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駅伝を先導する白バイの超絶ライテクを知る。安全&機敏を極めたバイク走行を見せてもらおう!

白バイ
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<この記事は13分で読めます。>

箱根駅伝というものがある。正式名称は、東京箱根間往復大学駅伝競走。毎年1月2日〜1月3日の2日間、東京の大手町から箱根の芦ノ湖までの往復を各大学の選手が襷(たすき)をつないで走る駅伝競技大会だ。1920年から始まった歴史ある大会で、1987年からはテレビ中継も始まり、毎年多くの人を熱狂させている。

中継を見ていると、白バイが駅伝ランナーを先導していることが分かる。ごくゆっくりと、ランナーと常に一定の距離を保っているのだ。

この先導、一見かなり簡単そうに見えるが、実はかなり難しいのではないだろうか。なにしろ先導する白バイの車体は全くブレていない。限りなくゆっくりと自転車を漕いでいる自分を想像してみてほしい。多分、自転車はふらふらと頼りなく進んでいくだろう。少なくとも、私の場合はふらふらしまくる。

駅伝の先導、気になる……。一体どのような人が、どのようなテクニックを使いこの任を果たしているのだろうか。

今回は、警視庁所属の白バイ隊員の方に協力を仰ぎ、実際に私がランナーとして走り、駅伝を先導する際に必要な知られざるバイク操縦テクニックを見せてもらった。

<この記事の目次>

  1. 正月の国民的イベント「箱根駅伝」で活躍する白バイ
  2. 選ばれし白バイ隊員しかできない箱根駅伝の先導
  3. 駅伝先導の超絶テクニック
  4. 一定の距離を保ちながら走行する技術を披露!
  5. 箱根駅伝は白バイにも注目!

正月の国民的イベント「箱根駅伝」で活躍する白バイ

言うまでもないが、白バイとは警察が実務に使用する、白でペイントされた専用バイクだ。これにまたがる白バイ隊員の職務は、交通違反の取り締まりというイメージがあるが、それだけでなく、要人警護や今回紹介する駅伝の先導など、実はかなり幅広い。

警察官ならば誰でも白バイ隊員になれるわけではなく、審査を経て、厳しい訓練をこなさねば職務にはあたれない。もちろん、晴れて白バイ隊員となったその後も、厳しい訓練は継続的に行われるのだ。それだけに、隊員の公道を安全かつ機敏に移動する技術は超ハイレベル。一見ゆっくり走っているだけに見える駅伝の先導にも、隊員のさまざまな技術が垣間見えるはずだ。

交通安全センター

どうもこの記事を書いている地主です!警視庁が管理する交通安全教育センターに来ました! このセンターの近くには白バイの訓練所もあります

街を歩いていても白バイを見かけることもあるだろう。私は別に悪いことは一切していないけれど、白バイを見ると緊張する。なぜだろう、本当に悪いことはしてないけれど。

今回は白バイが怖い、という話ではなく、白バイ隊員の方に箱根駅伝の先導について聞いてみる。

箱根駅伝の先導を務めることは、隊員にとって大きな名誉だと聞く。だだし、この任務につけるのは、高いライディングテクニックを持つと認められた、限られた隊員のみだという。

選ばれし白バイ隊員しかできない箱根駅伝の先導

今回お話を聞いたのは、警視庁第五方面交通機動隊に所属する藤本陵汰巡査長。2021年の箱根駅伝では往路第1区で先導を担当したという。実績はそれだけでなく、2021年10月に無観客で行われた「全国白バイ安全運転競技大会」では、傾斜走行操縦競技(いわゆるスラローム走行)で日本一になっている。

藤本巡査長

まずは藤本さんが白バイ隊員になった経緯を聞く。

もともとオートバイが好きで、警察官への憧れもあったので、自然と白バイ隊員になりたいと思っていました。白バイ隊員は志望者の多い職種で、私と同じようにオートバイ好きな人が白バイ隊員を志す人が多い印象です。

オートバイが好きな人にはたまらない仕事ではあると思うが、白バイ隊員になるには警察官採用試験をパスし、その後、約40日間の訓練を受けて一定の技術基準を超えなければならないという。あまり知られていないが、かなり狭き門だそうだ。

箱根駅伝の先導任務に就くには、さらに厳しい基準をクリアしなければならない。

箱根駅伝の先導任務はとても名誉な仕事と認識していたので、高校時代からの夢でした。ただ上司が日頃の勤務や訓練の様子、技術を鑑みて推薦するものなので、志望したら必ずできるというものではありません。

白バイ隊員になったからと言って必ずできる仕事ではないそうだ。

さらに先導できるのは1度か2度だけ。まさに千載一遇の舞台といえる。警視庁では白バイ隊員の中から技術、知識、人格等が特に優れている、と判断された隊員が選定されるそうだ。

技術や知識の他に人格まで問われるのだ。なるほど、藤本さんと話をしていると、すぐに真面目な好青年という一面が伝わってくる。

実際に箱根駅伝で先導を務めたときはどのような気持ちだったのだろうか?

箱根駅伝がスタートして、先頭集団がミラーに映った時は感極まるとともに、ランナーを安全に先導しなければならない大役であると改めて実感し、気持ちが熱くなりました。

終わってからも自分がこの大きな大会に関われたという感動で、思わず目頭が熱くなったのを覚えています。

藤本さん

藤本さんにとって夢にまで見た仕事なのだ。もちろん箱根駅伝のランナーだって感極まっていると思うけれど、白バイ隊員の方々も同じ。感極まって涙することもあるのだ。走行中に涙を拭きたい時だってあっただろう。

ないです!忍耐です!我慢です!

白バイ隊員は片手で運転することは許されないのだ。途中で顔が痒くなることだってあるかもしれない。でも、かいてはダメなのだ。では、顔が痒くなったらどうするのだろうか?

我慢です!忍耐です!

我慢なのだ。大変な仕事だ。もちろん寒いのでくしゃみや鼻水がでる可能性だってある。だとしても我慢なのだ。ただ藤本さんは、緊張感からか集中していたからか、寒さなどはあまり感じなかったと言っていた。

白バイ

ちなみに私はいまバリバリ寒いです!

こうした努力のおかげで安心してランナーは走れるし、私たちは安心して応援できるということだ。

白バイ

緊張感なく白バイ隊の方と話せたのは初めて!

藤本さんは「先導した箱根駅伝を親も見ていて喜んでくれた」と話してくれた。また長く会っていなかった学生時代の友人からも「見たよ」と連絡を受けたそうだ。箱根駅伝の裏側にはランナーだけではない、いろいろな人のドラマがあるのだ。

駅伝先導の超絶テクニック

箱根駅伝の先導では通常の任務とは少し異なるテクニックが必要とされる。

何より重要なのは低速を維持しつつ、車体を安定させながら走るということ。

オートバイだけでなく自転車でもそうだが、ある程度スピードが出ていた方が、車体は安定する。「ゆっくり走る」とは、不安定な二輪では難しく、それを安定して行うには卓越した技術が必要なのだ。

白バイ

白バイ車両はCB1300Pと呼ばれます。ホンダのCB1300SB(SUPER BOL D’OR)をベースに、赤色灯、拡声器、バッグ、電子機器など白バイ専用の装備を多数装着した特別仕様です!

箱根駅伝での先導では、だいたい18km/hで走っていたと記憶しています。もちろんランナーの方の走行ペースが変わってくるので、それに合わせてスピードも調整しますが、速くても20〜22km/h程度です。

バイクにとって、このスピードは極めて遅い。それはそうだ。20km/hといえば、自転車だって簡単に出せる速度なのだから。しかも、白バイは非常に重いバイクだ。ノーマルのCB1300SBの車両重量はカタログスペックで272kgと比較的重いバイクだが、そこに白バイ用の装備が多数搭載されるのだから、さらに重量は上がる。バイクは重ければ重いほど、低速で車体を安定させるのは難しくなる。荷物満載の自転車がふらつきやすいのは、きっと多くの方が想像できるだろう。

しかし、日頃から訓練を積む藤本さんは、こともなげに言う。

20km/h前後であれば、速度を保ちつつ車体を安定させることは十分可能です。そもそも、スピードが1km/hでも2km/hでも、バイクが走ってさえいれば、速度も車体姿勢も維持できます。

純粋にすごい。ではこうした低速走行は、どのような操作で実現しているのだろうか。

低速で走る際は右足で操作するリアブレーキ(後輪ブレーキ)が大切になってきます。先導で走行しているときは「引きずりブレーキ」といって、常にほんのわずかにリアブレーキを効かせている状態です。

なるほど、常にリアブレーキをかけた状態。低速で走る際はリアブレーキを使用すると車体がふらつきにくくなる、とバイクに乗る方ならば教習所で習ったことがあるだろう。自転車をお持ちならば、ゆっくり走りながらリアブレーキ(自転車の場合、左手にあるブレーキ)をほんの少し効かせることで、車体が安定することを実感できるはずだ。だが、駅伝の先導ではどの程度リアブレーキをかけているのだろうか。

イメージとしてはこのくらいです。

白バイブレーキ

ん?ほんとにブレーキ踏んでる?

なお、リアブレーキを解除した状態は以下の写真のとおり。

ブレーキ白バイ

ん?ほんとにブレーキ踏んでない?

全然違いが分からないので、写真を重ねて見てみよう。

ブレーキ白バイ

ほんとだ。すこーーーーーしだけブレーキをかけている!

藤本さんの言うように、リアブレーキを踏み込むのは“ほんのわずか”だ。写真から計測してみたが、ブレーキの踏み込み量は、角度にしてわずか2度ほど。実に精妙なブレーキコントロールである。

さて、気になるのは加速時のコントロールである。先導の速度がだいたい18km/h。ランナーがスパートした際は、20〜22km/hほどと藤本さんは説明してくれたが、2〜4km/h程度の加速とは、1300ccもの高出力エンジンを抱えるバイクにとっては、誤差のようなものではないだろうか。

加速時、アクセルを開ける量もほんの少しです。周囲の方が見たら、アクセルを開けたかどうか分からないくらいだと思います。

アクセル

うん、こちらも違いが全然分からないレベルですね!

こちらも写真からどの程度アクセルを開けているか計測してみたが、その量、こちらも角度にしてわずか6度であった。

ランナーの方のペースに合わせて加速する際は、リアブレーキをじわりと解除しつつ、同時にアクセルもじわりと開けていきます。丁寧に素早く操作し、車体が前後にぶれないように、スムーズに加速させねばなりません。なお、ギアは基本的に1速か2速を使用します。1速でアクセルを開けると素早く速度が上がりますが、2速を使うと加速の仕方が若干緩やかになるので、「ほんの少し加速する」といった場合には、2速にシフトアップしスムーズに加速させるようにしています。私が実際に先導をした際は、スクータータイプの白バイを使用したのでシフト操作は不要だったのですが(笑)。

アクセル、ブレーキ、そしてギアシフト、全ての操作は基本的なものである。だが、その基本的な操作を微細に、正確に、素早く実施することが技術なのだ。こうした技術を極めるべく、白バイ隊員の方は日夜訓練する。

藤本さんも日々オンロード、オフロードで訓練を行い、週休日・非番日はジムでトレーニングを実施しているという。頼れる、と心から思う。

白バイ

頼れるよね!

一定の距離を保ちながら走行する技術を披露!

さて、箱根駅伝の映像を見ていて気になるのは、先導の白バイとランナーの距離である。常に白バイ↔ランナーの距離は変わらないように見える。もちろん、ランナーがスピードアップをすることもスローダウンすることもあり、レース状況は刻一刻と変化する。先導する白バイもランナーに合わせ、先の技術でスピードを調整しているのだろう。

基本的に、ランナーの方とは約20mの距離を保っています。

約20mの間隔とは、テレビで見ると……

こういう感じだろう。しかし、真横から見ると……

こんなに離れている!

後方を走るランナーの方を確認するにはバックミラーを使います。振り返って目視することは基本的にありません。

バックミラー

ミラーに映る約20m離れたランナーはこんな感じ。実際に肉眼でミラーをのぞかせてもらうと、ランナーの姿はもっと小さく、感覚的には小指の先っちょくらいのサイズ。

白バイミラー

こんな風にミラーでランナーの方を確認しつつ、周辺全てに気を配る。頼りになる!

箱根駅伝の先導が決まると、後方のランナーとの距離を常に20m程度に保つ訓練が行われるそうだ。その方法とは……

バックミラー

こんな方法でやるそうです!

ミラーにテープを貼り、その位置に常にランナーを捉えながら走行する。

私の場合、ランナーの方の足を常にテープの位置に収めるよう訓練を積みました。本番ではテープを使いませんので、訓練のなかで「20mの間隔」を身体に染みこませます。

それでは実際に私がランナーとして走り、藤本さんには一定の距離を維持する運転を披露してもらおう!

箱根駅伝の本番同様、私と白バイが約20m離れた位置から同時にスタートして、200mほど走る検証を行なった。

今回、特別に先導する白バイの後部にカメラを設置させていただいた。

カメラ

白バイ後部にカメラを設置し、後方を走る私を撮影します!

こちらで私が走っている様子を撮影する。意地悪にも、私はゆっくり走ったり、スパートをかけたりする。それでも映像の中で私の大きさが変わらなければ、ほぼ一定の距離を保ち続けていると言っていいだろう。

白バイ

いくぞーーーーー!

その結果はというと……

RUN

こちらが白バイ後方のカメラの映像を切り出したgif。普通に走ったり、スパートをかけて走ったりで変化をつけているのに、常に赤で囲った中に私がいる! 

ご覧の通り。スマホのカメラを使用しているため、どうしても揺れがある映像になっているが、常に枠の中に私が収まっていることがお分かりいただけるだろう。

次に真横からの映像を。藤本さんと私が走る様子を、クルマを並走させ撮影してみた。

RUN

真横から撮影したらこんな感じ!

こちらもご覧の通り、ほぼ一定の間隔を保ち続けている!私は駅伝ランナーになったつもりで、全力で走った。加えて、途中から失速したり、またスピードを上げたりと、速度はてんでバラバラだ。にもかかわらず白バイは一定の距離を保っているのだ。

白バイの加速のスムーズさにも注目してほしい。加速はすれども、「グンッ」とスピードを上げるのではなく、スーっとスピードが増していく様子が見て取れる。すごい!

私は正直「ちょっと意地悪して距離詰めたろ!」と考え、唐突に速く走ったりしたのだが、それに合わせて白バイも即座にスピードを上げる。まるで振り付けしたかのように距離が保たれていて、見ていて気持ちがいいほどだ。

何度も繰り返し走り、スピードも変えたのだが、ずっと距離を保たれている。追いかけても追いかけても距離を縮めることも、逆に離れることも許されない。まるで叶わない恋のように。

2021年、年始の大会で藤本さんは、第1区(大手町〜鶴見中継所間、約21km)を担当し、約1時間先導したそう。1時間もランナーとの間隔を一定に保ち続ける技術もすごいが、高い集中力がなければできる芸当ではない。

地主

全力疾走もしたよ!

ちなみに私が普通に走っている状態で速度は12km/hくらい。全力疾走でやっと18km/hくらい。箱根駅伝のランナーの速度はだいたい18km/hオーバーなので、白バイもすごいけど、やっぱり駅伝のランナーもすごいということを再確認した。

もはや短距離ダッシュですやん。

白バイ&地主

とにかく疲れた(撮影のために何度も走ったから)

ランナーの速度に合わせるアクセルワーク、低速でも左右にフラつかせない、車体コントロールは「すごい」の一言だ。走った私はフラついていた。疲れで。

白バイ隊員の方はもちろんランナーだけに気をとられるわけにはいかない。後方を気にしながらも、沿道の観衆にも注意を払わなければならないのだ。

体の軸を動かさず、常に目だけを動かし、周囲の状況を確認しなければなりません。先導とはいえ、前方への意識もとても大切で、さらに後方のランナーとの距離はもちろん、沿道の方への注意喚起も必要になります。なので目玉だけ行ったり来たりです。周囲360度全てに注意を払いながら運転するので、やはり集中力が必要です。ただ、これは駅伝の先導だけでなく、日頃の職務においても同じです。あらゆる方向に注意を払い、国民の皆さまの安全を守るべく職務にあたっています。

箱根駅伝は白バイにも注目!

公道を安全に機敏に走行するべく、訓練を積み、さまざまなテクニックを身に付けている。最後にターンを見せてもらったのだが、これもすご過ぎた。あんなに大きなバイクでこんな小回り。

小回り

かっこいい!

駅伝の先導ではまず使われないテクニックであるが、こうした機敏な動きを正確にこなせるからこそ、低速でのバイクコントロールも正確にこなせるのだろう。

例年、多くのファンに見つめられ盛り上がる箱根駅伝。その裏側に、白バイ隊員の方の正確すぎる技術、任務を遂げるための日々の努力、そして先導にかける熱い想いを知った。

2021年の箱根駅伝には、警視庁交通機動隊ではのべ48台の白バイが任務にあたったというが、隊員の方々の技術と努力、そして想いが重なり国民的行事を支えているのだ。ぜひ、次の箱根駅伝では白バイ隊員の方々にも注目していただきたい。ランナーとの距離が変わらないってすごいことなのです。

白バイ&地主

藤本巡査長、ありがとうございました!

取材・文:地主恵亮
撮影:奥隅圭之
編集:はてな編集部

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