2014年から釣りを趣味としているshimobayashiといいます。普段はITエンジニアとして働き、週3日(土日+平日1日)程度のペースで釣りを楽しんでいます。
僕は半ば“釣りのため”に、京都から神奈川県の三浦半島へ、2年ちょっと前に引っ越しをしました。それは、「釣りをしていれば人生は幸せなのか?」という問いについて検証するためのものでした。
今もなお、検証は続いていますが、釣りという趣味を持ったことで、あちこちへと出かけるようになり、果ては自分の生活ごと移動させてしまいました。釣りが僕に移動を促し、行動範囲を広げてくれたように感じています。引っ越し後、リトルカブを購入して釣り場を開拓し、それまで体験してこなかった新しい釣りのスタイルも経験できました。「釣り」と「行動範囲の拡大」の関わり合いについて、この記事でお伝えできればと思います。
「生活ごと移動」してみた結果、日常生活と釣りがより密接に
釣りを始めた2014年、僕の釣行の範囲はそんなに大きくはありませんでした。同僚と一緒に借りたレンタカーや電車で行ける釣り場に赴き、釣りを楽しんで帰る。そのプロセスの中にはもちろん「移動」も含まれています。
移動の最中は仲間たちとおしゃべりしたり、スマートフォンで潮の流れや攻め方を考えたり、ワクワク感を楽しんだり。帰りは釣果について盛り上がったり、反省したり。そういう経験を重ねていった結果、釣りへのハマり具合が上がり、次第に移動する範囲が大きくなっていきました。

詳しくは後述しますが、気付けば釣り場まで、片道3時間を費やすようになり、毎週末の中で「釣り場への移動」の時間が占める割合がどんどん増えました。週末を釣りにだけ使っているという結果にならないようにしよう、もっと有意義なものにしようと考えて、電車で座れた際には本を読んだり、音声読み上げを試したりもしていました。そうはいってもさすがに片道3時間、行き帰りで6時間を移動に使うと、疲れも溜まります。釣り自体はとても楽しいのに、体調を崩してしまうこともしばしばありました。
釣りと生活をもう少し近づけられないか。そんなふうに思い始めたのは2018年ごろのことです。ぼんやりと「釣り場に行きやすい場所への引っ越し」を思い描くうちに、ITエンジニアの周辺では地方移住やリモートワークの話題が出始めていました。
具体的に考え始めたのは2019年末、スケジュールを引いて、少なくとも1年以内には実現させたいと思いました。その頃は毎週末釣りに行き過ぎていて、このままでは身体が持たないと感じたという要因もあります。冒頭で述べた「釣りをしていれば人生は幸せなのか?」という観点も含めて住居を探し始め、ついに2020年11月、京都を離れて三浦半島へと引っ越ししました。

釣りにより近づいた生活を目指して「生活ごと移動」してみた結果、今は日常生活と釣りが密接している状況になっています。現時点では土日の2日に平日1日を加えた、週3日程度の釣りを楽しんでいます。僕にとって釣りは「非日常の活動」なのですが、それが手軽に行える環境になったため、日々がとても楽しくなりました。
引っ越した時は、「まず変化を起こせてよかった」という気持ちで、引っ越して1年、2年……と経つにつれて感じ方も変わってくると思っていました。でも、今は引っ越して本当によかったと感じています。釣りとの付き合い方だけでなく、住環境も含め、狙いが全部うまく叶いました。
電車や自動車での釣行と、訪れた限界
僕はもともと関東に住んでいたのですが、今の会社に転職する際(7年前)に、本社のある京都市内へ引っ越しました。釣りが趣味になってからは毎週末海釣りに行きたいと思っていたのですが、京都市内という土地柄、どうしても電車や自動車に頼らざるを得ません。
京都市内から海釣りに行こうとする際には、大阪湾や、神戸~明石など、かなり離れたところに出向くことになります。明石より西や、淡路島など、京都からのアクセスが厳しいところは断念せざるを得ませんでした。

釣りへのモチベーションが同僚と一致していれば、誘い合って一緒に車に乗ることもできますが、自分だけなぜか釣行のペースが上がってしまい、電車での移動を単独で繰り返すことになります。少しでも交通費を抑えられればと、私鉄の株主優待券を駆使するなど工夫はしていましたが、どうしても電車ではメジャーな釣り場にしか行けなかったし、同じ釣り場に足繁く通い理解を深める、ということも難しい環境でした。
京都周辺には管理釣り場や琵琶湖もあり、そこで釣りを続けていく可能性は一応ありました。しかし、当時の僕にとっては「釣って食べる」のが大事なことになっていました。また、釣りに求める「非日常感」もどうしても薄くなりがちで、管理釣り場では特に「準備が整っている」という感じがあり、少し自分の好みとずれてしまっていました。
そこに浮かんできたのが「何らかの方法で、海の近くに一度住んでみたい」という気持ちでした。まだコロナ禍に突入する前のことでしたが、当時はリモートワークに関する議論も盛んで、もしリモートワークで仕事がつつがなくできるのであれば、非常に現実的なことのように思えました。
釣りのことだけを考えるなら、引っ越し先の候補はいくつかありました。例えば、福岡でも釣り生活を楽しめていたかもしれません。でも僕の場合はもともと関東に住んでいたということもあって、ある程度友達に会いやすい、比較的東京へのアクセスも確保できる、などのいくつかの要因を考え合わせてバランスを取り、三浦半島への引っ越しを決めました。もちろん、海へのアクセスや自分の釣りのスタイルも考えて、さまざまな種類の釣り場に移動しやすい場所を選んでいます。
釣りとの出会い、そして深くハマる趣味へ
ここまでは「釣りを趣味にしたことでの環境の変化」を主に書いてきました。次に、なぜそんなに釣りにハマってしまったのかを紹介したいと思います。
僕の最初の釣行は、2014年、同僚と3人で電車に乗ってヘラブナを釣りにいったことでした。それまで僕自身は釣りをしたことはありません。同僚と行くことになったきっかけはたいしたことではなく、「30代に近くなったからおっさんっぽいことをやろうぜ」という雑談を経て、実際に行動に移してみた……というものです。その時はその時で楽しかったのですが、においや準備の面倒くささなどのマイナス面も感じていました。
しかし、2015年に同僚の誘いで再度釣りに行った時に、初めて「釣りってめっちゃ面白い!」という感想を抱きました。その時はレンタカーを使い、お金はかかってしまうけどたまのレジャーならいいかな、くらいの温度感でした。
釣りが「面白い!」に変化したのには2つの要因があります。1つ目は、最後の30分までほぼ何も釣れていなかったのに、最後にサヨリがばんばん釣れて「うおおおお」と興奮したことです。もう1つは、料理をして食べてみたらかなりおいしかったこと。そのどちらが欠けていても、今のようには絶対ハマっていなかったと思っています。

これをきっかけに徐々にのめり込み、釣りに行くペースが上がっていきました。この時点では半年に1回程度、多くて1ヶ月に1回程度のペースだったと記憶しています。アジを釣って帰ってきて、同僚の家でアジフライにしてもらって食べたらめちゃくちゃ美味しかったということもありました。

2016~2017年までは、同僚とだいたい横並びの熱量だったのに、だんだん自分だけ深くハマっていってしまいました。一度「めちゃくちゃ釣れる」という経験をすると、「釣れたらうれしい」し、もし釣れずに終わったとしても「また次こそは」という気持ちになっていきます。このスタンスが自分に合っていたようで、楽しい釣り方が見つかってきて、余計に楽しくなったように思います。
そして、三浦半島への引っ越しの結果、楽しさはさらに増していきます。狙い通り、気軽に釣りに行けるようになり、釣り場の選択肢が増え、釣り場を探しに行く楽しみができました。平日でも潮回りが良い時に出かけられます。
京都ではなかなかできなかった「同じ釣り場に通い詰める」もやりやすくなり、季節の変化を感じ取れるようにもなりました。磯釣りやウェーディング(水の中に立ち込んで釣りをすること)にも手を出すことができました。

良い釣り場について誰かに教えてもらっても、僕の場合、やりこんでみないとわからないことが多くあります。新しい釣り場でぽんぽんと釣れることはありません。5回くらい釣り場に行ってやっとなんとなくわかった気になれます。そのプロセスは大変といえば大変ですが、すでに実績のある釣り場への行き来と織り交ぜながら開拓していくことに楽しさが生まれるように思います。ずっと釣れないと心が折れてしまうので……。
さらなる釣りの楽しさを追求すべく、「釣り用モビリティ」を導入!
三浦半島に引っ越して1年が経った頃、もっといろいろな釣り場に行ってみたい!と考え、中古で原付「リトルカブ」を買ってしまいました。

当初はレンタカーでの移動を検討していました。でも平日の仕事終わりに気軽に釣りへ出かけるという用途には合わなかったため、「高級釣り具の一種」として原付を手に入れたのです。車を借りての釣り場通いと比較すれば、圧倒的に安く済んだように思います。
さすがに最初の頃は運転が怖かったのですが、以前乗っていたロードバイクほどは体力を使わないので、運転そのものの楽しさも味わえるようになっています。最近ではほぼリトルカブで釣りに行きます。
あまりにも便利に釣りに行けるので、休日も平日も釣りに行きまくる事態となり、思い描いていた釣り生活としては申し分ないものの、若干やりすぎている感じはあります。とはいえ、釣りそのものの成功確率は上がってきていて、費やした時間に対する満足感は改善されていると感じます。
リトルカブには、釣りのためのいくつかのカスタムを施しています。

リトルカブで釣りに行くには、コンパクトにできる釣り竿を使うか、長めの竿を頑張って持ち歩くかの二択なんじゃないかと思います。僕は使える釣り竿の選択肢を増やすために後者で、リアキャリアにロッドホルダーとホムセン箱(ホームセンターでよく売られているレジャー用のボックス)を固定し、さらに後付けしたタンデムステップにも固定しています。また、自宅の駐車場では強風でリトルカブが転倒してしまわないよう、突っ張り棒をサイドスタンドの反対側に付けています。
リトルカブを買ったことで、可能性が非常に広がったと感じています。自転車で行く範囲よりも圧倒的に釣り場の候補が増え、平日でも気軽に行って帰ってこられます。また、レンタルボートのマリーナまでリトルカブで出かけ、釣り友達との船釣りにも参加しやすくなりました。
毎日でも釣りに行けるくらいの快適度合いですが、さすがに毎日の釣りは体力的に厳しいので、現在の週3日くらいのペースを基本として楽しんでいきたいと思っています。また、リトルカブと一緒に迎える夏は今年が初めてなので、夏の暑さ対策については知り合いにいろいろ聞きながら考えていこうとしています。
リトルカブで走ることそのものからも、アウトドア活動のような新しい趣味が生まれるんじゃないかと期待していますが、チャレンジはこれから。釣りをするには合わない日などに、気分転換でどこかに日帰りツーリングする、なんていうことを考えています。
「釣りの楽しさ」が変わってきた
釣りという趣味を持ち、その活動を重ねたことで、僕の行動範囲は大きく広がりました。行動範囲が変わるたびに、新たな楽しみが生まれているように感じています。
釣りへの向き合い方も同時に変わっていったように思います。例えば、片道3時間で釣り場に出向いていた時には、何も釣れないとメンタル面でのダメージが大きかったのが、リトルカブを手に入れた今では、何も釣れなくてもカジュアルに楽しめるようになりました。引っ越したことで心に余裕が生まれたのは間違いないです。今の場所で楽しく過ごせているので、現時点では別の場所への引っ越しは考えていません。
また、釣りを始めた当初は「釣っておいしく食べることが楽しい」という感覚が強かったのですが、ここ1年くらいではキャッチアンドリリースが多くなってきました。自分なりに「こうすれば釣れるだろう」という仮説を立て、検証し、それがうまくはまった時に楽しさを感じるようになっています。
釣りは自分にとっては「超良くできたオープンワールド型RPG」のような存在です。始める前にはレベルアップを感じることはそもそもありませんが、いざ始めてみると、レベルアップの機会があちこちにあります。例えば僕は、釣りを始めた頃は釣り具店にある釣り竿は全部同じに見えていました。でも、少しずつレベルアップしていって、今では全部違って見えています。

他に、四季や季節の変わり目を気にするといったことはこれまでなかったのですが、今では非常に気にかけるようになりました。一期一会とは本当によく言ったもので、その時々の釣りのチャンスは、その釣り場にしかありませんし、そのチャンスを求めて釣り場へ向かっていきます。釣りを始めて一番変わったのは、季節に対する意識かもしれません。
僕は趣味というものに対して「なぜ楽しいのか」などの深掘りをしないように心掛けています。以前、趣味としてゲームを作っていた頃に、「なんで自分はこれを作っているんだっけ?」などと考えがちで、最初は純粋な楽しさがあったはずが、だんだんずれてしまって楽しさが失われてしまったことがありました。情熱を持てる趣味は貴重な存在なので、今後も釣りを大事にしていきたいと思っています。

著者:shimobayashi
神奈川で働くWebアプリケーションエンジニア。趣味は釣りやゲームです。
ブログ:下林明正のブログ
Twitter:@shimobayashi
Instagram:@akimasashimobayashi
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編集:はてな編集部