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時刻表マニアが厳選!週末にふらっと行ける「魅力的な駅弁と鉄道を堪能する半日旅プラン」

時刻表マニアが厳選!週末にふらっと行ける「魅力的な駅弁と鉄道を堪能する半日旅プラン」

時刻表を駆使すれば、半日で9個の駅弁をゲットできる!? ライター、放送作家であり時刻表マニアの渡辺雅史さんが、駅弁とレア鉄道を楽しみきる、半日の「電車乗りまくりの旅」を提案してくれました。ゆっくり鉄道旅を楽しめるのは少し先かもしれませんが、まずは本記事でしっかり予習をどうぞ!

調べ物をするツールと言えばスマートフォンという現代、電車の時刻を調べる際は「乗り換え案内アプリ」を使うのが一般的でしょう。しかし、かつて、2000年代前半までは「時刻表」を使って調べる人が多数派でした。「時刻表」といっても、駅にある出発時刻が掲示された看板ではありません。JR線全路線、全駅の時刻を網羅した1,000ページほどもある、分厚い冊子です。

昭和の時代は、出張などで飛行機や鉄道を使う機会の多い会社ならば各部署に1冊は常備され、書店では雑誌コーナーの一番目立つところに平積みにされるほど存在感があったのです。しかし、現在はオフィスに置く会社もほとんどなく、書店でも「趣味」のコーナーに置かれる程度。新幹線や特急のチケットを販売する売り場にも窓口は多数あるのに時刻表は1冊だけと、知る人ぞ知る存在となってしまいました。

私、渡辺雅史はそんな遺物になりつつある時刻表をいまに至るまで40年以上愛読しています。自宅には、過去の版を400冊以上保存しており、部屋に籠っては過去の時刻表をパラパラとめくり、頭の中で鉄道旅を妄想する時刻表探検家を自称しています。本稿では、時刻表を駆使した鉄道旅の魅力をお伝えするべく、電車乗りまくりの日帰り旅プランをご提案いたします。

乗り換えアプリとは一味違う、時刻表の魅力

現在は購入者の大半が鉄道ファンという時刻表ですが、もともとは公共交通機関を用いた移動のプランを組み立てるために作られたもの。そのため、ページを開くと電車の発着時刻だけでなく、旅に役立つさまざまな情報が掲載されています。

JR線の時刻、小田急ロマンスカーや近鉄特急などの私鉄の座席指定の有料特急、飛行機や高速バス、有名観光地へ向かう路線バスなどの時刻はもちろん、料金表や新幹線の指定席・自由席などの位置を記した編成表も記載。さらに駅でどんな弁当が売っているかという駅弁情報まで載っています。

ここまで網羅的な情報が載っているのだから、

「列車の前後の時刻などを調べるのに便利」

「紙で印刷されているので、列車の時間を俯瞰で見ることができる」

「全国の鉄道路線図が載っているので、運休した時などに迂回ルートがすぐにわかる」

「飛行機の時刻表は、いろんな会社の便が時刻順に並んでいて、とても見やすい(羽田〜新千歳便など、乗り入れている会社や本数が多い路線をネットで調べると、各社のページを行ったり来たりするので大変)」

など、移動のプラン作りに大変便利。

時刻表の魅力について書けと言われればいくらでも書けますが、表題にもある通り今回のテーマは「時刻表と鉄道旅」です。時刻表への思いはこのくらいにして、実際に時刻表を駆使し、日帰りで楽しむ鉄道旅プランをつくり、それを実行してみたいと思います。鉄道旅、といっても、ただ電車に乗るだけではありません。今回ご提案するのは、鉄道とともに、各地の駅弁もばっちり楽しむ旅です。さらには、ちょっとレアな電車に乗ったり見たり、というコンセプトも落とし込み、「乗って、食べて、見て」楽しむ旅にしてみたいと思います。

いざゆく鉄道旅。9個の駅弁を手に入れろ!

今回は最新号の『JTB時刻表(2022年1月号)』を参照し、東京都内発、東京都内着のおすすめプランをつくっています。また、乗り継ぎプランは休日にお出かけすることを前提に、土休日の時刻で調査しました。結果、でき上がったプランの大まかな流れは以下の図のとおり。

新宿8時40分発→(特急ふじさん11号)→御殿場10時19分着

まず乗車するのは小田急ロマンスカーの「ふじさん11号」。新宿と富士山の麓の町、静岡県・御殿場を結ぶ電車。この特急にはMSEという青い車両が使われています。

今回乗車した「ふじさん11号(MSE)」はこちら。

小田急電鉄の特急であるロマンスカーは現在、青いMSEのほか、赤いGSE、白いVSE(2022年3月11日で定期列車としての運行終了)、ブロンズ系のメタリックカラーのEXE、シルバーとグレイのEXE-αの計5つのタイプの車両を運行しており、出発時刻より早めに新宿駅へ行けば、さまざまなカラーの特急の姿を楽しめます。

上からGSE、VSE、EXE。色とりどりの車両が楽しい!

さて、新宿駅で購入したいのは「新宿弁当」。新宿と長野県・松本を結ぶJRの特急「あずさ号」の沿線の名物を詰め込んだひと品です。

「新宿弁当」1,200円

江戸時代、新宿周辺で栽培されていた「内藤とうがらし」を使用したシイタケの煮物や、甲州名物のソースかつ、信州の味噌を使った鮭の味噌焼きなど、中央線の味がこれでもかと詰まった幕の内弁当です。

こちらは「ふじさん号」が発車する小田急のホームではなく、JRのホームで販売しているので、JRで新宿へ来て「ふじさん号」に乗る場合はJRの改札を出る前に購入を。地下鉄や京王などで来られる方は、販売店へ行く際、JR新宿駅の入場券が必要になるのでご注意を。なお、「時刻表に載っている駅弁」ではありませんが、小田急の特急ホームにある売店でもお弁当を販売しています。

御殿場のほか、箱根や湘南の江ノ島へ向かう特急が発車するホームの売店で買っておきたい駅弁は「しらす弁当」。ごま油でサッと炒めて香り付けされた名物のしらすがご飯の上にたっぷりと盛り付けられた湘南の味です。

「しらす弁当」1,080円

「ふじさん11号」に乗り込み向かうは、終着駅の御殿場です。同駅は世界遺産の富士山や箱根などへの観光の拠点として賑わいます。ここに到着したら、富士山側の出口の駅舎は山小屋風のデザイン、という小ネタを楽しみつつ駅前広場に鎮座する蒸気機関車D52にお目にかかります。

昭和30年代から40年代にかけ、御殿場周辺で活躍したD52。

御殿場10時28分発→(御殿場線普通電車)→沼津11時04分着

続いて、御殿場駅からはJR御殿場線の普通電車で沼津を目指します。こちらのルートで注目すべきは、窓から望む富士山でしょう。このあたりから眺める富士山は大きさが違います。


御殿場線の車両はこんな感じ。車内から眺める富士山の姿も格別。

ただ、天候によっては、雲に隠れてまったく見えないことも。また、突然雲が発生して、頂上の部分が隠れてしまうなんてこともあります。そうなってしまってもガッカリせず「山の天気は変わりやすいなんてことを言うけど、なるほど、そういうことなのね」とポジティブに考えましょう。観光ガイドには掲載されない絶景ではない景色を味わうのも旅ならではの楽しさ。旅はガイドブックに載っている風景写真の確認作業ではありません。

御殿場線に揺られること約30分。到着したのは駿河湾に面する港町、沼津です。ここで味わいたい駅弁はなんといっても「港あじ鮨」。

「港あじ鮨」1,000円

駅弁でアジを使ったお寿司というと、押し寿司スタイルが多い印象ですが、そんな概念を打ち破ったのがこちら。酢でしめたアジを使った握り、伊豆名産のワサビ、ワサビ葉でアジの握りを巻いた寿司、アジの太巻きの3種の味が楽しめます。伊豆のワサビを自分ですりおろす、という趣向もユニーク。ちなみにこのワサビ、すりおろさずにそのまま食べても清涼感がある辛みがいい味わいです。

港町の沼津ですが、売っているのは海産物系の駅弁だけではありません。地元ブランド牛である「あしたか牛」を使った「富嶽あしたか牛すき弁当」も人気の品です。

「富嶽あしたか牛すき弁当」1,080円

牛すき煮、牛そぼろ煮、白滝、ゆで卵など、大人だけでなく子どもも喜びそうなおかずが満載です。

沼津11時37分発→(東海道線普通電車)→熱海11時57分着→熱海12時24分発→(伊東線普通電車リゾート21)→伊東12時46分着

沼津からは、東海道線の普通電車で伊豆半島の根元を横断する長いトンネルを越えて熱海へ。ここからは伊豆半島を南下する伊東線に乗り換えて、ちょっとだけ伊豆半島周遊の寄り道を楽しみます。

熱海から伊東までの移動も普通電車……なのですが、熱海駅12時24分発の伊東線は「リゾート21」という観光列車。特急券や座席指定券を買わずとも、このような電車に乗れるのです。

こちらが「リゾート21」。せっかく旅するなら、ちょっと変わった車両を狙って乗りたいもの。

熱海〜伊東を走る伊東線の時刻表のページには、この電車が使われる普通電車に「リゾート21」の表記が出ています。たまーに車両整備の関係で一般型の普通電車が使われる場合もありますが、運行情報はこの車両の運行管理を担う伊豆急のホームページで確認できます。

ちなみにこの区間では、グリーン車とプレミアムグリーン車だけで構成された豪華特急「サフィール踊り子号」の姿を楽しめますので、こちらもおさえておきたいところ。

今回は乗っていませんが「サフィール踊り子号」はこちら。

乗って、見て、観光列車をばっちり楽しみ、伊東駅に着いたら味わいたいのは、1番ホームの売店で売っている「いなり寿し」。

「いなり寿し」650円

「海沿いの街なのに、いなり寿司……?」と思う方もいるでしょう。しかし侮るなかれ。こちらは伊東駅の駅弁として60年以上販売されている駅弁界のロングセラー。かつて、天皇陛下に献上していたという由緒ある弁当なのです。

こちらのいなり寿しは、箸でつまみ上げると、汁が滴り落ちてくるほどジューシーな揚げが特徴。写真のように箱の内側にはビニールが敷かれている様子からも、その汁のひたひた感が察せるはず。

ここまでジュワジュワのお揚げを使っているにもかかわらず、酢飯の方には汁がほとんど染み込んでいないのが素晴らしい。しっかり味付けされた揚げと、酢飯が口の中で合わさります。一口食べれば長年愛される理由がわかる逸品です。

1つ1つのサイズ大きく、レギュラーサイズ(6個入り)を完食するとお腹にずっしりくるので、小腹を満たしたいのなら3個入りのハーフサイズ(350円)がオススメ。

駅周辺には日帰り温泉を楽しめる施設があるので、食休みがてら温泉に浸かりましょう。

伊東14時05分発→(特急踊り子10号)→小田原14時47分着

続いては、小田原を目指します。伊東から乗車するのは、伊豆半島と東京を結ぶ特急踊り子号。1981年より約40年間使われていた185系電車が2021年に引退し、すべての踊り子号が写真のE257系に変わり、湘南、伊豆を走る特急の姿は大きく変わりました。

伊豆の空と海の色をイメージしたというペニンシュラブルーが映える「特急踊り子号」。

伊東から小田原までの間は、相模湾が一望できる区間をたっぷり走るので、座るときは海側の窓側がオススメ。全席指定なので指定券を買うときは海側の窓側である「A席」を手配しましょう。

海沿いの風景を楽しんだら小田原駅で下車します。なぜなら、この駅は海の幸を使った弁当が大変豊富だから。

まず押さえたいのは、相模湾の名産、金目鯛を使った「金目鯛西京焼弁当」。


「金目鯛西京焼弁当」950円

西京みその旨味がのった金目鯛と、桜海老などが入った味ご飯を一緒に食べると……ここでいろいろ語るとネタバレになるので、ぜひご自身で味わっていただきたい。

もう一つは「小田原提灯弁当」。名前の通り、提灯をイメージしたユーモラスな容器は上下2段にセパレート。

「小田原提灯弁当」1,300円

下段にはマダイやオキサワラなどの身をほぐして作られた「おぼろ」がかかった鯛めしと、アサリの佃煮。上段には金目鯛の西京焼、海老の天ぷら、わさび漬け、鶏肉と筍のそぼろなどが詰め込まれた2段仕立ての和風弁当。たくさんのおかずを楽しむ人にはこちらがオススメです。

小田原15時14分発→(新幹線こだま724号)→東京15時48分着

旅の締めは新幹線。N700A、N700Sのどちらがくるかはわかりませんが、最後は最高速度285km/hの超特急でサクッと東京へ。

小田原駅を出発する「こだま号」は30分間隔で運転されているので、小田原城を見学したいとか、箱根へ足を伸ばして、もうひとっ風呂浴びたいという方は、もっと遅い時間の電車にすることも、もちろん可能です。

なお、新幹線設備のコンディションを計測するレア車両「ドクターイエロー」は、運転日、運行時刻などが一切公開されていませんが、ネット上の目撃情報によると夕方〜夜ぐらいの時間に小田原駅を東京方面へ向かうとのこと。小田原でちょっと寄り道をした帰りに新幹線のホームへ行くと、幻の車両が拝めるかもしれません。ただ、確率的には相当低いと思われるので、ドクターイエロー目当てで小田原に長時間待機するのは厳しいと思います。

今回の終点、東京。旅の終わりも駅弁でしめる

東京駅に到着したら、家に帰る前にぜひ駅弁ショップにお立ち寄りを。全国の有名駅弁を豊富に揃えるセレクトショップのある東京駅は日本一の駅弁激戦区なのです。せっかくなので、夕食用の駅弁を買って帰りましょう。

おすすめは昭和の時代から東京駅で売られている名物、「チキン弁当」と「深川めし」です。

「チキン弁当」900円と「深川めし」950円。

「チキン弁当」は、まるでお子さまランチのような見た目ですが、スクランブルエッグがちょこんとのった、ほんのり赤いご飯は、ドライトマトの旨味が利いている、下町の洋食店の味わいを思わせます。「深川めし」は江戸時代から親しまれる生姜がきいたアサリの煮物がご飯にたっぷりのったひと品。各地の名物もいいですが、東京の味もなかなかのものです。

百貨店や大型スーパーで開催される駅弁大会が人気ですが、本来、駅弁は電車の中や旅先で味わうために作られたもの。車窓から見える風景も味わいの1つです。時刻表を駆使すれば、都内発の半日の日帰り旅行でもこれだけの魅力的な駅弁を販売する駅に立ち寄るプランをつくるのも難しくはありません。

車内で飲食をすることが難しい時代ですが、人気のない駅のベンチで食べたり、このプランからちょっと外れて無人駅で途中下車し、誰もいない駅で海を眺めながら味わうなど、旅先ならではの食べ方はたくさんあります。食べて、乗って、見て楽しむ。時刻表を眺めつつ、あなただけの鉄道旅を設計してみてはいかがでしょうか。

Twitter:@watanabemasashi

編集:はてな編集部


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