COLUMN コラム

phaさんとモバイルハウスを見に行こう。「動く家」の住人が見せてくれた、「定住」と「移動」の狭間の暮らし

phaさんのモバイルハウス見学メインカット
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<この記事は18分で読めます。>

それははたして、家なのか?クルマなのか?
赤井成彰さんが生活の拠点とするのは、1トントラックの荷台に居住スペースをセルフビルドした「モバイルハウス」。クルマなのだから、もちろん移動は可能。そして、“ハウス”なのだから、もちろん居住可能。赤井さんはこのモバイルハウスに乗り込み、「生活まるごと」持ち運びながら日本中を旅し、いま、モバイルハウスで生活する人が集える、「モバイルヴィレッジぼちぼち」の建設に注力しています。

こんな赤井さんの生活に興味を持ったのが、ブロガーであり作家としても活動する、phaさんです。phaさんも住んでる場所に飽きるとすぐに引っ越す、ふらりと知らぬ街に出かけ、ビジネスホテルに泊まりインターネットしているだけ、という旅をするなど、「普段の生活を持ち運ぶ」かのような移動にかけては経験豊富なのです。

今回、phaさんとともに赤井さんのモバイルハウスを訪問し、「定住」と「移動」の狭間。そして「日常」と「旅」の狭間にある赤井さんの生活をじっくりと見学させてもらいました。

赤井成彰さん
北海道大学農学部を卒業後、大手玩具メーカーに就職するも、ハワイでの自給自足生活を実現させるべく退職。移住の準備を進めるなかでモバイルハウスの存在を知り、DIYでの製作に着手する。完成したモバイルハウスで日本全国を旅し、2020年より神奈川県相模原市でモバイルハウスが集える村「モバイルヴィレッジぼちぼち」を始める。現在はモバイルハウス生活や旅の様子、村の開拓の様子など、自身の「生活冒険」のあれこれをYouTubeや各種SNSで発信している。
YouTube:生活冒険家 赤井成彰 Nariaki Akai
Twitter:@nariakiakai
Instagram:nariakiakai


phaさん
京都大学を卒業後、ある大学の職員として働くが仕事に飽きて退職し、ニート状態に突入。ゲストハウスを転々とする生活を送った後、ネット上の仲間とゆるくつながれる場所として、シェアハウス「ギークハウス」を南町田に立ち上げる。ブログを通じた発信を行うなかで、徐々に執筆業に取り組むようになり、いつしか「日本一有名なニート」と呼ばれるように。シェアハウス生活に飽きてきたことから、2019年に一人暮らしに移行する。
Twitter:@pha
ブログ:phaの日記


<この記事の目次>

  1. 総予算75万円!モバイルハウスを見せてもらおう
  2. 村の様子を見せてもらおう
  3. 決まりごとをつくっちゃうと、苦しくなる
  4. 価値観が変わったら、そのときまた違う生活を模索すればいい

総予算75万円!モバイルハウスを見せてもらおう

都内で(普通の)クルマに乗り込み、目指すは神奈川県相模原市にある「モバイルヴィレッジぼちぼち」です。クルマを走らせること約2時間。高速を降り……

山道を進み……

野趣あふれる、とある集落の最奥に……

モバイルヴィレッジぼちぼちの全景

建設中の「モバイルヴィレッジぼちぼち」が広がります。

ようこそ!お待ちしてましたよ。

今日はよろしくお願いします。赤井さんのYouTubeはいろいろ見てきましたが、モバイルハウス、自分の目で見るのは初めてです。

ベースになっているのはマツダのボンゴトラックという1トン車で、その荷台に箱(家)が載っています。箱のサイズは、大体、全長3.1×全幅1.3×全高1.9mといったところですね。スーパーも銭湯もこの家ごと行ってますよ。

すべて赤井さんの手作りなんですか?

そうです。このハウスが僕の人生初DIYだったんですよ(笑)。材料はほぼすべてホームセンターで買ってきたもので、材料費は大体29万円くらい。クルマ込みで、75万円くらいで完成しました。

モバイルハウスのうろこ状の外壁

外壁がウロコになってる。

ウロコは全部廃材でできてるんですけど、これがなかなか大変で。いかんせんDIY素人だったので、なんの見通しもなく廃材を切り出して、最初の20枚くらいを切ったあたりで、「あ、こりゃ一人じゃ無理だ」と(笑)。結局、全部で1200枚くらい必要になって、ここは仲間に手伝ってもらいました。

ぜひ、家の中も見せてください。

もちろんです。じゃあ、ドアを開ける準備をしますね。

足場が自動で出てきた。

これ、いいでしょ!自分で考えたんですけど、我ながら「この機構は発明だ!」と思いました(笑)。いっとき、モバイルハウス界隈……まあ狭い界隈なんですけど、これが流行ったんですよ。あと、ドアノブも見てください。

モバイルハウスのドアノブ

これもいいでしょ。お伊勢参りに出かけた途中、川でいい感じな木を拾ったのでノブにしたんです。

この木の前はどんなノブを着けていたんですか?

その前はノブ付けていなかったんです。ここはちょっとこだわりで、いい木に巡り会うまではドアノブは付けない、って思ってました。さあ、中を見てください。

モバイルハウスの室内

ここで寝泊まりしています。だいたい2.2畳(床部分)くらいですね。

普通の家で2.2畳って聞くと狭いなって思うだろうけど、こうして見ると「せまっ」という感覚はないですね。

天井に傾斜がついているので、そのおかげで少し広く感じるのかも。傾斜のおかげで水はけもよくなっているんです。

最近、雨漏りするようになったって動画で見ました。

そうなんですよ。ある日じわーっと水がしみこんでいるのが見えて……。もちろん直すつもりなんですけど、いまは見て見ぬふりをしてます(笑)。

あまり狭さを感じないのは、外の空間とつながっている感じがあるからかな。僕は家は広い方がいいなーと思いますけど、こういう空間だったらいいかもしれない。家の外まで家、みたいな感覚で、ふらっと外に出ていけそうだし。

“家の外まで家”っていう感覚は、あるかもしれないです。クルマを止めた場所が自分の家だし、そこから見えるのが自分の庭、みたいな感覚です。寝るときは、ソファー代わりのマットレスを伸ばして……

モバイルハウスで寝るときの様子

こんな感じです。マットレスは家を借りていたころから使っているものですけど、奇跡的にばっちりフィットしました。で、掛け布団代わりに使っている寝袋は、上の(運転席の上部)棚に収納してます。

モバイルハウスの収納

左のボックスが衣類。中央が寝具で、右の木箱に調理道具が収納される。「実家にサーフボード、スノーボード、自転車がありますけど、これが僕の持ち物のほぼすべてですね」と赤井さん。

やっぱり荷物少ない。僕も昔、会社員辞めてバックパック一つであちこちふらふらしてたときは、荷物はこれくらいの量だったんですよ。でも、それ以降だんだんと持ち物は増えてきちゃった。こういう荷物の少ない生活は憧れます。いまの僕は、荷物持ちすぎですね……。

僕、大学時代からすごい引っ越し多くて、1年に一回くらい引っ越してたので、そのたびに荷物が少なくなって、モバイルハウス生活になったときもあまり荷物を減らしたわけじゃないんです。収納はもう一つあって、ポータブル電源や履き物みたいな、よく使うものはこの可動式の棚にしまってます。

モバイルハウスの移動棚

これ、実は棚としてだけじゃなく、椅子にも使えるように作ってるんです。壁にある板を持ち上げてみてください。

モバイルハウスのデスク組み立て

「おじゃまします」と部屋に上げていただきつつ、板を上げると……。

折りたたみ式のテーブルになっているんです。このテーブルで料理したり、動画の編集したりしてます。テーブルを支えるパーツはAmazonで1,300円で買えました(笑)。で、可動棚が椅子になるように、ちょうどいい高さにしてます。

モバイルハウスでphaさんが座る

あーーなんか居心地いいですね……。落ち着く。なんだろう、清潔感もあるし室内に木の香りが漂ってて気持ちいい。目の前に窓があるのも素敵ですね。

モバイルハウスの窓

居住スペースには天窓、壁面には横長の窓が備わっている。ガラスではなく、1mm厚のアクリル板を2重にしている。

ありがとうございます!このハウスを作るときに、窓にはこだわりたかったんですよ。太陽の光で目を覚ましたかったので、天窓をつけています。モバイルハウスなので移動すれば日々外の風景は変わるでしょう。壁の窓があれば、そうした日々変化する景色を楽しめるじゃないですか。もうひとつ、このハウスで絶対実現したかったのが、縁側だったんです。いま縁側を出すのでちょっと待ってくださいね。

今日は雨を吸っていてめっちゃ重かったですけど、これが自慢の縁側です!

モバイルハウスの縁側

おおーこれはすごい!

ぜひ座ってみてください。大人2人くらいなら問題なく座れる強度がありますから。

モバイルハウスの縁側を内側から見る

目の前に川が流れていて、すごく「いい庭」っていう感じがしますね。

そうなんです。クルマを止めて、縁側を開けばそこが自分の庭になる、という感覚です。石川県に「千里浜なぎさドライブウェイ」という日本で唯一、クルマで走れる砂浜があるんですけど、そこで止めさせてもらって縁側を開くと、まるで「海が自分の庭」です。

赤井さんがモバイルハウスで千里浜なぎさドライブウェイを旅した写真

モバイルハウスの縁側から眺める千里浜なぎさドライブウェイ。写真は赤井さんのInstagramより。

うわーそれはいいですね。石川県だけでなく、このモバイルハウスで全国を巡ったんですよね。

そうなんです。北は北海道から南は九州まで。日本中を巡って、その土地土地で生きている面白い生活をしている人を見てみようと思って。でも、移動を続けるなかで、モバイルハウス生活に足りないものも見えてきたんです。足りないもの、というのは、当然の話なんですけど、人との適度な接触だなって。だから、自分と近い価値観を持つ、モバイルハウスに住む人が集まれる場所として、この村、「モバイルヴィレッジぼちぼち」を作ろうと思ったんですよ。

いまは「ぼちぼち」の運営人という立場なんですか。

そうです。「ぼちぼち」のコミュニティはこの村だけでなくオンライン上にもあって、メンバーは全部で120人近くいます。参加費は一人毎月1,000円です。僕の1ヶ月の生活費が5万円前後なので、集まったお金のなかから、5万円は僕が受け取っています。いまの僕はその5万円とワークショップの講師なんかをしてもらったお金で生活していて、コミュニティの維持・運営、それからこの村の管理や設備作りなんかをやっているんです。

いま、村にはなにがあるんですか。

サウナ、炭焼き窯、ティピ(ネイティブアメリカンが使用した、テントのような移動式住居)、図書室、それに畑です。村の様子もぜひ見ていってください。ちょうどお昼なので、畑で採れた野菜でお昼ごはんを作りますよ。

それは見てみたいですね。

まずは畑に案内しますね。ちょっとだけ歩きますけど、途中ヒルが出るかもしれないので、足下には十分気をつけてくださいね。

赤井成彰さんのビーサン

そういう赤井さんが一番防御力が低い。

村の様子を見せてもらおう

モバイルヴィレッジぼちぼちを歩く赤井さんとphaさん

これから向かう畑は、耕作放棄された土地を提供してもらって、「モバイルヴィレッジぼちぼち」に集うメンバーとともに再び開拓したんです。そもそも、「ぼちぼち」の土地も、この集落のある地主のおじいちゃんに提供してもらっています。

畑ではどんな作物を作っているんですか。

ジャガイモ、トマト、大根、空心菜、トウモロコシ、里芋、サツマイモなど、ほんとにいろいろです。まだ開拓したてなので、土に合う作物を探っている状態です。

モバイルヴィレッジぼちぼちの畑の様子

ここですね。畑はしっかりフェンスで囲まれているんですね。

猪、鹿、アナグマ、キツネとか、この辺は動物もたくさんいて、夜になるとサファリパーク状態になることもあります(笑)。もともとススキだらけだった土地をクワを使って手作業で畑にしたんです。ススキって根が強いんですね。クワを入れても弾かれちゃうんで「ほんとに開拓できるの?」って絶望的な気持ちになりましたよ(笑)。2ヶ月以上はかかりきりだったかな。去年の秋になんとか畑になって、大根の種をまいたら冬には60本くらい収穫できて、あれは嬉しかったですねー。

なぜ自給自足生活をしようと思ったんですか。

自分でもよく分からないモチベーションですけど、生活力を上げたかったんですよね。食べ物が作れれば、生活するうえでの不安材料をひとつなくせるように思ったんです。あと、「食べ物を自分で作れるってカッケー」みたいな思いがあって。さあ、ここで採れた作物、見てください。

モバイルヴィレッジぼちぼちで採れた野菜

おおー立派なジャガイモ。トマトもここで採れたものですか?

いや、トマトは多分買ったやつです(笑)。ちょっとそこの川で野菜を洗いますね。

モバイルヴィレッジぼちぼちを流れる川

この川の水が生活用水なんですか。

体を洗ったりするのはこの川です。あとは、すぐそこにサウナを作ったんですけど……

モバイルヴィレッジぼちぼちのサウナ

「どうせ汗と湿気ですぐに傷んじゃうから、床材はいらないかなーと思って」と赤井さんが語る、土の上に直接置かれるサウナ小屋。もちろん赤井さんはじめ、「ぼちぼち」メンバーの手作り。

モバイルヴィレッジぼちぼちのサウナに入る赤井さんとphaさん

風呂&サウナ好きのphaさん。かなりテンションが上がっている。

一汗かいた後の水風呂にもなってます。飲み水は、集落内を少し歩いて……

モバイルヴィレッジぼちぼちの湧き水

この湧き水を使わせてもらってます。この水道は僕らが作ったものではなく、集落の方が湧き水を飲めるように濾過設備を整備されたそうです。整備された方はすでに集落外に引っ越されたんですが、いまも時折ここに来ては設備のメンテをしてくれているんですよ。

モバイルヴィレッジぼちぼちの湧き水を飲むphaさん

「あ、おいしい。口当たり柔らかいですね。ミネラルウォーター買うよりいいかも」

コーヒー淹れると最高ですよ。この水のおかげで集落の幸福度がめっちゃ上がってると思います。せっかくなので、他の設備も見ていってください。村の少し外れにあるのが図書室です。

実はこの小屋、僕が『TVチャンピオン極 夢の軽トラハウス王決定戦』という番組に出たときに作ったもので、材料はすべて廃材です。他の番組出場者の方はプロの建築家とかだったので、なんで素人の僕が……という感じでしたが(笑)。

モバイルヴィレッジぼちぼちの炭窯

そしてこれが、炭窯です。元々、集落に備わっていたものなんですが、使われなくなって何十年も埋められたままだったんです。僕らと集落の人たちで協力して掘り起こして、4月に炭焼きしてみたんですけど……

モバイルヴィレッジぼちぼちでつくった炭

いくらバーベキューやっても使い切れないくらい炭ができました(笑)。

決まりごとをつくっちゃうと、苦しくなる

それじゃあ、お昼にしましょうか。この集落の水でお米を炊いて、「ぼちぼち」で採れたジャガイモでスープを作ります。

赤井さんのキッチン用品

塩、こしょうなどの基本的な調味料、食器や調理器具は木箱ひとつに収まる。

赤井さんはどうしてこういう暮らしをしようと思ったんですか。

ずっとハワイで自給自足の生活をしたいっていう夢があったんですよ。ただ、そうした生活をしようにもビザの問題があって、日本とハワイをいったり来たりになっちゃいそうだったんです。そうすると日本に家を借りておくのももったいない。それに、ハワイで暮らそうと思ったらある程度お金を貯めなきゃいけないですよね。

どこかで支出を減らさなきゃいけないと考えて、当時の生活のなかで一番お金を使っていた家賃を削ろうと。そのうち、インターネットでモバイルハウスというものがあることを知って、しかも数十万円で作れる、と。当時は毎年100万円近く家賃を払っていたので、こりゃあいいなと思ったんです。

この生活になって、どのくらいの時間が経つんですか。

モバイルハウス生活になって、2年半くらい。「ぼちぼち」で暮らすようになってちょうど1年くらいですね。モバイルハウス生活に切り替えるのに不安じゃないのか、なんて聞かれますけど、「とりあえず、やってみればわかるでしょ」くらいの感覚でこの生活になりましたね。それに、もし自分の肌に合わなければ止めればいいだけですから。

赤井さんがご飯を炊く様子

コンロは一つしかないため、まずご飯を炊き、蒸らしの途中にスープを作る。

そうですよね。嫌なら止めちゃえばいいし、その場所に飽きたら動いちゃえばいい。生活を変化させるのは面倒だけど、僕は「嫌なことはやりたくない」っていう気持ちが強いので、「嫌なこと」を解消するのが面倒に勝りますね。

僕も同じかもしれません。僕はめっちゃワガママな人間なので、自分を取り囲む「嫌な状態」に気付いちゃったら、多分耐えられないですよ。だからか、自分の生活に自分で決めごとを作りたくないんです。さっき畑を見てもらったとおり、いま、自分で食べるものはある程度、自分で作っています。

でも、別に100%自給自足でなきゃいけない、なんて考えていないんです。「自分が食べるものはすべて自分で作るべし」みたいに決めてしまったら、多分苦しくなっちゃいますよ。だから、食べ物を作るのも自分にできる範囲だけ。「トマト採れた!カッケー!」くらいに楽しんでいられるのが、ちょうどいい加減だと思っています。

赤井さんが野菜を切る様子

ジャガイモ、トマト、そして畑で収穫したニンニクも加えスープを作る。

僕もできるだけ物事に縛られたくないし、自由に動き回りたいと思っているので、赤井さんの生活に共感できる部分がたくさんあります。それにこの「ぼちぼち」の雰囲気も、僕がやっていた「ギークハウス」というシェアハウスに似ている。

僕がシェアハウスをやっていたのは「一人が好きだけど、誰かとつながれる場所」を確保しておきたかったからなんです。かといって、パーティとかたくさんやってコミュニケーションするのも、なんかリア充っぽくて苦手(笑)。熱心に人と関わりたくないけど、一人でいるのに嫌になったときに誰かがいる、みたいな微妙な距離感のシェアハウスを作りたかったんです。

「ぼちぼち」に滞在している人も、一人になりたかったら自分の家に入ってしまえばいいわけですよね。さらに言えば、“モバイル”ハウスなんだから、嫌になったら家ごと出ていってしまえばいい。住民同士、適度な距離感を保てるコミュニティという意味で、シェアハウスの理想形に近い気がします。

赤井さんの昼食

赤井さんのこの日のお昼ご飯。ベジタリアンなのですか、と尋ねると、「全然違います。お肉、めっちゃウェルカムです」と赤井さん。「この生活をしていると、油の処理に困ることが多いんです。特に旅先では、油の混じった水を勝手に捨てたら、その土地の方に迷惑をかけてしまう。だから野菜中心の食生活になりました」と笑う。

さっきお話したとおり、僕がこの「ぼちぼち」を始めたのも、人とのつながりが必要だと思ったからなんです。そして実はもう一つ理由があって、モバイルハウスを安心してずっと止めておける場所を作りたかったんです。日本にはそういった場所がなかったんです。

いくらクルマとはいえ、好きな場所に好きなだけ止めておけるわけじゃないので、ずっと果てなく移動し続けなきゃいけないわけです。僕自身、1年間日本中を移動し続けてみて、その生活に疲れてしまったんです。だから、モバイルハウスを安心して止めておけて、かつモバイルハウス生活者がつながりを持てる場所として、この村を作ろうと思ったんです。

価値観が変わったら、そのときまた違う生活を模索すればいい

いまはこの村に定住しているんですか。

基本的にこの村にいます。いまの僕の生活って、定住と動ける生活のいいとこ取りしているようなものなんですよ。定住らしい安心感もあるけど、どこかに行きたくなったら、家ごと移動できてしまう。旅に出る、みたいな大きな移動だけでなく、この村の中をちょっと動いて、暑い日は木陰に家を移すみたいな移動だってある。「家が動く」っていうことには、いろいろな可能性があるんだなーって感じているので、定住+モバイルハウスという生活をしているんです。phaさんはいろいろな場所に移動するのがお好きだと本で読んだんですけど、phaさんにとって定住ってどんな意味があるんですか。

スープを飲むphaさん

スープをごちそうになりつつのお話に、熱がこもる。

飽きっぽいので、いろいろな場所を転々としていたいんですね。できれば毎日違う場所にいたい。でも転々とするばかりでは疲れてしまうから、「定住」を確保しているのかもしれませんね。赤井さんはいまの生活に不便を感じることはないんですか。

うーん……僕は「本当に必要なもの」って、そんなに多くないと思っているんです。極端ですけど、ただ生きるだけだったら、家と食べ物があれば、多分問題ない。僕の家、かなりすっきりしていると思いますけど、これでもモバイルハウス生活を始めたころと比べると、モノは増えているんです。最初はほんとに最小限の荷物しかなかったんですけど、そこに「なにを足せば生活は成立するか」と実験してみたいという思惑があって、その結果としていまの生活に落ち着いています。

僕の家には冷蔵庫もエアコンもないですけど、それらがなくても僕は暮らしていけることがわかってしまった。きっと便利・不便って、どこに水準を置くかで変わってくるんでしょうね。最近じゃあ、銭湯でシャワー浴びるだけで「すげーお湯出てる!シャワーって便利!」って感じますよ(笑)。友人には幸福の沸点が下がってる、なんて言われますけど、沸点が下がっている分、幸福を感じる機会も多くなってるんじゃないかって捉えてます(笑)。

赤井さんお話する姿

僕も会社辞めてふらふらしてたときは、バックパックに入る荷物だけでなんとかなってたんですけど、そこからシェアハウスを始めて、その後、一人暮らしするようになって、だんだんモノが増えて贅沢になっちゃってる。多分、僕の幸福の沸点上がり続けてるんで、ちょっと怖いですね。一度上がっちゃったら、下げるの難しいし、維持できなくなることも怖い。モノを持ちすぎるのも、考えものですよね。なんか堕落してしまったような感覚になる。

でも、僕もこうした生活をずっと続けるかは、まったくわからないです。ライフステージが変わったら、この生活がフィットしなくなるかもしれない。phaさんも年齢や価値観の変化によって、シェアハウス生活を止めたんですよね。僕も同じように価値観が変わって「移動生活、しんどい」ってなるかもしれない(笑)。そうなったら、そのとき違う生活を考えればいいし、その時々で、幸せに感じる生活を模索できればいいんじゃないかなって思ってます。

モバイルハウス生活を広めようとも思っていないんですか。

まったく思ってないです。僕はいま、この生活を楽しんでますけど、モバイルハウスが多くの人にフィットするものだとは、まったく思っていません。YouTubeやSNSでいろいろ発信していますけど、それもこの生活を広めるためじゃなく、人によっていろんな生活の仕方があるってことを、考えてもらうきっかけになってほしいと思ってやっているんです。僕の発信を見て「モバイルハウスなんて絶対マネしたくない。いまの生活が幸せだ」って感じてくれたら、僕としてはそれも最高のリアクションだと思っています。

赤井さんがモバイルハウス生活を送っていて、サンプルを見せてくれるから、いろんな人がこういう暮らしが「あり」とか「なし」とか考えられるわけですよね。僕も今日、いろいろ見せてもらって自分の原点を思い出せたように感じます。僕も昔は赤井さんに似た生活をしていて、それを楽しんでいたはずなんだけど、いつの間にか普通の暮らしになっていた。自分の暮らしにワクワクするような感覚って大事だよなって確認できたような気がします。

そう言ってもらえて嬉しいです!今日は来てくださってありがとうございました。

こちらこそ。今日は赤井さんの生活を見せてもらってよかったです!

モバイルハウスに腰掛ける赤井さんとphaさん
編集:はてな編集部
撮影:赤司 聡
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