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カレー、うどん、生姜焼き…定番じゃない中華の魅力

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はじめまして。増田薫です。ウェブメディア「ジモコロ」で「いつか中華屋でチャーハンを」というマンガを連載しています。

主にラーメンやチャーハン、餃子といった、いわゆる中華の王道メニュー以外の料理にスポットを当てて、なぜそんな料理が生まれたのかを食べに行って調べたり考えたりするマンガです。

知人と「中華屋のカレーってどんな人が食べてるのか気になるよな」と話していて、なんとなく何か話のネタになるかなと思って中華屋さんでカレーを見つけたら食べるようになりました。

そのうちオムライスも気になり始め、一部の地域でカツ丼があんかけで出でくることを知り、気付いたらいろいろな定番以外の中華料理を調べるようになっていました。

京都のラーメン屋さんは餃子がなくて唐揚げがあるお店が多かったり、広島では卵が埋もれるくらいあんがかかった天津飯があったり、一般的にで「牛バラ煮込み」と呼ばれている料理がなぜか神戸では「シチュー」と呼ばれていたり……どうしてそうなった?!

なぜ定番“じゃない”料理が、町の料理屋さんに存在するのか?

中華料理屋にどうしてオムライスやカレーがあるのか?

そして不思議な料理たちはなぜ生まれたのでしょうか?

大衆食文化について詳しい「近代食文化研究会」さんの著書によると、

東京府の人口は明治41年に305万人であったものが、10年後の大正7年に371万人、大正14年に448万人と、明治末から大正末期の間に1.5倍に膨れ上がった。(中略)人口増加にともなって、住宅地は郊外へと広がっていった。住宅地の近くに勤め先があるならばともかく、多くの人の場合職場と住居に距離があった。”(近代食文化研究会『お好み焼きの戦前史 第二版』No.3219〜No.3227より抜粋)

“明治末からの路面電車網の整備により電車通勤のサラリーマンが増加。オフィス街における昼間人口が増えたため、昼食需要や、夕食や帰りに一杯という需要をあてこんで、外食業が盛んになるのである。”(近代食文化研究会『串かつの戦前史』No.1409より抜粋)

とあります。大正時代、独身の方が住むような部屋には台所も冷蔵庫もなく、ましてやコンビニも弁当屋もスーパーもハンバーガー屋も牛丼屋もない時代です。

当時、オフィス街以外で食事を提供していた店は、東京で一番多かった外食店、すなわち住宅地に存在した蕎麦屋さんしかなかったのではないか……と推測しています。

さらに、関東大震災(大正12年)以降の東京では中華屋さんが増え始め、昭和初期になると

“蕎麦屋に次ぐ東京第二位の外食業となっていたのだ” (近代食文化研究会『お好み焼きの戦前史 第二版』No.3276より抜粋)

とのこと。

住まいの近くで外食できる店が限られていたとなると、お店と地域の住人との繋がりは自然と強くなっていったことでしょう。結果、その地域の暮らしやニーズに合わせた多様なメニューが、あちこちの蕎麦屋さんや中華屋さんで生まれたのかもしれません。

かくして生み出された(たぶん)その場所の暮らしを反映したような料理と中華屋さんをいくつか紹介させてください。

<この記事の目次>

  1. 故郷の拌麺(パンメン)を長崎で再現したらこうなった「康楽(かんろ)」のパンメン長崎県・長崎市
  2. 近所の住宅事情によって誕生した「くるまやラーメン 西船橋店」の肉山盛りの生姜焼き定食 千葉県・西船橋
  3. ラーメンに飽きるほどお店に来ていたお客さんとまかないから派生した「八光軒」の中華うどん 京都府・京都市
  4. たっぷりの甘口あんでご飯をかきこめ!「東龍」のジャージャー飯 神奈川県・座間市
  5. 金曜日限定 野菜たっぷりで大盛り「華栄」の中華風あんかけカツカレー 東京都・大田区
  6. 住んでいた町で知らない間に生まれていたデカ盛り店のチキン南蛮&チャーシュー定食 埼玉県・某市
  7. 料理から暮らしを想像してみる

故郷の拌麺(パンメン)を長崎で再現したらこうなった「康楽(かんろ)」のパンメン長崎県・長崎市

まずご紹介するのは、長崎「康楽」のパンメン。この料理のルーツは、中国のまぜそば「絆麺」です。長崎には中国・福建省の移民の方が多く、故郷の味を楽しむべく、絆麺を作った結果できたのが「パンメン」。その名前は福建省の訛りで「絆(バン)」を「パン」と呼ぶことに由来します。

拌麺

拌麺1,300円(税込)

パンメンの特徴は麺がちゃんぽん麺であること。昔の長崎で手に入る中華麺というとちゃんぽん麺くらいだったそうで、その名残みたいです。

「汁無しのちゃんぽん」と言われることがありますがいわゆるちゃんぽんとは別物で、麺に絡んだ具材の味がダイレクトに料理の味になり、お店ごとに味付けがかなり違います。

1948年から店を構えている老舗の中華屋である「康楽」のパンメンは、たっぷり入ったキノコの風味とニンニクがガツンときいたパンチの強い味付け。

康楽のご主人によると、もともとは長崎で暮らす福建省からの移民の方達が(福建省の省都である福州市と長崎市は友好都市提携もしています)、故郷を懐かしんでお店に頼んで作ってもらっていた裏メニュー的なものだったようです。

まず最初にそのまま食べて、少しずつお酢とコショウやカラシを足しながら食べるのが康楽のオススメの食べ方です。

康楽
https://tabelog.com/nagasaki/A4201/A420101/42000429/

MAP情報→Click!

近所の住宅事情によって誕生した「くるまやラーメン 西船橋店」の肉山盛りの生姜焼き定食 千葉県・西船橋

冒頭で触れたように、中華屋さんは地域の食堂という一面があるので、生姜焼きのような日本の家庭料理もあったりします。

中華屋さんの生姜焼きは、だいたいどこに行っても味が濃い!中華屋ならではの高火力で焼かれたタレとお肉の香りでごはんがすすみまくります。

生姜焼き

生姜焼き定食850円(税込)

全国で150店舗を展開する老舗ラーメンチェーン「くるまやラーメン」では、一部のお店で生姜焼きや野菜炒めなどの定食メニューを提供しています。こちらの「くるまやラーメン西船橋店」はそのうちのひとつ。

特にここの生姜焼きの盛りの良さは群を抜いています。生姜焼きの標高が付け合わせのスープの丼(お椀ではなくて丼で出てきます)に届きそうな勢い。ごはんも当然のように大盛りです。しかもおかわり無料。

くるまやラーメンといえば郊外の国道沿いにあるイメージですが、こちらのお店は西船橋駅から徒歩10分ほどの、マンションが立ち並ぶ幹線道路沿いにあります。生姜焼き定食を出すようになった背景は、もともとトラックの運転手さんや工事現場の職人さんなど、体力勝負の仕事をするお客さんが多かったことが理由。更に周囲にマンションができるなど住宅地が増えたことで「ちょっと中華屋の定食みたいなメニューも出すか」となり、その2つの条件が合わさった結果爆誕したのが生姜焼きの山。

ボックスシートが多く、遅い時間になっても近所の人らしき家族連れがたくさんいました。家に育ち盛りの中学生男子とかがいたら間違いなくここしか来なくなるだろうな。

くるまやラーメン 西船橋店
https://tabelog.com/chiba/A1202/A120201/12006490/

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ラーメンに飽きるほどお店に来ていたお客さんとまかないから派生した「八光軒」の中華うどん 京都府・京都市

「八光軒」は京都伏見区で長年営業されている、中華屋というかラーメン屋さんなのですが、わたしは中華料理を作っているなら中華屋に分類してもいいだろと思っているので中華屋さんということにします。

八光軒で異彩を放つのは、ラーメンのスープにうどんを入れた「中華うどん」です。実は「中華うどん」は全国各地いろいろな場所にあり、八光軒の中華うどんは常連さんから「ラーメンに飽きた」と言われて生まれたメニュー。というかお店の人も元々まかないで食べているラーメンに飽きてスープにいろいろな麺を入れて食べていたそうです。みんな飽きてたのかよ!

中華うどん

中華そば(麺をうどんに変更)650円(税込)

京都を代表するラーメン屋さん「第一旭」のそれに近い、いかにも京都ラーメンらしい真っ黒いスープ、たっぷりのチャーシューと九条ネギ、そこにスープをたっぷり吸い上げるやわやわのうどん。相性はかなりいいです。

ご近所で働くサラリーマンらしき人や、作業服姿のおじさんが大盛りのチャーシュー中華うどんとごはんをもりもり口に詰め込んでいたり、おじいさんが競馬新聞を片手に焼きそば定食を食べていたりしていてめちゃくちゃ平和。

「飽きた」とか言ってるけど、それだけ長い間愛されてきた場所なんだと思います。

八光軒
https://tabelog.com/kyoto/A2601/A260605/26000400/

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たっぷりの甘口あんでご飯をかきこめ!「東龍」のジャージャー飯 神奈川県・座間市

「東龍」のジャージャー麺ならぬジャージャー飯は軽い気持ちで大盛りを注文すると、とんでもない量のやつが出てくるので気を付けてください。

ジャージャー飯

ジャージャー飯850円(税込)

ご覧のとおり、とんでもない量です。軽い気持ちで大盛りを注文したら丼というより桶みたいな器に、ご飯がパンパンに詰まっていました。食べきれるか不安になりますが、甘口のあんに紅生姜の酸味がいいアクセントになっていて、案外スルスル完食できました。これでも足りなかったら、さらにでかい「メガ」というサイズがあります。

こんなメニューが生まれたのは単純明快、お店の目の前に県立座間高校があるから。創業して38年、腹ペコキッズからの要望によって必然的に量が増えていき、ジャージャー飯も「より多くご飯を食べるために」開発されたそうです。

しかしお店のご主人曰く、昔は女の子でも大盛りをペロリだったけど今の子は全然ごはんを食べないね……とちょっと寂しそうでした。最近はFacebookで繋がっている高校の卒業生たちがよく来てくれるとのこと。地域との繋がりも、今はインターネットが支えているのかと驚きました。

ちなみに飯と麺どっちが人気なのか聞いてみたところ、夏場はジャージャー飯がよく出て、冬の寒い季節になるとジャージャー麺が売れる傾向にあるそうです。

東龍
https://tabelog.com/kanagawa/A1407/A140703/14016733/

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金曜日限定 野菜たっぷりで大盛り「華栄」の中華風あんかけカツカレー 東京都・大田区

野菜を挟んだミルフィーユカツに更に野菜たっぷりのカレー味のあんをかけた、野菜だらけの栄養満点で超ヘルシーな中華風カツカレー。「大田区健康メニュー」にも認定されるヘルシーっぷり。金曜日限定のメニューで、金曜のお昼に行くとだいたいみんなこれを食べています。夕方にはもう品切れになっていることが多いです。なお無料で大盛りにできます。

かつカレー

中華風あんかけカツカレー880円(税込)

お店自体まだ新しく、もともとは魚屋さんだったそうです。中華街などいろいろなところで料理の修行をした店主さんが、実家の魚屋を畳んで13年前にオープン。さて、お店の宣伝をしなくてはという時に保健所から「『大田区健康メニュー』という企画があるから作ってみないか」と提案があって生まれたのがこのカレーだそうです。

普通盛りでも結構な量があり、近所に学校や町工場があるのでなんとなく「ボリュームたっぷりかつ栄養バランスのいい料理を……」みたいな感じで作られたのかな?と思っていましたが、店主さんいわく「中華は野菜もたっぷり使うし、お店の宣伝にもなるしちょうどいいと思った」とのこと。こんな形で生まれる料理もあるんですね。

華栄
https://tabelog.com/tokyo/A1317/A131716/13056590/

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住んでいた町で知らない間に生まれていたデカ盛り店のチキン南蛮&チャーシュー定食 埼玉県・某市

最後にわたしが高校生まで住んでいた町のあるお店を紹介させてください。

わたしが住んでいた場所は近所に外食できるお店があまりなく、たまに繁華街に遊びに行ってもチェーン店での食事が多かったので、そのお店があること自体知りませんでした。しかし最近になってブログやYouTubeなどでちょくちょくデカ盛りのお店として名前を見るように。

チキン南蛮

チキン南蛮ライス1,000円(税込)+チャーシュートッピング450円(税込) 

チキン南蛮ライスにチャーシューをトッピングしてもらいました。写真で伝わるか分かりませんが、ハンパなくでかい。ご飯も小さい山みたいになってます。

特にすごいのが、お店の看板料理でもあるチャーシュー。口に運ぶまではしっかり形を保っているのに口の中に入れるとホロリと溶けていきます。何をどうしたらこんなチャーシューができるんだ?

ご主人にお話を聞いたところ、お店自体はかなり昔からあったそうです。かつては今ほどの量ではなかったのが、数年前にこのチャーシューをはじめとした料理がいろいろなブログで紹介され、大食いユーチューバーが来るようになり、そのブログや動画を見て来る人たちの期待に応えるべく料理のボリュームを増やしていったら、あれよあれよとデカ盛りのお店になっていったそうです。そんなことあるんだ。

今ではお店のある市外からもお客さんが来るようになり、行列ができる人気店に。これ以上混雑すると困るので、お店の名前を出すのは控えてほしいとのこと。この日も本来22時閉店のところを材料切れ(というかチャーシュー切れ)で20時前にはお店を閉めてしまうほどでした。

閉店ギリギリで滑り込んだ部活帰りとおぼしきの高校生の団体が、大盛りのチャーシューチャーハンをうまそうに頬張るのを、自分も高校生のときにこのお店を知っていたら大喜びで通っていただろうな……とか思いながら見ていました。このお店がきっかけで大食いユーチューバーになる子もいるんでしょうか。

料理から暮らしを想像してみる

書籍『いつか中華屋でチャーハンを』の帯にスズキナオさんからいただいたコメントに“人と人とがごちゃごちゃに行き交う暮らしから否応なしに生まれてくるものこそ魅力的だ”という一節があります。正直言ってこれ以上に「定番じゃない料理」の良さを言葉にすることはできないです。感激しました。ナオさんありがとうございます!!!

わたしの場合、料理の味よりも料理が生まれた背景とか、料理やお店から見えてくる「ごちゃごちゃした暮らし」のほうに魅力を感じているような気がしています。どこにでもあるようでそこにしかない誰かの生活から生まれた、ちょっと変わった料理の数々はその場所の暮らしそのものであり、だからこそ魅力的だとわたしは思います。

旅先で見慣れない食べ物を見つけたら、そこから誰かの暮らしを想像してみるようなお出かけの楽しみ方もいかがでしょうか。

著者:増田薫
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。児童向け絵画教室勤務。フリーランスで主に紙媒体のデザイン、イラストなどを制作。8人組ソウルバンド・思い出野郎Aチームのサックス担当。ウェブメディア「ジモコロ」の連載をきっかけにマンガを描き始め、『いつか中華屋でチャーハンを』が初の著書となる。
Twitter:@masudakaoru_


編集:はてな編集部

食べておいしい、行って楽しいスポット、この記事にもあります!

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