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こんなにも種類がある! 奥深い「信号機の世界」と、信号から見える地域性の話

こんなにも種類がある! 奥深い「信号機の世界」と、信号から見える地域性の話

普段何気なく目にしている信号機。円滑な交通を制御していく上で欠かせない一方、街を歩いていれば見ないことはない当たり前の存在ですが、信号機そのものに注目する方は、少ないのではないでしょうか。

私は、4歳の頃から信号機が大好きで、珍しい信号機を求めて北海道から全国各地を探索しては信号機を撮影して回っている、”信号機マニア”です。今まで撮影した信号機の写真の枚数は30万枚以上。そのうち5万枚を、小学校6年生の頃から運営しているホームページ「Let’s enjoy signal!!」に掲載しています。最近では「タモリ倶楽部」「マツコの知らない世界」などテレビ番組に11回、ラジオに7回出演し、信号機の魅力や楽しさについてプレゼンテーションを行っています。

信号機なんてどれを見ても同じだと思われるかもしれませんが、実は、少なく見積もっても1,000以上の種類があるのです。例えば、信号の一つ「予告信号」。カーブや高架の先に信号交差点がある場合、信号機があることを知らせるために設置されている信号機ですが……


ご覧のように「黄・青・黄」「黄・赤・黄」「黄・黄・黄」「黄・黄」など、採用されている種類はさまざまです。
このように、信号機と一口に言っても、切り口はたくさんあります。この記事では主に、「歴史性」「地域性」を軸として、私がおすすめしたい信号機を紹介していきます。

Blog:Let’s enjoy signal!!
Twitter:@LED60590495

信号機の種類がとっても多い理由は?

信号機は数年ごとにモデルチェンジを行っており、その度に形状や細部が変わります。また、信号機メーカーは大手が4社、業界全体では10社程度あり、メーカーによっても形に少しずつ違いがあります。このような「メーカーによる違い」が、信号機の種類を豊富にしている一因です。

さらに、信号機は都道府県警ごとに採用しているため、微妙に差があります(ドライバーの混乱を招く可能性もあるためか、最近では統一される流れとなっています)。

加えて、信号が存在する交差点の形もさまざまです。単純な十字路もあれば、複雑な形状になっている交差点もあります。また、交差点同士が非常に近接する連続交差点に信号機が設置されることも。複雑な交通事情が絡む場合は、ちょっと変わった信号機が設置されることも多く、それぞれの交差点に合わせた信号機が設置されることで、その種類も必然的に多くなっていきます。

歴史性なら、「現存する古い信号機」「知られざる観光名所」がすごい!

さて、信号機の寿命は30年程度といわれていますが、古い信号機から新しいものへの交代・交換サイクルは、都道府県によってばらつきがあります。現在東京都内ではほぼ100%新しいLED信号機への交換が完了している一方で、昭和に製造された古い信号機がそのまま多く残っている県もいくつかあります。

大都市であれば新しい信号機が多いかというと、そうとも限りません。都市規模が大きい分、設置されている信号機の数も多いため、更新が追いついておらず、路地裏には古い信号機が残っているというケースもあります。

愛知県や現在の兵庫県、大阪府などはその典型的な例です。更新が進んでいく中、耐久年数を大幅に過ぎた昭和40年代~昭和50年代前半の信号機が多く残っている印象があります。

古い信号機は老朽化するにつれて視認性が悪くなってしまうので、交換されていくのは当然の流れではあるのですが、私のような信号機マニアにとってはその希少性やヴィンテージ感がたまらず、ついつい宝探しのように、古い信号機を追い求めたくなります。

ここで信号機の歴史を少しご紹介します。一般的に見られるような形状の信号機の中で戦後すぐに登場したのが、信号機マニアの間で「角形信号機」と呼ばれているものです。文字通り、筐体が角張った形をしています。2022年現在、「青・黄・赤」の通常の3つ並びの角形信号機は、静岡県、愛知県、千葉県などにわずかに残るのみとなっています。

角形信号機の後に登場したのが丸型の信号機です。その後LED信号機が登場し、さらに元の信号機より厚さが薄くなった薄型のLED信号機が登場。現在では光る部分を含め全体的にサイズが小さくなった低コスト式のLED信号機が生まれ、これが追い風となって、前述の古い角形信号機は軒並み淘汰されることとなりました。

かつての“古い信号機の王国”愛知県に現存する角形信号機

ここで、現存する角形信号機を紹介しましょう。愛知県知多郡阿久比町の「卯坂」という交差点にある、昭和42年頃の製造と思われる角形信号機です。日本の公道に残る車用の信号機では最古ではないかといわれており、信号機マニアの間で聖地のようになっている場所の一つです。私も3回この交差点まで出向き、じっくり撮影しています。

愛知県はかつては“古い信号機の王国”のようなところで、我々信号機マニアは目を輝かせて赴いた土地でしたが、ここ数年で古い信号機は新しいLED信号機に軒並み更新されました。角形信号機もそのほとんどが交換されたのですが、最古級のこの信号機が未だに奇跡的に残っていることに驚きを隠せません。

信号機の観察においては、信号機の裏側に付いている「銘板」というものを見ます。そこにその信号機のメーカーや製造年月等の情報が記載されているのですが、この信号機の銘板は、経年劣化などで残念ながら製造年月が読み取れません。

上が銘板のイメージです。下の写真は「卯坂」の信号の裏側ですが、ご覧のとおりヴィンテージすぎて銘板は判読できず……。

ただ、いくつかの情報から推測することは可能です。以前残っていたこの信号機の同型が昭和42年前後の製造で、メーカーが「小糸製作所」となっています。同社の名称は昭和43年に「小糸工業」に変更になっているため、それより前に製造されたことが分かります。つまり、卯坂の角形信号機は昭和42年あたりに製造されたものであると推測できます。

このヴィンテージな角形信号機の大きな特徴は、信号機の筐体が緑色に塗装されていることです。現在、信号機は通常灰色がかった白色に塗装されていることが多いのですが、昭和40年代までは緑色に塗装されるのが標準でした。その後、灰色がかった白色が標準になった際に、緑色の古い信号機も上から白色に塗装されることが多かったようです。しかし、この信号機は経年劣化などあって元の緑色が表面にかなり出てきています。ちなみに、現在でも観光地などで景観などに合わせてあえて緑色に塗られた信号機や、青色、銀色、中には金色という目立つ塗装色の信号機が存在します。

また、緑と白の縞模様の背面板が付属しているのも見所です。古い信号機は放つ光が弱くて目立たなかったこともあり、緑と白の縞模様の背面板を取り付けて、信号機の存在を目立たせるようにしていました。現在でも歩道橋や背景の看板などが派手で信号機の確認がしにくい交差点では、背面板を用いている場合もあります。

「知られざる観光名所」つい最近まで残っていた神奈川県名物の角形信号機

次に紹介するのは、神奈川県川崎市の「末吉橋」という交差点につい最近まで残存していた角形信号機です。

こちらは角形信号機の中ではかなり新しめの昭和53年製で、丸型に移り変わる直前のものです。京三製作所という会社が製造しました。

神奈川県も数年前までは角形信号機が多く残存する県のひとつでしたが、LED信号機への更新が進んで激減しており、ここがラスト1ヶ所でした。そして周辺の橋梁架け替え工事などを含む改良工事によって、古い角形信号機は撤去されることになり、100人近い信号機マニアが別れを惜しんで交差点を訪問しました。そして2021年12月9日、ついに更新工事が完了し、LED信号機へ交換されました。この信号機は沿線を走る臨港バスの公式アカウント(@rinko_official)でも撤去される半年ほど前に「知られざる観光名所」として取り上げられ、工事当日にもツイートが投稿されて話題を呼びました。

この角形信号機の一番の特徴は、2つの片面の信号機がセットで両面に設置されていることです。

横から見たところ。2台の信号機が背中合わせでセットになっています。

現在では両面セットで設置されるのは普通のことなのですが、角形信号機が設置されていた時代では、以下の写真のように両面が一体となったものが主流でした。

愛知県岡崎市にあった、両面が一体となった角形信号機(撤去・交換済み)

末吉橋の角形信号機は、現在の片面の信号機を両側に設置する方法の先駆けと言えます。この設置方法にすることで、道路の形状に合わせて片側ずつ角度を調整でき、ドライバーから見やすい向きに設置できるようになりました。

この両面一体の角形信号機では、信号機の情報が記載されている銘板も1つにのみ付いていて、実質2つセットという扱いになっていることから、我々信号機マニアの間では「2基セット角形」と呼ばれました。近年まで神奈川県で多く残っていたため、神奈川名物として信号機マニアが撮影する信号機ネタの定番でした。

地域性なら、「車両用と歩行者用が一体の信号機」「雪対策信号機」がすごい!

前述の通り信号機は都道府県によって微妙に差があり、かつては面白い信号機を採用していた都道府県もありました。

ここでは特に地域性が強く出ているものを2つ紹介します。

車両用信号機と歩行者用信号機が一体となっている、UFOのような信号機

宮城県に現在も残存する、車両用の信号機と歩行者用の信号機が一体となった信号機です。実際見てみると、交差点の真ん中に浮かぶUFOのような信号機で、非常にインパクトがあります。

この信号機が設置されている交差点は非常にスペースが狭く、車用の信号機4つと、歩行者用の信号機8つを別々に設置する場所がなかったため、全てを一つにまとめた信号機が設置されたようです。しかし歩行者から見ると、非常に高いところに歩行者用の信号機が設置されているため、正直見づらいです。この信号機は後にLED信号機に交換されています。

この信号機は名古屋電機工業という会社が製造した信号機で、名古屋市の中心市街地の大須の交差点に初めて設置され、その後、宮城県の小規模な路地の交差点を中心に30ヶ所ほど設置されました。現在でも似たような設置方法が取られています。

他の都道府県では点滅信号機や止まれ標識、あるいは歩行者用信号機なしの車両用の信号機のみで済ませそうな場所でも、宮城県では積極的にこのタイプの信号機を設置し、片側1車線の国道4号の交差点にもいくつか設置されていました。

この信号機は信号機マニアのみならず、信号機に興味を持たない方でも「なんだこれは?」と足を止めて見るくらいインパクトがある信号機です。もし宮城県に行く機会があれば、ぜひとも一度見ていただきたいと思っています。私の中では牛タンよりも宮城県名物として有名であるという認識で、初めて見た時は感動しました。

現在は宮城県内も急速にLED信号機に更新され、また、信号機の軽量化・小型化が進んだこともあって、このユニークな信号機も通常のLED信号機への交換が進んでいます。交通量の少ない交差点に設置されている場合は、信号機そのものが撤去され、横断歩道の標識と止まれ標識に変更されている事例も見受けられます。2018年11月時点では宮城県内に24ヶ所あったこの信号機は、2021年12月現在、もう5ヶ所しか残っていません。時代の流れとはいえ、これだけインパクトがある信号機が減っていくのは、信号機マニアとしては寂しく感じます。

ちなみに、車両用の信号機と歩行者用の信号機が完全に一つにくっついたタイプは現在宮城県にしかありませんが、車両用の信号機が4方向くっついて一つになったものは、群馬県、大阪府、滋賀県などにあります。

滋賀県長浜市にある、4方向が一体となった信号機

大阪府大阪市にある、4つの方向が一体となった信号機

豪雪地帯での試行錯誤、新潟県の雪対策信号機

豪雪地帯である新潟県では、雪対策がなされた信号機が設置されています。

十日町市にある信号機では、上部に台形の物体が付いており、赤にだけひさしが付けられていて、黄と青にはひさしがなく、雪が落ちやすいようになっていました。


新潟県十日町市にある、雪対策がなされた信号機(撤去済み)

下の写真は、越後湯沢駅前にある信号機です。こちらも雪が落ちやすいよう、赤の庇の上に三角屋根が付いています。

新潟県南魚沼郡湯沢町にある、雪対策がなされた信号機

最新の信号機事情、ご存じですか?ー最近急速に普及したLED信号機ー

古い信号機の話をしてきましたので、最新の信号機事情についてもご説明します。

信号機で点灯する円形のレンズの半径は、長らく30cmが標準でした。2017年に25cmと小型になったものが設置され、全国に普及していきました。東京都など一部を除き、現在ではこの25cmのタイプが主流となっています。

点灯するレンズの部分が小さくなり、信号機の外側の筐体の部分も小型化されたことから、既存の信号機よりも低コストでの製造が可能となりました。また信号機に付いているかさ(ひさし)の部分もなくなったものが主流となり(ひさし付きのものもあります)、非常に先進的で洗練されたデザインとなりました。

低コスト化によってますます新しい信号機への更新は加速し、古い信号機が多く残っていた愛知県や大阪府、静岡県などでも、軒並みこの低コストタイプのLED信号機へと更新されています。現在では東京都以外のどこでもほぼ同じタイプとなってしまい、「いろいろな信号機を見たい」我々マニアにとっては、やや物足りない状況となってきてしまいました。

とはいえ、信号機の機能面に立ち返ると、古い信号機には古いなりの課題があったのも事実です。点灯する部分が電球である信号機が主流だった時代には、どの色が点灯しているのか分からなくなってしまう「擬似点灯」と呼ばれる現象が課題となっていました。

西日など、太陽光が入る角度によって、このように何色が発光しているのかわかりにくい状態になっています。これが疑似点灯です。

古い電球式の信号機は、光源自体は家庭用の電球のような白色で、カバーするレンズに色が付いています。それゆえに、レンズが光を受けると、点灯していないときでもその色に光っているように見えてしまいます。これが疑似点灯の正体です。

一方、LED信号機はLEDの光源自体が青・黄・赤に光り、点灯していないときは黒くなる(素子が載っている基盤が黒色、素子は透明色のイメージ)ため、太陽光が当たっても無用な色を発することはありません。

擬似点灯は言うまでもなく交通を混乱させる可能性があり、危険です。そのため、過去には西日対策として、特殊なレンズがいくつか設置されていました。

一つはダークアイレンズと呼ばれるもので、黒みがかった暗い色のレンズを使うことで、太陽光が当たっても誤って光っているように見えないように工夫されたレンズです。点灯時にも点灯している色が見えにくいためか、普及は限定的でした。

静岡県静岡市のダークアイレンズを採用した信号機。

西日対策レンズとして一部地域(静岡県・東京都・大阪府などわずかな都府県)で採用された同心円状のレンズ

この擬似点灯という大きな問題が、LED信号機となって解決されたこともあって、日除けの役割も果たしていたひさしは不要となり、短いひさしのものや、そもそもひさしを持たない信号機が出てきました。さらに「フラット型」と呼ばれる、厚さが従来の半分以下になった薄くてひさしのないタイプのLED信号機も普及し始めました。

北海道旭川市のフラット型。このように非常に薄いです。

信号機探しは「宝探し」

なぜそんなに信号機が好きなのかとよく尋ねられます。自分は物心ついた頃から光るものが大好きで、また色が付いたものを色ごとに整理するのが好きだったことが高じて、信号機に魅せられるようになりました。

最初は信号機の見た目に漠然とした興味を持っていたのですが、信号の世界の奥深さを知るほどにさらにハマっていき、今では自分の人生のライフワークと呼べるまでの趣味となりました。

今まで信号機を撮影するために47都道府県を少なくとも2回は訪れています。居住する北海道の外への遠征は今までで109回行っており、飛行機に200回、新幹線に89回乗車して、全国各地の珍しい信号機を探し求めて旅しています。自動車の免許を持っていなかった頃は、自転車(ママチャリ)を1日180km漕ぎ、九州や四国への1週間の旅行の中では累計100km以上走り回るなど、少しでも多く珍しい信号機を撮影するべく、体を張って最大限の努力をしてきました。全国各地を旅行している間でも、昼間の撮影できる時間が削られるのが惜しいため、朝食・昼食もろくに食べず、朝5時から夜6時までずっと信号機の撮影をしているということもざらです。

珍しい信号機を見つけて撮影することは、自分にとってはまるで宝探しのようなことであり、人生一番の喜びです。

日々多くの人に見られている信号機ですが、横型の車用の信号機で赤と青のどちらが左なのかぱっと思い出せる人はそう多くはないでしょう。信号機マニア以外の人々にとっては、信号機本体への関心は極めて薄いと思います。ただ、この記事をきっかけに、皆さんがクルマでお出かけのとき、そこにある信号機を目にして、交差点の形などに合わせたさまざまな種類の信号機があることに、少しでも思いを巡らせ楽しんでもらえたら幸いです。

編集:はてな編集部

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