちの生き方を“伝える”ことでもあります。素敵なお店を見つけたらたくさんのひとに教えたくなるように、私も日頃から“美味しい情報”をキャッチすることを大切にしています。誰かに美味しい情報を伝えて、「行ってみたらすごく美味しかったよ!」と言われるのが嬉しいし、しあわせなご縁をつなぐことができることが何よりの喜びです。

では、肝心要の“美味しい情報”をどのように手にするのか。よく「お店はどうやって探しているの?」と聞かれますが、自分の好みと似ているひとから教えてもらうこともありますし、ネットの位置情報で検索をして、気になるお店に“飛びこみ”で行くことも。ミートリップの楽しみのひとつは地元のひととの交流でもあるので、バーやスナックにふらっと立ち寄ってそこで働いている方におすすめを聞くこともあります。そもそも、「このお店に行きたい!」と目的を持って旅をすることもあれば、とくに予定を立てずに“偶然の出合い”を楽しみに出かけることもあります。地元のひとにとっての「当たり前」も、よそから来た私にとっては新鮮なことが多く「知らなかった!」と感動することも多々あります。

旅先でひとりでバーに入るのは勇気がいるという場合は、宿泊しているホテルのスタッフやタクシーの運転手さんにリサーチするのもおすすめ。ネットにはない“生の声”が、思いがけない良店との出合いにつながることもあるので、地元のひととのささやかな交流も楽しみたいものです。今回、ご紹介するお店のなかにもそうして出合ったお店があります。旅をするなかで「●●が食べたいのですが、おすすめのお店はありますか?」というひとことから始まるコミュニケーションは、きっと素敵なお店とのご縁につながるはずです。以下は、私の経験に基づく、素敵なお肉とお店に出合うための五か条です。皆さんのミートリップの助けになれば幸いです。

鶏、そして牛焼肉。ミートリップ天国、北海道!

北海道は実に魅力的なグルメが満載で、旅の目的のひとつに「食」を挙げる方は多いのではないでしょうか? ラーメンや旬の海産物や新鮮な野菜、果物をたっぷり使ったスイーツに代表されるように“北海道グルメ”の幅はじつに広く、多くの旅人の心を魅了し続けています。そして、お肉においても、北海道のポテンシャルは半端ではありません。日本で一番広い面積を持つ都道府県であり、美しい自然に囲まれた北海道は牛肉と豚肉の生産量が全国トップクラスで、エリアごとにさまざまな食肉文化が根付いているため、ミートリップをするたびに新しい発見があります。

タレか、塩か、それが問題だ。北の大地の鶏グルメ、新子焼き

さて、こんな北海道で私の印象に残る肉どころは、札幌に次ぐ北海道第二の都市と言われる旭川。なにやら街のいたるところに“焼鳥”の看板を見かけます。旭川といえば醤油ベースのラーメンが有名ですが、地元では焼鳥も好んで食べられていると知り、昭和25年に創業した『焼鳥専門 ぎんねこ』に行ってみることにしました。


開店と同時にほぼ満席になる人気店のメニューには“新子焼き”という見慣れない料理名があり、すかさず注文。「新子焼きは少々、お時間かかりますが大丈夫ですか?」と聞かれたので、串ものも一緒にオーダー。ほどなくして運ばれてきたかしわを頬張りながら新子焼きを待っていると、隣席にはひと足先に新子焼きが到着。「すごい!!」という歓声が上がり、期待に胸が膨らみます。待つこと10分。丸皿にドンと盛られた新子焼きがテーブルに置かれ、そのボリューム感に目が釘付けに。

聞けば、新子焼きとは若鳥の半身焼きのことで『ぎんねこ』では、無冷凍の伊達産若鳥を使用しているとのこと。味はタレか塩、初めてならハーフ&ハーフで注文するのがおすすめ。甘めのタレはしっとりと柔らかい鶏肉との相性もよく、塩は肉の旨みをシンプルに味わうのにぴったりです。

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鮮度抜群のサガリに北見焼肉の実力を見たり

もう1エリア、北海道のミートリップで思い出深いのが、人口に対する割合で焼肉店の数が北海道一(長野県飯田市の調査によると、全国でも3位!)と言われる北見。冬には「北見厳寒の焼き肉まつり」というイベントが開催されるほど、焼肉愛が強い地域では、肉には下味をつけず、各人が塩や胡椒などでめいめいの味付けを楽しむという素焼きスタイルが定着。昔は近隣に屠畜場があった名残りからか、どの焼肉店でもサガリ(横隔膜)を扱っているのも特徴です。

北見焼肉の人気店『板門店』の豊穣なる網の上。鮮度バッチリのサガリ(左上)で北見の実力を堪能あれ。

私がめぐった北見の焼肉店のなかでも、煙がもくもくと立ち上がるノスタルジックな店内と肉質の良さが光る『板門店』は、ちょっとディープな焼肉体験をしたい方におすすめ。北の大地で、ロマンあふれる肉のストーリーに出合う旅を満喫してみてください。

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三重県・松阪は牛だけにあらず! 鶏焼肉で白ご飯が止まらない

三重県の松阪市は、肉好きならば真っ先に松阪牛を思い浮かべるほど、全国にその名が知られる和牛の名産地。『和田金』や『牛銀』といった名店を目指して県外から訪れるひとも多い“牛肉の聖地”ですが、一方で昔から地元っ子のソウルフードとして親しまれているのが鶏焼肉です。読んで字のごとく、自分で肉を焼き、味噌ダレにつけて食べるのが松阪スタイルで、つけダレの味も店によって異なります。もともと松阪には、採卵鶏を育てる農家が多く、卵を産まなくなった親鳥を食べる習慣があったことから松阪の食文化のひとつとして受け継がれているそう。

東京にも鶏焼肉が人気の店はありますが、せっかくなら松阪で食べてみたいと思い、勢いこんでトリップ、いや鶏ップ。名古屋から電車に揺られること約1時間半。駅から乗り込んだタクシーの運転手さんに「鶏焼肉の美味しい店はありますか?」と尋ねると「いろいろな部位が食べられるよ」と教えてもらい、街道沿いにある『精肉とり焼 新家』へ。

運転手さんの言葉どおり、タッチパネルのメニューを見るとひね(親鶏)、くび、肝、砂肝、ハラミなどがずらり。


ひと皿がほぼ500円以下という値段も松阪のソウルフードとして長く親しまれている理由のひとつかもしれません。こちらのたれは赤味噌がベースで、まろやかなコクが特徴。お酒もいいけれど、ご飯に焼いた肉をのせて食べるひとが多いというのもうなずけます。牛肉に負けないくらい“主役級”の美味しさを堪能できる鶏焼肉を求めて、一度、松阪に足を運んでみてはいかがでしょう。

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焼肉は“洗う”!? 関西を代表する肉処•京都の独自の焼肉文化

さてさて関西で焼肉というと大阪のイメージがありますが、じつは京都も知る人ぞ知る焼肉天国。もともと「肉といえば牛肉」という土地柄もあって、全国47都道府県の牛肉消費ランキングではつねにトップ3にランクイン。牛肉好きにとっては「京都で焼肉?」ではなく「京都で焼肉!」が正解なのです。高級な肉割烹やステーキ店もいいですが、美味しい牛肉をカジュアルに楽しむなら、焼肉の一択。しかも、京都の焼肉店には関東圏ではあまり見かけない“洗いダレで洗う”という独自の食べ方があり、新しい焼肉の魅力を体感することができます。

“洗いダレ”とは、焼いた肉を透き通った出汁にさっとくぐらせて食べる、京都独自の肉食文化のこと。京都の人気店のなかでも、大衆的な雰囲気と豊富な部位を楽しめるのが、市内のほか名古屋や岐阜、金沢にも店舗を展開する『アジェ』です。ホルモンを塩で食べる習慣がなかった京都に、新しい肉食文化を広めた“塩ホルモンの元祖”としても知られ、鮮度抜群のホルモンを求めるひとで連日大賑わい。

祇園で働く方々にもファンが多いというこの店で、まず注文すべきは名物のホソです。関東ではあまり耳にしない呼称ですが、これはもつ鍋などにもよく使われる小腸のことで、独特の食感と甘い脂が特徴。関西の焼肉店では“天肉(頰肉)”や“アギ(顎肉)”と呼ばれる部位を提供する店も多く、ホルモンが多くのひとに親しまれていることがわかります。『アジェ』では、純白の脂がたっぷりとついた大ぶりなホソが大人気。

アジェ自慢の「ホソ」がこちら。

そのビジュアルからこってりとした味を想像しますが、皮目を香ばしく焼き上げて、ほんのり酸味がきいた専用ダレで“洗って”食べると、ミルキーな脂の風味が口いっぱいに広がります。

こうして独特なタレにくぐらせるのが京都焼肉の特徴。こちらは天肉(頬肉)。

部位や一品料理が充実しているのも人気の理由で、シラズという“牛のフォアグラ”や、フランス料理にも使われるシビレ(胸腺)といっためずらしい部位が入荷することも。もちろん、上タンやハラミといった定番の部位も鮮度抜群で、すこぶる美味です。

私は京都に行ったら、15時から営業※している木屋町団栗店で、昼下がりのホルモンを楽しむのがお決まりコース。土日は行列ができることもあるので、混雑を避けるなら平日の開店直後が狙い目です。煙も味のうち、な気取らない空間で、まずは塩モノやローストユッケなどの刺身からスタートし、辛旨な風味がヤミツキになるチゲをはさんで、タレもので締めるというのが定番です。タレものも“洗いダレ”にくぐらせると、いくらでも食べられそうな気分に。ぜひ、次回の京都旅行では、洗いダレの焼肉を楽しんでみてください。

Map(アジェ 松原本店)→Click!

※お店より:アジェ木屋町団栗店の営業時間は平日16時〜、土日祝15時〜です。刺身は生センマイのみのご提供です。ローストビーフユッケ、ハラミ・サガリユッケ、ローストタンユッケはロースト(加熱)しています。

ジャッキーか88か? 沖縄で夜な夜な論じられる締めのステーキ論争

メディアでたびたび取り上げられるので、ご存知の方も多いと思いますが、沖縄には、お酒を飲んだ締めにステーキを食べるという文化があります。飲んだ後の締めといえばラーメンや、最近だと夜パフェブームもありましたが、ステーキというのは米国のカルチャーが息づく沖縄ならでは。ある時、取材で沖縄に滞在していたときのこと。移動中、タクシーの運転手さんに「沖縄で飲んだ締めにステーキを食べるのは本当ですか?」と聞いたことがあります。運転手さんいわく、幅広い年代層に“締めステーキ”の文化は浸透していて「ジャッキー派と88(通称ハチハチ)派に分かれる」とのこと。その日の夜にハシゴすることを決めて、まずはジャッキーへ。

アメリカを感じさせる『ジャッキー』で、ジューシーなステーキに舌鼓

『ジャッキーステーキハウス』は、1953年に沖縄•嘉手納町に創業した老舗で、1961年に那覇市に移転。古き良きアメリカンダイナーを彷彿とさせる店の入り口には空席状況を示す信号機が設置されており、只今満席(赤)、やがて空席(黄色)、空席あり(青)がひと目でわかるようになっています。

なんとも趣深い『ジャッキー』のお店。

ステーキメニューは3種あり、一番人気はS、M、Lの3サイズから選ぶことができるテンダーロインステーキ。豚骨ベースのスープとサラダ、ライス(もしくはパン)とともにジュージューと音を立てて運ばれてくるステーキの油飛びに注意しながらナイフで肉をカットし、口に運ぶとそのジューシーさに驚きます。

赤身肉のしなやかな旨味と柔らかな肉質に「これなら飲んだあとや深夜ご飯にもぴったり」と“締めステーキ”が定着していることに納得。

Map→Click!

コスパ良し!選べて良し!な88で夜を締める

続いて訪れた『ステーキハウス88』は、国際通りや那覇空港内にも店舗を展開している人気チェーン。よりカジュアルにステーキを楽しめる、セカンドラインの『ステーキハウス88Jr』もこれまた人気です。1955年に『Club88』として1号店をオープンし、1978年に現在の店名に。根強い支持を集める理由は、メニューのバリエーションの豊富さとコストパフォーマンスの高さにあります。※

『ステーキハウス88』のテンダーロイン。

豊富なステーキメニューを用意しており、一頭の牛から3%しか取れないというテンダーロインステーキ(不動の人気No.1メニューなのだとか!)は、やわらかく脂身のないあっさりとした赤身が味わえます。その他、ジューシーな肉質で脂身は程よく甘く、しっかりとした味わいの特上サーロインステーキなど、好みや気分でステーキを選べるのも肉好きにとっては嬉しい限りです。

お肉だけでなく、『88』ではステーキに合うオリジナルソースも豊富です。定番のにんにく醤油や酸味の効いたトマトベースのS1ソース、香ばしさとピリッとした辛味が効いたブラックペッパーソースなどが用意してあり、お気に入りの肉とソースの組み合わせを探すのも楽しいです。

88で選べるのはお肉の部位のみにあらず。ソースも豊富で選んで楽しいお店なのです。

Map(ステーキハウス88 辻本店)→Click!

※お店より:原価高騰の影響から、予告なく価格・内容等、変更する場合がございます。

日本中の食肉文化を目指して、旅に出よう!

駆け足でしたが、全国津々浦々の牛、豚、鶏のご当地グルメ、ご堪能いただけたでしょうか。写真だけでお腹いっぱいかもしれませんが、ご紹介した地域やお店のほかにも、日本にはまだまだたくさんの魅力的な食肉文化があります。もし「このお肉が食べてみたい!」と思ったら、それが旅に出る絶好のチャンス。実りあるミートリップになることを願って。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

Instagram:koderin1224

編集:はてな編集部

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