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COLUMN コラム

クレイジーケンバンド横山剣の「楽曲が降りてくる」ドライブルート

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 著名⼈にお気に⼊りのドライブルートやクルマの思い出をインタビューする連載企画。今回は、クレイジーケンバンドのフロントマンで“東洋一のサウンドマシーン”と名高い横山剣さんにお話をお聞きしました。少年時代にクルマにハマった理由や、音楽とクルマの密接な関係、そしてドライブルートなど、クルマへの情熱をたっぷりと語っていただきました。

オシャレでカッコよくて速い、スペシャルな人たちに憧れました

――― クルマ好きの横山さんですが、クルマが好きになったきっかけは?

横山:気づいたら、って感じだったんですけど、決定的になったのは6歳のとき。「グラン・プリ」っていうF1の映画を観たんです。それで4輪に興味が出て、日本のモータースポーツにも目を向けるようになりました。60年代って、モータースポーツとファッションとジャズが絶妙にリンクしていて、オシャレでカッコよくて、それでいて速くて。中にはミュージシャンもいたりして、そういうスペシャルな人たちに憧れました。ライフスタイルや普段乗っているクルマなんかに興味を持ったりしました。あとは米軍基地に停まっている国産車をみて、なんでYナンバーなんだろう?って思ったり。国産車、アメ車、ヨーロッパ車、いろんなクルマを子どものときから好きになりましたね。

――― 横浜だからこそ、当時からいろいろなクルマを見ることができたのかもしれないですね

横山:そっすねー。米軍の人のクルマのこんなボロボロなのによく動くなぁ、っていうのも含めて、僕はそういう“ダメ車”にもグッ来ちゃうタイプなんですけど(笑)。あと、母親がレーサーのおっかけをしていて、港区まで見に行ったりもしていたんですよ。港区には港区にしかないような、これ本物?みたいなクルマがたくさんありました。今みたいにネットはないから、行ってみてもレーサーには会えず、ハズレが多かったんですけどね。

――― クルマが親子共通の話題だったんですね!

横山:モータースポーツはそうでした。トヨタは長髪ソース顔系のイケメンが多い、とか、日産は短髪系の硬派な侍…とかね。どっちも魅力的でした。僕もレーサーの真似していました。北野元さんの真似してハンチングかぶったり、見崎清志さんの真似して長髪にしたりね。あと、三保敬太郎さんやミッキー・カーチスさんのようにミュージシャン兼業の人もいましたから。

――― カーレーサーへのあこがれが、クルマの原風景なんですね。音楽への興味もクルマが大きく関係しているんですか?

横山:「男と女」って映画を小学校の時に再放送で観たんです。レーサーのカッコよさ、主題歌のカッコよさ、フレンチな雰囲気…南フランスやモナコに行ってみたい、って思いましたね。もう、ムスタングのプロモーションみたいな映画でしたけど、GT40で「フォード対フェラーリ」にもつながっていくような歴史的映画でした。クルマと映画と音楽が混ざり合って、興味を持った感じです。僕はとにかく、譜面の読み書きもできないですし、音楽が好きかどうかも分からないうちに自己流で曲を作り始めていて、それで将来は三保敬太郎さんみたいに作曲家兼レーサーになろう!と思っていました。

――― 三保さんがレーサーだったことが大きく影響していると思いますが、シンガーや演奏家といった目立つところではなく作曲家、というのも面白いところです。

横山:もちろん、バンドマンはカッコいいです。でも、引きの美学みたいなものは当時から感じていて、目立たないんだけど、ライフスタイルがカッコいいと思ったんですよ。目立つ芸能人になっちゃうと、制約も多くて自由じゃない。でも作曲家は、例えば葉山に住んで、ちょっといいクルマに乗って、女性にもモテて、自由そうに見えたんですよね。モテたくてバンドマンになったっていう話はよく聞くんですけど、作曲家はアイドルとかにも曲を書いたりするから、間違いなく美人とお近づきになれる!とか思ったりね(笑)。筒美京平さんや村井邦彦さんなど、成功された方を見てそう思っていました。まぁ、どんなに実力があって作曲家協会に登録していても大ヒットを出せるかどうかは時の神様を味方に出来るかどうかってことを後々知ることになるんですけどね。

箱根はイベントでもプライベートでも、大好きな場所

――― (笑)。そのほかにも横山さんのルーツとなる音楽はどのようなものでしょうか

横山:小学校6年の時に、キャロルってバンドを見たんですよ。当時はまだデビュー直前で、クルマの名前みたいなバンドだな、って思って。そしたら痺れましてね。そこから中学でコピーバンドを組んで文化祭で演奏するようになったりしました。でも、作曲とは別のチャンネルな感じではありましたね。同じ乗り物でも2輪と4輪の違い、みたいな感じでした。

――― キャロルに興味を持ったきっかけも、クルマの名前っぽい、というのが生粋のクルマ好きって感じがします(笑)。クルマを運転しているときに、よく曲が浮かぶとお聞きしましたが、実際どういう感じなんですか?

横山:クルマでも2輪でも、たまに飛行機とかでも、移動中に曲が浮かぶことはよくありますね。その中でも特にクルマにいる時間が多いからなんですけど、クルマに乗っているときに浮かぶことは多いです。家が横浜なので事務所とかスタジオに行くまでの1時間ちょっとの時間とかがちょうどいいんですよね。なんかもう、勝手に鳴る、って感じです。湘南方面に向かえば海っぽいのが浮かぶとかね。海外に行ったときは、その時には浮かばなくても、お土産として浮かんできたりすることもあります。あと、ラジオを聴きながら走っていて、聴こえてくる音楽とかに勝手にメロディをつけたりね。歌っている人のメロディは無視して(笑)。でもサビに入ると、そのコードには行きたくない、ってなるから、だいたいAメロBメロでそういうことをしながら走っています。クルマのパーツを取ってカスタマイズしている気分ですね

――― 運転中に浮かんだ曲のエピソードを聞かせてください

横山:横浜から横須賀に行くときの国道16号線で浮かんだのが「タイガー&ドラゴン」ですね。途中、トンネルがいくつもあって、最後のトンネルを抜けると港が見えるんです。そこをクルマで走りながら、一筆書きのような感じで、メロディも歌詞も一気に出てきました。一緒に出てくるのは、すごく珍しいんですよね。頭の中で歌っているのは、自分じゃなくて和田アキ子さん、っていう想定でした。それで仮歌をアッコさん節で録ったんですけど、本番で自分の歌い方にしたらちっとも響かなくて。アッコさん節の仮歌のほうが採用されたんです。自分には無いタイプの曲で、「俺の話を聞け!」って歌詞も説教臭くてイヤだな、と思ったんですけど、結局あれ以上のフレーズが出てこなかった。そういう意味でも珍しい曲になったと思います。

――― 最初にもう出来上がった状態で浮かんできたというのは凄いですね。そのほかにも曲が浮かんでくるようなお気に入りのドライブルートはあるんですか?

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横山:箱根に行くのも好きですね。CKBでも「箱根ヨコワケハンサムワールド」というイベントを毎年1泊2日でやっているんですけど、プライベートで行くのも好きな場所。バイクでもクルマでも、1人でも行っちゃいます。紫陽花が美しい6月や、あるいは紅葉が美しい11月~12月ごろに、やっぱり行きたくなりますね。

新山下から狩場線に乗って新保土ヶ谷ICに向かう途中、天気がいいと花ノ木辺りで富士山がよく見えるのが、もう最高です! そして、思わず飛ばしたくなるのが小田原厚木道路。安全運転を心掛けているので、結局ゆっくり走っているんだけど(笑)。一般道に降りて、湯本に差しかかった辺りから漂って来る箱根感に胸が高揚してくるんですよ。さらに塔ノ沢から木立の坂道をグングン登って、宮ノ下に来ると、伝統の富士屋ホテル、古い写真館、骨董美術展など、外国人観光客目線でエキゾティックな気分に浸れるゾーンがやってきますね。

で、ここから芦ノ湖に行くか強羅に行くかの分かれ道ですが、順番はどうあれ、最も標高の高い芦ノ湯温泉郷から昭和なレジャー感が今もデッドストック状に現役稼働する芦ノ湖エリアへ。この辺りに来るともう年を忘れてヤングでパンチでヨコワケハンサムな気分が爆発! 続けて大涌谷湖尻線から大涌谷小涌谷線をドライブして、大涌谷が近くと、いかにもな硫黄のニオイが立ち込めて、名物の黒タマゴが欲しくなります。黒タマゴは1個食べるごとに寿命が何年か伸びるそうですよ!

そして強羅。音霊、言霊のように文字にも霊(ダマ)があるとしたら「強羅」はまさにその文字霊が強烈なパワースポットっていうか、箱根のツムジ! 彫刻の森美術館もいいところですね。とりわけピカソ館の小さくてかわいい「みみずく」が僕のお気に入りです。周辺には古く風情のある旅館も多く、ひんやりとした高級旅館の玉砂利の駐車場にクルマに乗り付けると…気分がイイ~ネッ!

箱根は小さな範囲に、見事なパノラマ、各種温泉、湖、渓流、パワースポット的神社、コケ蒸したしっとりした質感、ヤングでレジャーな高揚感、老舗ホテルのインターナショナルな世界、歴史文化、寄木細工などの伝統工芸、それらをギュッと圧縮した魅惑の箱庭。そんなことを感じながら、徐々に“下界”の湯本へと降りて行く気分がまた箱根ドライブの醍醐味ですね!

還暦を過ぎても、ドライブをしているときの喜びは消えない

――― ルートを聞いているだけでワクワクしてきます! そのルートで走ってみたいファンもたくさんいると思いますが、箱根に向かって走っていて浮かんだ楽曲も教えてください。

横山:箱根スカイラインや芦ノ湖スカイラインを走行中に浮かんだのが「箱根スカイライン」って曲。それで、芦ノ湖畔のレストハウスの思い出が歌になったのが「箱根パノラマ・ゴーゴー」、さらに紅葉の季節、儚い運命の男女が、湯本温泉の橋の袂から湯河原、さらに真鶴辺りまでをドライブする「紅葉」も箱根の天成園の辺りで浮かびました。なので、この3曲は、箱根ドライブに行ったときにはぜひ聴きながら走ってほしいっすね。

――― そのほかにも走っていて心地よいエリアや思い出のエリアはあるんですか?

横山:南青山や外苑を走っていると、ちょっと特別な気持ちになります。子供のころ、父が南青山に住んでいて、自転車で走り回りながら外車や高級車を眺めていたんですよ。そこを自分が走っていると、子どものころの自分も浮かんできちゃいますね。何かやり遂げたわけじゃないんですけど「遂に俺もここまで来たかぁ」と。還暦を過ぎても、ドライブをしているときのそういう喜びは消えないんです。今はコロナ禍で難しいですけど、落ち着いたら神戸とか長距離のドライブもしたいですね。

――― 小さい時からクルマが大好きだったからこその想いかもしれないですね。横山さんにとって、ドライブはどういうものですか?

横山:やっぱり自分でコントロールしている感じが気持ちいいですね。人の運転だと、そうはいかない(笑)。クルマは一番開放的になれる空間でもあり、緊張感のある非日常でもある。僕の住んでる街はクルマ社会で、クルマなしじゃ生きていけないと言っても過言にならないんで、免許をすごく大切に、安全に乗っていきたいですね。クルマがないと、曲もできないし(笑)。運転していると、なんだかんだでいろいろとやることがあって集中しないといけないんですけど、集中しているからこそ脳が活性化しているから浮かぶんですよね、きっと。以前、作詞とかでホテルにカンヅメみたいなことをしたんですが、全然ダメでした(笑)

――― 運転で脳を活性化しているからこそ、アイデアのインプットもアウトプットもスムーズなんですね。最後に、横山さんが感じているクルマのすばらしさをお聞かせください!

横山:クルマがあることで世界は広がっていくんですよ。今はカーシェアとかもあって気軽にクルマに乗ることもできるので、まずはそこからでもクルマに乗ってみて、楽しさを感じてほしいですね。やっぱり、クルマでデートとか特別でしょ。今だったらスマホからBluetoothで音楽を飛ばせばドライブ中に聴けますからね。昔みたいにCDとかカセットとか手間もかからず、そういうことも楽しめる。クルマは音楽を聴く空間としても最高に重宝してますね。ヘッドホンじゃなく、スピーカーで聴いてほしいというかね。レコーディング作業もスタジオチェックだけで終わらせないで、クルマでもチェックして、それで最終OKを出すんです。だからぜひ、クルマで音楽も楽しんで欲しいですね。

――― クルマならではのサウンドを、ドライブしながら楽しんでみたいと思います!本日はありがとうございました


取材/文:宮崎新之  撮影:藤田慎一郎  

横山剣(よこやま・けん)
1960年生まれ、神奈川県出身。クレイジーケンバンドのボーカル、レコード会社「ダブルジョイレコーズ」代表取締役。1997年に横浜・本牧にてクレイジーケンバンドを結成し、1998年に1stアルバム「PUNCH! PUNCH! PUNCH!」でデビュー。以後、ロック、ソウル、ファンク、歌謡曲など、古き良き時代のサウンドをジャンルレスに取り入れた楽曲をリリースし続ける。また、和田アキ子、一青窈、八代亜紀、平井堅などさまざまなアーティストへの楽曲提供している。2021年には自身初となるカヴァーアルバム「好きなんだよ」をドロップした。

Twitter:@CKBinformation
公式サイト:crazykenband.com

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