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離島にいこうよ!離島大好きトラベラーが教えるビギナーでも安心なアクセス性バッチリのオススメ島と島旅のススメ

離島にいこうよ!離島大好きトラベラーが教えるビギナーでも安心なアクセス性バッチリのオススメ島と島旅のススメ

離島の旅ってなんか憧れる。でも、行くのが大変そう……。「そんなことはありません!」と語るのは、離島を愛してやまないトラベラーの大畠順子さんです。国内の70以上の離島を旅した大畠さんが、ビギナーでも訪問しやすい離島と、離島巡りのポイントをたっぷり書いてくれました!


初めまして。大畠順子と申します。

普段はTOKYO FMというラジオ局で広報として働く会社員ですが、休日には日本全国を旅しています。私が足を運ぶのは「離島」。これまで、日本各地の離島、約70島を巡り、離島の魅力、離島ひとり旅の魅力をSNSやブログ、書籍などで紹介しています。

さて、みなさん「離島」と言われて、思いつく島の名前はいくつあるでしょうか。日本は「島国」の言葉通り、6,852の島でできていて、そのうち本土と呼ばれる北海道、本州、四国、九州、沖縄本島を除いた6,847が離島です。すごい数!さらにその内、416島(※)が有人島で、人々の営みがあるのです。

離島にはそれぞれ個性があり、あまり知られていない絶景や、離島ならではの文化や生活が息づいていて、訪れるたびに「自分の知らない日本」に出会えます。つまり、有人島を巡るだけでも、400以上もの「まだ見ぬ日本」を旅できるのです。

離島には、絶海の孤島から日本最秘境とも呼ばれる島、さらには片道27時間かかる島もあれば……、ふらっと気軽に日帰りや1泊2日で十分に楽しめる島もたくさんあり、旅のスタイルは実にさまざま。本稿では、「あまりに遠い島に行くのは難しいんじゃない?」という方に向け、本土からのアクセスが良好で、それでいて離島ならではの個性が十分に楽しめる島をいくつかご紹介したいと思います。

長期休暇が難しくても、1泊2日で訪れることができるならハードルは下がりますし、船に揺られて海を渡る旅は、非日常感もばっちり。みなさんの次の旅先選びの助けになれば嬉しいです。

【ご注意】コロナ禍の現在、離島の医療体制は十分でない場合もあります。旅に出かける前に、ご自身の健康状態は必ずチェックしてください。また、訪問先の離島の旅客受け入れ状況も必ず確認してお出かけください。

(※これらの数字は国土交通省発表資料「日本の島嶼の構成」に基づきます。わたしが離島の旅を始めた頃は420を超える有人島がありましたが、人口の少ない島がいつしか無人島となり、その数は徐々に減っています。)

新潟県、粟島で「離島の旅」にハマる

働き始めて少し経った頃、やっと出かけたりする余裕ができてはきたものの、友人たちと休みが合わなかったり、休暇がとれるのが急だったりで、旅先を決めるのは思いつき。いつしか、ひとりで出かけることが多くなっていました。

当時はTwitterが普及しつつあった頃で、みんなが「ラーメンなう」などと頻繁につぶやいていた時期でした。ならばわたしは「お昼に寿司を食べにちょっくら佐渡島まで来ました」と投稿したらおもしろいかな?という思いつきで佐渡島に向かいました。

当時住んでいた群馬から新潟の港へ車を走らせ、フェリーで佐渡島へ。目的だったお寿司にもありつけ、レンタカーを借りて佐渡島をドライブしたのです。佐渡島は観光スポットにあふれる魅力的な島で、名所をいくつも巡り旅を満喫したのですが、わたしの素直な感想は「佐渡って都会だな~」でした。

佐渡島にはコンビニもホームセンターもあり、わたしの地元である北関東の山間部よりもずっと便利な都会で、最初にイメージした「離島像」とずいぶん違うと思ったのです。そんなことを考えつつ、地図を眺めて見つけたのが、佐渡島から少し北の日本海に浮かぶ、それまで気づかなかった小さな粟島という島。翌月には新潟県の岩船港まで車を走らせ、粟島へ向かったのです。

粟島の風景

粟島は外周約23km、人口350人。コンビニどころか、スーパーもなく、食堂が数軒という小さな島。道路も少ないため、フェリーでマイカーを持ち込める佐渡島とは違い、許可された車両以外の持ち込みは禁止です。信号機がなくても十分な交通環境なのですが、なぜか島には信号機が1機、本来の目的としては必要のない場所に設置されています。

この信号、実は教育用です。後に知る“離島あるある”の1つなのですが、交通量の少ない離島でも多くの場合、信号機が1機、「学校の前」に設置されています。人口の少ない離島には、小学校と中学校が1つになった“小中学校”がありますが、高校がない場合が多いのです。つまり、子どもたちは中学卒業とともに、本土の高校に通うべく島を出ますが、信号を知らずに町に出るのは危ない、という教育的理由から学校の前に信号機が設置されているのです。

なんというカルチャーショック。他にも、自転車を借りるときに役場の方に「絶対にここで飲み物を買っていってください」と何度もお願いされたり(粟島には北側と南側に2つの集落がありますが、集落以外の場所に自動販売機など飲み物を買えるところはありません)、お値段2000円の名物あわしまラーメンが、実は予約制で、立ち寄りでは食べられないことを知ったり、魚を入れた汁物に熱く熱した石を入れる不思議な食べ物「わっぱ煮」に出会ったり、「灯台」と書いた簡素な看板を見つけ、せっかくだからと立ち寄ったら階段がとんでもない数だということに気付いたり(おかしいなと思いながら引き返すこともできず1000段近く登りました)など、島を巡る間に、普段の生活の中では味わえない体験がいくつもいくつも。

そして、島中のいたるところに、目を奪われるかのような絶景が……。特に外周道路からの眺めは左手に山の緑、右手に海の青というコントラストが美しく、こんな場所があったんだ!と、心を掴まれる瞬間を何度も経験しました。

山の緑と海と空の青が織りなす絶景のなか、風を切って進むサイクリングが最高に気持ちいいです。

粟島名物のわっぱ煮。杉を曲げてつくったわっぱに、焼いた魚とネギ、味噌を入れてお湯を注ぎ、焼き石を落し、煮立たせた料理です。

初上陸の3年後、3度目の訪問でようやくありつけた粟島ラーメン。2,000円もするので「離島価格?」と思っていたら、豪華な海の幸がどっさり。アワビ、サザエ、イカ、タコ、メカブ、ワカメ……離島価格どころか、むしろお得かも。でも、できることならお刺身で食べたい(笑)。

離島ひとり旅の魅力とは

粟島への旅で、「離島って面白い!日本にはまだまだ知らないところがあった!」と驚き、夢中で日本中の島々を調べてみると、心惹かれる特徴を持つ島ばかり。地底湖が探検できる島、島1周が全てビーチでどこへ行っても誰もいない、まるでプライベートビーチのような島、人口が10人なのに牛は400頭以上いる島、財宝の眠る伝説のある島、海の中に温泉のある島……などなど。

南大東島の地底湖。光の届かない地底なので、何時間いても目が慣れることはなく、いつまでも暗闇のなか。しかし、明かりを灯すと澄み切った地底湖が広がります。

式根島の地鉈温泉。海に接した温泉で、潮の満ち引きで湯加減が変わります。

週末に気軽に行ける伊豆諸島や、長めの休暇がとれれば、離島好きなら誰しもが一度は目指す最南端、最西端、最北端の島、さらにはアクセス困難な秘島などへ向かい、気付けば離島の旅にすっかりハマっていきました。

そして、わたしの旅が“離島ひとり旅”だったことが、より離島の魅力を強く感じさせることに繋がりました。離島をひとりで旅していると、ひとり旅ゆえの一期一会に恵まれ、島の方の人情に触れる機会がたくさんあります。

ひとりだから退屈そうに見えるのか、「明日、釣りに行ってみよう」と、民宿の主人に誘われ、自家用船で一緒に海釣りに出かけたり(その名も「おじさん」なる魚が釣れました)、民宿の方に地元民しか知らない場所を案内してもらえることもしばしば。はたまた、地図を見ながら道を歩いているだけで、「迷いました?」と声をかけてもらい、立ち話が弾み、島の行事や宴会にちゃっかり参加させていただくことも。わたしがひとりだからこそ、島民の方も気軽に声をかけてくれ、それをきっかけに島の生活を身近に感じられることが多いです。

奄美群島のひとつ、請島のご主人と出かけた海釣りにて。びっくりするほど魚がたくさん釣れました。

ある島では、閑散期の真冬にひとりで訪れたため、宿のご主人に「一緒に夕食を食べに行こうか」と誘われたことがあります。他にお客さんがいなかったので、きっと食事を用意するのが面倒だったのでしょう(笑)。1泊2食の予約をしていたので驚きましたが、食堂でいろいろ話しご主人の人柄に触れ、これもまた面白い体験だと思えてきてしまいます。その夜遅く、ご主人は予定されていた飲み会に出かけたらしく、翌朝の朝食に見るからに「寿司屋の折」が出てきた時はさすがに笑ってしまいましたが、それも含めてとてもいい思い出です。

「都会のホテルの洗練されたおもてなし」とはまったく違うかもしれませんが、こういった人情味あふれるやりとりも含めて、離島ひとり旅を楽しんでいます。これまで訪れた全ての離島に「あの人は元気かな?」と思い出す人がいます。

ある島で朝食にいただいた寿司折り。民宿のご主人の名誉のために補足すると、伊勢エビの入った豪華なお味噌汁は宿特製の一杯。

これから離島の旅を始める方へお伝えしたい離島旅のポイント

さて、こうして島々を巡っていると、「離島旅」ならではのノウハウも貯まってきます。初めて離島の旅をするという方へ、わたしの経験から得たいくつかの旅のポイントをご紹介しておきます。

・宿や交通手段を最初に確保

離島を旅するパッケージツアーは数が少なく、旅に必要な要素を個人で手配することが多いです。ただ、船も宿も、小さな島で数が少なければ、あっという間に埋まってしまいます。とくに連休やお盆、年末年始は激戦区になることもしばしば。

こうした事情から、宿が取れても、船が取れない。逆に、船は取れたのに、数少ない島の民宿がどこも満室だった、ということも。また、船も宿も予約できたのに車が手配できないということもよくあります。なお、わたしの個人的な目安ですが島の外周が5~6km以下の島であれば徒歩で、約20km以下ではレンタルサイクル、それ以上の島は起伏が大きければレンタカー、周囲50km程度以上はレンタカーで巡るようにしています。

目的地を決めたら、船、宿、島内の移動手段など、確保すべきものの優先度を決め、情報収集して臨むのがポイントです。

・絶対に食べたいもの、見たいものは電話で確認

はるばる訪れた先で、目当てのお店がまさかの休み(現在はコロナ禍の影響もあり、休業中のお店も多いかもしれません)、絶対見たいと思っていた絶景までの道が台風による土砂崩れで、通行止め。こんな「思いも寄らぬ事態」は本当にあります。島を訪れる前にお店や観光協会に電話で問い合わせるなどしておくことをお勧めします。台風や大雨の後などは、とくに要注意です。

・現金を持って行く

最近はキャッシュレス化が進み、都市部ならば現金を一切持っていなくても不便はないかもしれません。しかし、離島ではまだまだ、支払いは現金のみということも多いです。きちんと計算して必要な額の現金は持って行きましょう。また、離島では銀行のATMも稀な存在なので注意してください。頼りになるのは郵便局と農協です。離島でもこのふたつを備えていることが多いので、離島巡りをするならば、ゆうちょ銀行やJAバンクの口座を作っておくと便利です。

なお、離島の郵便局はユニークな消印があったり、商店には島の風景のポストカードや絵はがきが売っていることが多いので、離島から手紙を出すのも楽しいです。さらに、各地のゆうちょ銀行のATMでいくらかずつ入金し、「旅の記録」を記帳するという楽しみ方も。

・どんなことがあってもポジティブに受け入れる

これが一番大切かもしれません。期待していた絶景の青く美しい海を見ようとしていたのに曇天や悪天候で見られないこともあります。船が欠航しやすい島などでは、予定していた帰りの船に乗れず、島に閉じ込められることもしばしばあります。「明日から仕事なのに!」と大騒ぎしても、出ないものは出ないのです。離島だけでなく全ての旅に当てはまることかもしれませんが、どんなことでも前向きに楽しむ心意気があれば、離島の旅は最高なものになると思います。

東京からアクセス抜群!それでいて、「ここだけの体験」がいっぱいの伊豆大島

さて、いよいよみなさんを離島巡りの世界にご案内します。まずご紹介するのは、東京都に属する島、伊豆大島です。島の外周約52km、人口は約6100人と伊豆諸島のなかでも最大の島ですが、その魅力は、なんと言っても本土からの抜群のアクセス性です。

伊豆諸島の中で最も本土から近く、調布飛行場から飛行機を使えば25分。竹芝桟橋からジェットフォイル(空中翼船)で1時間45分。また、大型フェリーならば竹芝桟橋を22時に出発し翌朝6時に島に到着します。こうしたアクセス性から、週末の離島旅にぴったり。また、島内にはホテルに旅館、民宿、ゲストハウスなど宿泊施設も豊富で、自分の旅に合わせた滞在ができます。

これだけの好条件がそろっていて、さらに見所も豊富です。そのいくつかをご紹介しましょう。まずご案内するのは、迫力ある火山の火口をお鉢巡りできる三原山です。

標高758mの火山、三原山。古くから地元の人に「御神火様(ごじんかさま)」としてあがめられている島のシンボル的な存在です。1986年の噴火以来、大きな噴火活動はありません。噴火の際、山頂にありながら奇跡的に溶岩流の被害をまぬがれた三原神社は伊豆大島の七不思議の1つとも言われています。

三原山の山頂はグルリとお鉢巡りができ、ダイナミックな火口を見学できます。

三原山へのルートは複数あり、3〜4時間かけて登山をすることも、車で近くまで行き、お鉢巡りだけを楽しむことも可能です。

伊豆大島は火山島だけに、このような火山活動がつくり出した貴重な風景が楽しめます。その見所は三原山だけではありません。

日本で唯一の砂漠といわれるこちらの「裏砂漠」も伊豆大島ならではの名所です。ちなみに、鳥取県にあるのは「砂漠」でなくて「砂丘」です。

一帯が黒いスコリア(火山噴出物の一種)で覆われた裏砂漠は壮観の一言。ミュージックビデオの撮影などに使われることも多い場所です。

火山島ならではの見所はまだまだあります。雄大な地層大切断面もぜひ足を運びたいスポットです。


こちらが地層大切断面。噴火による堆積物が地層となり、まるでバウムクーヘンのよう。高さ約30mの地層断面が、600mにわたって続いています。地元の洋菓子店には、この断面を模したバウムクーヘンが販売されています。

さてさて、伊豆大島には、他にも見所がたくさん。「島ならでは」のスポットをお探しなら、珍しい「離島の動物園」はいかがでしょうか。

ここが離島の動物園、大島公園 動物園です。コンパクトな動物園ですが、カピバラ、クジャク、キョン、レッサーパンダなど、60種もの動物が飼育されています。国内最大級のバーバリーシープとワオキツネザルが飼育されているサル山は、噴火の溶岩流でできた岩山をそのまま使用しています。

さらにさらに、写真映えするスポットをお探しなら、以下の場所に足を運んでみてください。

こちらは泉津(せんづ)の切り通し。まるでファンタジー映画のような世界が楽しめるスポット。神秘的な雰囲気からパワースポットともいわれています。

これぞ離島グルメ!伊豆大島の海の幸を堪能しまくる

さて、せっかくの旅ならば、グルメも堪能したいところ。伊豆大島には、島らしい海の幸を楽しめるお店がたくさんあるので、その一部をご案内しましょう。まず、フェリーを利用して早朝に着いたら、朝から海の幸を楽しむのはいかがでしょうか。三原山を望む大きな露天風呂で有名な大島温泉ホテルには温泉+朝食のプランがあるので、船旅の疲れを癒やしつつ、島グルメも楽しめます。朝食ならば、もう1軒、ぜひお勧めしたいのが、伊豆大島の玄関口のひとつ、元町港の目の前にある「お食事処おともだち」です。

こちらが「おともだち」の朝食、地魚刺身定食。フェリーの到着に合わせて早朝から開店していて、島に到着するやいなや、新鮮な魚の朝食がいただけます。もちろん、海の幸を堪能できるのは朝食だけではありません。

続いては、島の食材をふんだんに使った郷土料理や魚介料理が堪能できる「雑魚や紀洋丸」。自慢のメニュー「海の玉手箱」は海鮮丼に、魚のすり身を揚げた、たたきあげ、明日葉のごまあえなどの小鉢がつきボリューム満点です。

こちらは元町港から歩いてすぐの「海鮮茶屋 寿し光」のべっこうにぎりです。べっこう寿司は、近郊でとれた白身魚を辛子醤油につけて握った伊豆大島の名物料理。

伊豆大島の海の幸、ダメ押しはこちら。波浮(はぶ)港にある人気のお寿司屋さん「港鮨」。伊勢エビ天丼は伊勢エビのぷりぷり食感が楽しめ、食べ応えも抜群。

お寿司屋さんなので、もちろんお寿司も。こちらの「地魚鮨」はその時期の旬のネタが楽しめます。

伊豆大島の注目エリア、リノベーションが進む波浮港を散策する

大自然とグルメを満喫したら、雰囲気ある波浮港エリアをふらふら歩いてみるのはいかがでしょうか。

波浮港エリアで注目を集める鯛焼き屋さん「島京梵天」。古民家を改装した風情ある店舗です。イートインも可能なので、散策に疲れたら鯛焼きでひとやすみ。

2021年、波浮港近くにオープンした「Hav Cafe」。こちらも古民家をリノベーションした素敵な空間です。古民家なのに、まるで海外に来たような不思議な気分が味わえるカフェです。

そして、リノベーションといえば、2020年秋にオープンした宿「露伴」もお勧めの場所です。

空き家を巧みに改装した、レトロ感漂う内装も素敵なオシャレな宿。


3000冊の蔵書がある書斎も雰囲気たっぷり。文豪が数多く訪れたという伊豆大島らしく、文豪気分が味わえそうです。

と、東京からわずか1時間45分ながら、そこに広がる迫力満点の大自然と、豊かな海の幸。さらに個性的なスポットあふれる伊豆大島は週末のふらり旅に大変おすすめ。ぜひ訪れてみてください。

九州ならば鹿児島の甑島列島。2020年に橋でつながれた、3つの島を巡る旅

次にご紹介するのは、九州は鹿児島県の甑島(こしきしま)列島。鹿児島県いちき串木野市の串木野港からフェリーで1時間15分。または、薩摩川内市の川内港から高速船でわずか50分です。上甑島・中甑島・下甑島を中心に大小さまざまな島が構成する列島ですが、上甑島と中甑島を繋いでいた甑大明神橋と鹿の子大橋に加え、2020年8月に中甑島と下甑島を結ぶ甑大橋が開通したことで、3つの島が繋がり車で巡れるようになったのです。

トンボロ(陸繋砂州:りくけいさす)の上に集落がある珍しい地域や、湖と海を隔てる砂州が4kmにわたる長目の浜、迫力のある三段の滝、瀬美観音三滝、雄大な地層を望む断崖など、この島ならではの美しい自然や地形が広がります。展望所やビュースポットが多く、絶景写真を収めるのが好きな方ならば存分に楽しめる島です。

また、上甑島、中甑島、下甑島、それぞれ雰囲気が違うので、どの島に宿泊するか悩むのも楽しい時間です。もちろん、海の幸も豊富で名物のキビナゴやタカエビなど、甑島ならではのグルメも楽しめます。それでは、まずは上甑島から出発し、絶景と島々の連なりをご覧いただきましょう。

上甑島の長目の浜を見渡す、長目の浜展望所より。4kmにわたって続く砂州と、陸側に点在するなまこ池、貝池、鍬崎池、須口池の通称「甑四湖」が一望できる絶景スポットです。貝池には、世界的にも非常に稀なクロマチウムという酸素がなくとも生きられるバクテリアが生息しています。

上甑島のトンボロ展望所から眺める集落。トンボロとは陸繋砂州のことですが、この上に集落が形成される珍しい地形が眼前に広がります。続いては、車を走らせ中甑島に向かいます。

上甑島から中甑島に行くには、2つの橋を渡ります。まずは、上甑島と中間に位置する中島を結ぶ甑大明神橋(左写真)へ。この橋の全長は420m。橋のたもとには甑大明神が祀られ、「甑島」という名の発祥の地と伝えられています。そして、中島と中甑島を結ぶ全長240mのアーチ橋が鹿の子大橋(右写真)です。周辺がカノコユリの自生地ということから「鹿の子」の名がついたそうです。風光明媚な「橋を渡る旅」は、まだまだ続きます。続いては下甑島を目指し、甑大橋に向かいます。

こちらの写真は2016年、木の口展望所から眺める建設途中の甑大橋。2020年8月に中甑島と下甑島を繋ぐ甑大橋が完成したことで、3島が橋で繋がり、車やバイクで島々が巡れるようになったのです。それでは、見所満載の下甑島をご案内しましょう。

島と海と山が織りなす下甑島の風景を楽しむ

甑大橋を渡り、西に車を10分ほど走らせると、夜萩円山(よはぎまるやま)公園に到着します。ここでは、ページ岩と呼ばれる地層の断崖が見物できます。ここから車で南下すること20分ほど、続いては八尻展望所へ。

こちらが、八尻展望所からの風景。南北に連なる3島が一望できる、列島ならではの絶景を楽しんだら、次は一味違う景色を見物に行きましょう。車に乗り、さらに南へ20分ほど走ると……

ごうごうと水を落とす瀬美観音三滝にたどり着きます。約55mの高さから一の滝、二の滝、三の滝と落ちてきます。一番下の三の滝が迫力満点。周辺は観音三滝公園として整備されているので一休みできますし、キャンプ場もあるのでアウトドア派の方はテント泊も可能です。

街の様子を楽しむなら、瀬美観音三滝から車で10分ほど、下甑島南端に位置する手打ち集落へ。ここでは700mにわたって続く、玉石垣武家屋敷通りを散策することができます。なお、「Dr.コトー」のモデルになったとされる瀬戸上医師が赴任していたのが下甑島。半年だけでいいから来て欲しいと依頼され、気付けば28年にわたり、下甑島の手打診療所で離島医療に従事されたそうです。

キビナゴ、タカエビなどなど、甑島列島ならではのグルメ

3島を巡り、お腹がペコペコになったら、いただきたいのは甑島グルメ。同地ならではの、海の幸を楽しめるお店をいくつかご紹介しましょう。

まずは上甑島の 「鮨 ながた」。カウンターで大将が握る鮨を堪能できます。話し上手な大将に、島の今昔物語を聴かせてもらえるのも楽しい時間。

同店では、甑島の名物、キビナゴが七輪焼きでいただけます。

上甑島のお勧めグルメをもうひとつ。それは、1日4組限定の宿、「FUJIYA HOSTEL」の朝食です。

こちらは宿だけではなく、豆腐屋さんも営むだけあって、できたての豆腐と島の魚を朝から楽しめます。お吸い物にもキビナゴがどっさり!

上甑島で海の幸を楽しむなら、以下もおすすめ。昼も夜も予約必須の「寿司膳かのこ」です。少しわかりにくい場所にありますが、わたしが訪問した際は近くまで店主が出て来て迎えてくれました。

まるで個人宅のような趣ある構えの「かのこ」は、マグロが自慢のお店。甑島で養殖されたクロマグロをたっぷり使ったお寿司です。

絶品離島グルメが楽しめるのは、上甑島だけではありません。下甑島の瀬々野浦(せせのうら)集落にある民宿「浦島」の夕食もわたしにとって忘れがたいメニューです。

タカエビの天ぷらやお刺身、石鯛のお刺身など、島の名産がたっぷりです。わたしが訪問したときは、浦島のご夫婦が食事中話し相手になってくれたり、出かけて宿に戻るたびにコーヒーを淹れてくれ、一緒にとても楽しい時間を過ごすことができました。

浦島のある瀬々野浦集落では、ナポレオン岩、ローソク岩といった奇岩見物も楽しめるので、食事だけでなく周辺の散策もぜひ!

自らハンドルを握り、橋を渡り3島を巡る。こんなレアな体験を楽しみつつ、絶景と海の幸が堪能できるのが甑島列島の旅です。3島が橋で繋がったいま、訪れるには絶好のタイミングです!

琵琶湖の中の離島、沖島で穏やかな時間を過ごし、淡水魚に舌鼓

今度は少し趣向を変え、「湖に浮かぶ島」をご案内しましょう。JR近江八幡駅からバスで約30分の堀切港から通船(かよいぶね)に10分ほど揺られると、琵琶湖の中の離島、沖島に到着です。外周約6.8km、人口約300人のこの島は日本で唯一の淡水湖の中の有人島なのです。

こちらがまるでバス停のような堀切港の通船乗り場。1日12往復の便があり、乗船時間もわずか。島から通勤・通学している人も多く、島民の買い物などの交通手段としても利用されています。生活インフラらしく、島民は一般客の半額以下で乗船できます。

沖島は日帰りでも十分に散策できますが、民宿も数軒あるので、泊まりでのんびりした島の時間を過ごすことも可能です。

沖島の港の風景。とても穏やかな場所です。

島から琵琶湖を望めば、どこまでも穏やかな水面が広がります。そして、高台に上がると本土がすぐそこに。

せっかく訪れたのですから、琵琶湖ばかりではなく、沖島の日常とゆるやかな時間を楽しむべく、散策してみましょう。

沖島の集落の風景。細い路地に沿って家々が続いています。小さな島なので、3~4時間もあれば徒歩で散策できます。

三輪自転車は沖島ではかなりメジャーな乗り物です。島のいたる所で見かけます。

みかんや、夏みかん、はっさく、きんかんといった柑橘類がたくさん育てられていて、ジャムなどがお土産で販売されています。

島の中央部にある沖島小学校はノスタルジックなたたずまい。日本で唯一の淡水湖の中の有人島なので、「湖の中の学校」も日本唯一。世界的にもかなり珍しいそうです。近江八幡市民であれば島外からも通えるそうで、実際に船で通学してくる児童も多いとか。

島の小さな名所、弁財天(厳島神社)は広島の宮島と同じく、水の中に鳥居があります。

素朴な島の素朴なグルメ、淡水魚を味わう

湖の中の島らしく、ビワマスやホンモロコなど、琵琶湖で獲れる淡水魚グルメも楽しめます。これらを味わうために足を運びたいのは、地元の漁協です。

港のすぐ前にある沖島漁業組合。その中にある「湖島婦貴(ことぶき)の会」では島の女性たち(漁業組合婦人の部)が中心となり屋台を出して、沖島で獲れた魚の佃煮などを販売しています。

「湖島婦貴の会」は予約しておくと、お弁当や昼食がいただけます。わたしがいただいたのは淡水魚の天ぷら、若鮎の佃煮、ビワマスの刺身などの沖島産の食材がたっぷり詰まったお弁当。漁業組合のイートインスペースで食べると、まるで漁師の仲間入りをしたような気分に。他にも、沖島どんぶりや地物のうなぎのうな丼などが注文できます。

沖島の味をさらに堪能するなら、「汀の精(みずのせい)」というお店もお勧めです。

お任せランチプレート+季節の沖島の魚。食材のほとんどが沖島産で、島の味のフルコースが楽しめます。「沖島産の夏みかんソーダ」などカフェメニューも豊富。さらに、手作りの雑貨や、ジャムなども販売しているので、お土産買うのにも便利なお店です。

素泊まり専門の宿でも、お願いすれば島内の食堂が夕食を配達してくれます。わたしがいただいたのは琵琶湖でとれた淡水魚の塩焼き。都市部では食べる機会の少ない淡水魚を新鮮なうちに堪能できるのも沖島の魅力です。

琵琶湖の無人島巡り

時間が許せば、沖島だけでなく、沖の白石、竹生島(ちくぶしま)、多景島(たけしま)といった琵琶湖の3つの無人島も巡りたいところ。4つの岩からなる沖の白石は船上から見学するだけですが、竹生島、多景島は上陸できるので、自分の足で無人島を散策できます。

これらの無人島を巡る船は、彦根港から出港しています。最寄りの彦根駅から彦根港へは無料シャトルバスが運行中(土日祝のみ)。乗り込む船の名は「赤備え船『直政』」です。彦根藩の初代藩主、井伊直政にあやかった名を持ち、井伊家の甲冑同様、赤で塗られた船体が戦国の雰囲気を演出します。

訪れたのは多景島。多景島には上陸便と、船上見学便があるので、上陸したい方は時刻表を要確認です。

竹生島は琵琶湖八景のひとつで、住民のいない無人島ながら竹生島宝厳寺、都久夫須麻神社などの寺社仏閣、お店もあります。また、島全体がパワースポットともいわれ、多くの参拝客が訪れます。上陸する際は入島料が必要となりますのでご注意を。

都久夫須麻神社で人気なのがかわらけ投げ。お皿状のかわらけ(土器)の1枚に自分の名前、もう1枚に願い事を書き、鳥居に向かって投げてくぐることができれば願いが叶うといいますが……

ご覧のとおり、鳥居は遠くてなかなか難しいです。投てきの得意な方は、ぜひチャレンジを。

琵琶湖は誰もが知る日本最大の湖でありながら、反面、あまり知られていないのが湖の中の島々。そこに息づく日常と穏やかな時間は、なににも代えがたい経験になるはず。1時間にも満たない船旅でたどり着けるので、ぜひ一度訪問を。

「日本のハワイ」こと周防大島を中心に美しき瀬戸内の島々をアイランドホッピング

最後にご紹介するのは、山口県の離島、周防大島(正式名称は「屋代島」です)。本州、四国、九州に囲まれ、大小約700もの島が浮かぶ瀬戸内海。その中で淡路島、小豆島に次ぎ、3番目に大きな島がこの周防大島です。外周約160km、人口約1万4千人のこの島は、至近の本土、山口県柳井市から橋で繋がっているためアクセス抜群です。

周防大島は、ときに「日本のハワイ」と呼ばれます。明治から大正にかけては、たくさんの島民の方がハワイに移民として渡航した、という由縁があり、気候も暖かく穏やか。島内にはヤシ並木もあり、まさにハワイのような景色とリゾート気分が味わえます。役場の職員さんたちも夏場はアロハシャツを着用しているとか。それでは、さっそくこの身近なリゾートへの道筋をご案内しましょう。

周防大島最寄りの山陽本線、大畠駅はホームが海に面した絶景の駅。

柳井市と周防大島を結ぶ全長1020mの大島大橋。開通当初は有料道路でしたが、1996年以降は無料開放されています。大畠駅から路線バスも出ている他、徒歩や自転車でも通行可能です。

大島大橋を渡ると、目に入ってくるのが「SUO OSHIMA」の大きな看板。そして島内の雰囲気はというと……

さすが瀬戸内のハワイと呼ばれるだけあり、南国の景観がところどころに見られます。ドライブがとても気持ちいい道が続きます。

橋を渡り、車で島の東に向かうこと30分ほど。着いたのは片添ヶ浜(かたぞえがはま)海水浴場です。これはまさにハワイ気分……!? ヤシ並木と真っ青な海が南国の雰囲気を感じさせてくれます。山口県内でもっとも早い海開きを迎える海岸で、夏場は島の子どもたちがフラダンスを披露することもあるそうです。

片添ヶ浜海水浴場から車で5分ほど走ると、こんなスポットも。干潮の前後3時間だけ地続きになり、渡ることのできる真宮島です。パワースポットとしても大変人気の場所です。

島の東端には離島の小さな水族館「なぎさ水族館」も。裸足で入ってナマコなどに触れることのできるタッチングプールや、瀬戸内の漁師さんが獲った海の生き物が展示されています。

どこに行っても、海景色。周防大島の宿&グルメスポット

島には美しい海景色を借景として取り入れた宿泊施設や飲食店が豊富です。一息入れつつ眺める瀬戸内の景色は格別です。

瀬戸内荘やまもと」は島で獲れた魚料理がお勧めの宿ですが、料理だけでなく、部屋から望む瀬戸内海の美しい島々が素敵です。

島の中央に位置する「瀬戸内ジャムズガーデン」は島の果物を使ったさまざまなジャムを販売していて、全国から取り寄せの注文が入る人気店で、このお店に来るために島を訪れる人も多いのだとか。お土産を買うのにぴったりですが、イートインスペースもあり……

トーストなど、オリジナルジャムを楽しめるメニューをいただきつつ、顔を上げるとお店のテラスから瀬戸内海が。味も眺めもばっちり!

周防大島から、周辺の小さな島々を巡る海上散歩を楽しもう

周防大島の周囲には5つの小さな有人島があり、上陸できます。「多島美」と言われる瀬戸内に来たのなら、こうした島々を巡らない手はありません。車や小さな船で楽しむ瀬戸内散策の様子も、いくつかご紹介しましょう。

まずは、周防大島と橋で繋がる島、沖家室島(おきかむろじま)へ。外周約5km、人口約130人の小さな島には、周防大島とはまた違う、穏やかな空気が流れています。

周防大島から北に約6km、船で20分の前島。人口はわずか7人で、島には学校もお店もありません。どこか知らない世界に迷い込んだような、本当に静かで美しい島でした。

笠佐島は周防大島から西へ2km、船で約7分です。外周約4kmの島で人口は10人。こちらも小さな島ですが、ある有名な民宿があります。

こちらが「​​漁家民宿かささ」です。テラスからの眺めもさることながら、振る舞われる料理が絶品だと評判の宿なのです。

こちらが「かささ」の夕飯。噂に聞いたとおりの豪華な夕食でした。なんと舟盛り付きです。生け簀を泳ぐ魚をご主人が捌いてくれるので、新鮮そのもの。小さな島で、こんなに美味しい夕食にありつけるとは……。和食だけでなく、韓国出身の女将がつくる韓国料理も楽しめるのだとか。右の写真は、女将が焼いてくれたおまけのチヂミ。満腹&大満足の笠佐島滞在になったことは、言うまでもありません。

このように、瀬戸内では大小さまざまな島を巡るアイランドホッピングが気軽に楽しめます。周防大島でリゾート気分を満喫。そこから少し足を伸ばして、小さな島の穏やかな時間を楽しむ。こんな「島巡り」の魅力がぎゅっと凝縮された、お勧めエリアなのです。

離島の数だけ、旅がある

今回ご紹介した島々は、どこも本土からのアクセス良好な島ばかり。それでも、向かう島によって趣のまったく異なる旅になるのです。旅の楽しさは、島の数だけ。日本にはまだまだ知らない場所がたくさんあって、どの島に行っても、驚きと感動の連続が待っています。みなさんもぜひ、離島巡りの世界に足を踏み入れてみてください!

ブログ:旅と日々のこぼれ話。時々、離島ひとり旅
Twitter:@oohatasan

編集:はてな編集部

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