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COLUMN コラム

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」
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 なんか疲れたな……。最近、そう思うことが多くなってきた。社会人5年目。いまの会社でそこそこ大きな案件も任されるようになった。部下もできた。
 やりがいは感じつつも、上司、部下、取引先と、なにかと調整することが多く、自分のせいではないのに、あーだこーだと言われる日々。こないだだってそうだ、またあの上司が……。

 そんなとき、ぼくは週末、都心から逃げるようにして山に向かう。そんなときと言いつつ、ほぼ毎週のように行っているのだが。それを知っている友だちは、山の麓に引っ越しちゃえばいいのに、と言うけど、そういうことじゃないんだ。ぼくは都会も好きなんだ。たまに山に行くから新鮮に感じるし、非日常を感じられるのだ。行く山は、たいてい都心からクルマで1時間半ほど。近すぎず遠すぎず、このくらいがちょうどいい。

 今日は、朝5時に起きて山梨県の山に来た。登山口を目の前にしただけで、気分が上がる。なんだかこの気分を味わいたいがために、日々仕事をしている気さえする。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 樹林帯の登山道を登りはじめる。もう楽しい。もちろん登りはラクじゃない。ぼくはマゾじゃないし、べつにしんどさを求めているわけではない。じゃあ、なんでわざわざ登るのかというと、山に来るとすべて自分次第というのが楽しいのだ。どのルートをどんなペースでどう歩こうと、すべてはぼくが決めること。どこで休んだっていいし、どこでやめたっていい。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 でも、仕事はそうはいかない。いちいち承認が必要だし、ぼくがこうだと思っても反対されることもある。好き勝手できることなんてない。それに比べて、山に入ってしまえばすべてはぼくの自由。まわりにあるのは自然だけ。土も、木も、花も、虫も、空も、太陽も、ただそこにあるだけ。ぼくのことなんて無関心。誰も干渉しない。これがいい。たまらなく楽しいのだ。

 今日の山は、登山口から山頂までのコースタイムが1時間20分。あっという間だ。ぼくは気がつけば、コースタイムよりも早く山頂にたどり着いていた。この時間なら、余裕で隣の山へと縦走することだってできる。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 でも、ぼくは腹が減っていた。行動食を口にすればいい、というレベルではない。がっつりと心ゆくまでメシを喰いたい気持ちでいっぱいだった。縦走なんてどうでもよくなっていた。そして山頂に腰をおろしたぼくは、料理の支度にとりかかっていた。

 ぼくは大のカレー好きで、週に3回は欠かさない。でも、山ではカレーは作らないと決めている。山で食べるカレーは美味しいに決まっているが、せっかく山に来たのにカレーを食べてしまうと、また日常に引き戻される気がしてしまうからだ。

 今日の天気予報は晴れだった。予想気温も30℃。こんな暑い日こそ、スパイシーでガツンとくるものを喰らいたい。汗もたっぷりかくだろうから汁物がいい。ぼくは今週の半ばからメニューを決めていた。豆乳担々麺だ。味の決め手ともなる肉味噌は、昨日の晩に家で仕込んで冷凍して持ってきた。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 まずはガスバーナーでフライパンを熱し、肉みそを焦がさないようにじっくりと炒める。もうこの時点で、たちのぼる味噌と豆板醤、花椒(ホワジャオ)の香りがたまらない。
 火からおろして、クッカーにのせかえ、豆乳、水、トレイルバター(ナッツバターにココナッツオイルをブレンドした、オールナチュラル、グルテンフリーのエナジーフード)を入れ、混ぜながら火にかける。沸騰したら棒ラーメンをバサッと入れ、頃合いを見計らってミックス野菜を投入。火が通ったら粉末スープを入れてよくかきまぜて火を止める。仕上げに、肉味噌を盛り、温泉卵、パクチーを添えてでき上がりだ。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」
孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 汗だくで喉がカラカラのぼくは、真っ先にスープをすすった。豆乳の甘みと、粉末スープの塩味、トレイルバターのコクと旨味、豆板醤の辛味が一体となった汁が、血液のごとくぼくの全身にいきわたっていく。よく甘酒のことを飲む点滴というが、ぼくにとってはこの豆乳担々麺のスープこそが飲む点滴だ。
 次は野菜かなと思いつつ、もうそんな手順なんてどうでもいいという気になって、野菜と麺を手荒く箸ではさんで口にほうり込み、ワッシャワッシャと咀嚼した。咀嚼が終わらないタイミングで、二の手、三の手と、どんどん口に入れていく。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

 よし、ここで味変だ! ぼくは後乗せ用に持ってきた花椒をたんまりとかけ、すぐさまかっ込んだ。よし、いいぞ。この痺れを欲していたんだ。咽喉への刺激と、鼻孔を抜けていくこの感じに恍惚感をおぼえる。グォホッ……案の定、途中で何度かむせたものの、そんなのはお構いなしに食べつづける。誰も見てやしないし、咎められることだってない。食べたいように食べるだけ。

 無我夢中だった。こんなに我を忘れて夢中になれることなんて、日常生活ではほとんどない。これが山の魅力なのか、いや山メシの魅力なのか。

 富士山が見えることで有名な山頂にもかかわらず、ぼくは終始メシに夢中だった。ぼくにとっては、富士山よりもこの豆乳担々麺のほうが遥かに偉大なのだ。

孤独の山グルメ「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」

取材/文:ヒマラヤ五郎  撮影:藤田慎一郎 レシピ監修:monami   

「日本一の富士山を無力化させてしまう豆乳担々麺」レシピ

○肉味噌は家で調理して冷凍してから持っていけば、山行中に食材が痛むリスクも軽減できるし、山での調理も楽に。
○温泉卵は卵ケースに入れていくと良い。卵があるだけで断然豪華な仕上がりに。
○分量はたっぷり男子1人前

【材料】
A.肉みそ
  豚挽肉 150g
  しょうが、にんにく 半片ずつみじん切り (チューブタイプでも良い)
  ねぎ 5cm分を微塵切り
  みそ 大1
  醤油 大さじ1
  砂糖 大さじ1/2
  酒 大さじ1
  ごま油 大さじ1
  豆板醤 小さじ1〜2 (好みの辛さに合わせて)
  花椒 適量(あれば)

調整豆乳 200mlパック 1個
水 300ml
トレイルバターオリジナル 1パック
マルタイの棒ラーメン 麺と粉末スープ1人前
ミックス野菜 150g
温泉卵 1個
パクチー 適量(あれば)

【作り方】
◎家で下準備
1.ジッパー付き保存袋にA.肉みその材料をすべて入れ、全体を軽く混ぜる。揉み込みすぎて肉を潰さないように。肉と調味料が合わさったら、空気を抜くように平たく潰してジッパーを閉じて冷凍する。
◎山で調理
1.フライパンを熱し、肉みそを焦げないようにじっくりと炒める。
2.クッカーに豆乳、水、トレイルバターを入れ、混ぜながら火にかける。沸騰したらラーメンを入れる。
3.ラーメンを入れてから2分半後、ミックス野菜を追加し、さらに30秒火を通す
4.火を止めて、粉末スープを入れて軽く混ぜたら、1.の肉みそを盛り、温泉卵、パクチーを添えて出来上がり。

TRAIL BUTTER(トレイルバター)
アメリカ・ポートランド発。ナッツバターにココナッツオイルをブレンドした、オールナチュラル、グルテンフリーのエナジーフード。スポーツやアウトドアの補給食として直接食べるのはもちろん、パンやフルーツに塗ったり、料理の隠し味にも使える便利な一品。
オフィシャルサイト:https://trailbutter.jp

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