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どんなときに、どれくらいの保険がおりるの? 「自動車保険」の基礎知識

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クルマを所有する上で必須となるのが、自動車保険。「加入しているから大丈夫!」と思っていても、その補償内容や使用方法をしっかりと把握できていない方も多いのではないでしょうか。事故や故障など万が一のトラブルに備え、知っておきたい自動車保険の基礎知識を、株式会社ファイブクルーの松井浩美さんに伺いました。

松井 浩美(まついひろみ)
全日空の客室乗務員、水泳インストラクターの経験を経て保険業界へ。株式会社ファイブクルーにて、損害保険と生命保険を提案する保険のコンサルタントして活動中。「困った時にお役に立てること」を目指して、保険の提案を行っている。
https://fivecrew.co.jp/

「自賠責保険」と「任意保険」の違いをあらためておさらい!

――「自賠責保険」と「任意保険」の違いはどのように捉えたらいいのでしょうか?

自賠責保険はクルマを所有したら必ず加入しなければならないもので、「強制保険」とも呼ばれています。自賠責保険に加入していなければ、車検を通すことができませんし、公道を走行することもできません。それに、もし自賠責保険に加入していないクルマを運転した場合、罰金や免許停止処分などを受けることもあります。

自賠責保険でどんな補償が受けられるのかというと、その内容は「人」への損害に対する補償のみ。とはいえ、事故を起こした際に「クルマの運転者」あるいは「クルマの所有者」がケガを負った場合は、自身が加入している自賠責保険では補償が受けられません。あくまでも事故の相手方や、運転者と所有者以外の搭乗者が負ったケガなどに対して保険金が支払われます。

――つまり、壊れたモノやクルマ自体への補償が自賠責保険にはないのですね。

はい、そこが自賠責保険と任意保険のもっとも大きな違いです。ただ、「人」に対する補償も自賠責保険の内容のみでは十分といえないケースが多々あるため、任意保険の「対人」や「人身傷害・搭乗者傷害」でカバーしておいたほうが安心できますね。

「任意保険」の字面だけを見ると、加入していてもいなくてもどちらでもいいような印象を受けますし、実際に個々人が加入の判断をする自由度の高い商品ではありますが、クルマを所有する上で任意保険への加入はもはや必須ともいえるくらい重要です。

本記事の読者の中にも「私は自賠責保険にプラスして任意保険にも加入しているよ!」という方はいらっしゃると思います。しかし、特に年齢が若い方の中には経済的な理由から保険料を捻出することが難しく、任意保険への加入を諦めるケースもあるといいます。万が一の事態が発生した場合に備えて、まず「任意保険ではどんな補償が受けられるのか?」を詳しく知り、その上で自分自身にとって必要な補償を取捨選択したいものです。

任意保険を契約する上で押さえるべきポイント

――難しく感じる任意保険の内容を理解するにはどうしたらいいでしょうか?

保険の細かな規約まですべてを頭に入れようとするのは非常に難しいですが、ポイントを押さえれば理解がしやすくなります。自動車任意保険の場合、契約の中身を大きく3つに分けることができます。

1つ目は対人・対物といった「相手方の人やモノに対する補償」、2つ目は人身傷害や搭乗者傷害といった「ご自身や搭乗者に対する補償」、そして3つ目は車両保険の「クルマに対する補償」です。この3つの枠組みを基軸に考えれば、補償内容がどんなものなのか整理でき、特約を選んで付帯する際にも内容がより把握しやすくなると思います。

――「人身傷害」と「搭乗者傷害」の違いはどんなところでしょうか?

「人身傷害保険」は、衝突してしまった相手の補償、「搭乗者保険」は、ご自身のクルマに乗っていた乗員の補償です。

人身傷害も搭乗者傷害も同じ搭乗中の傷害保険ですが、支払われ方に違いがあります。人身傷害保険は「実損払い」、搭乗者傷害保険は「定額払い」という方式です。人身傷害保険の実損払いとは、実際にかかった費用に応じて保険金が支払われます。

例えば契約時に保険金額を3000万円に設定していた場合、事故によるケガなどで入院や通院が必要になった際だけでなく、その間の収入補償や精神的な損害に対してなど、実際に被った損害についてあらかじめ設定した3000万円を上限に補償するものです。

一方、搭乗者傷害保険の定額払いは治療などで実際にかかった費用にかかわらず、「入院したら○万円」のように契約時に選んだ保険金額がまとまって支払われます。保険会社によっては人身傷害保険か搭乗者傷害保険のどちらかしか加入できない場合もありますが、ダブルで加入できる場合、搭乗者傷害保険は人身傷害保険の上乗せという考え方が一般的ですね。

――搭乗者傷害保険の「搭乗者」には運転者も含まれますか?

含まれます。搭乗者傷害保険の補償対象となるクルマに乗車中の方は「搭乗者」に含まれるため、運転者であっても補償が受けられます。保険約款には補償の対象となる人の範囲が明記されていますが、隅々まで読み込むのはなかなか根気が要りますよね。人身傷害保険・搭乗者傷害保険では、運転者本人あるいは搭乗者の方に対する補償が網羅されているというポイントを覚えておけば安心です。

「搭乗者」という言葉から「同乗者」をイメージして、運転者は除外されてしまうのではないかと心配する方も少なくないと思います。保険にまつわる頻出用語の定義を把握しておくだけでも、いざというときの安心材料になるかもしれません。

ペット、盗難、災害…… 補償されるのはどこまで?

――対物保険では具体的にどのようなケースが補償されるのでしょうか?

他人の財物に与えた損害を補償するのが「対物保険」なので、事故が起きた際の相手車両そのものはもちろん対物の補償対象に入ります。最近ニュースなどでよく見聞きする「ブレーキとアクセルの踏み間違えでクルマが店舗に入ってしまった」というような場合は、店舗の建物自体だけでなく、壊してしまった商品に関しても対物の補償範囲として扱われます。

さらに、線路内で立ち往生し電車を遅延させた場合の損害賠償なども対物で補償することが可能です。こうした損害が多額になるケースも絶対に起こり得ないとは言い切れませんし、自賠責保険では補償されない部分になりますので、任意保険で備えておいてほしいところです。

――飼っているペットをクルマに同乗させた際、もしも事故でペットに損害が生じた場合はどうなるのでしょうか?

一般的に、自損事故の場合「動・植物に対する補償」はありません。相手がいる事故で、相手方に過失がある場合、相手方の対物補償として保険金が支払われるケースもあるそうです。ペットは家族のように大切な存在として捉えている方も多いと思いますが、残念ながら自動車保険におけるペットはあくまでも「モノ」という認識になってしまいます。

――車両保険では、盗難や災害による損害も補償されますか?

補償対象となります。ただし、地震・噴火・津波によって車両への損害が生じた場合については補償されないので注意が必要です。車両保険には自損事故の場合も補償が受けられるタイプと、相手がいる事故の場合にのみ補償が受けられるタイプの大きく分けて2つの種類があり、どちらの場合も盗難や災害による損害は補償対象となります。

対人・対物や人身・搭乗者傷害に車両保険を追加すると保険料が大幅に上がる場合があるため、加入を躊躇する方も少なくありません。万が一の場合に愛車が損害を被って後悔することのないよう、車両保険の加入要否はしっかりと吟味してほしいところです。

――特約や付帯サービスは保険会社ごとに多様なラインアップがありますよね。

弁護士費用特約やレンタカー費用特約など、各保険会社に用意されたメジャーな特約は、ご存知の方が多いと思います。近年は、特約やサービスの種類が多様化しており、自動車保険の内容の一部でありながら自転車保険にも強い特約を打ち出していたり、事故対応コールセンターの品質を重要視し安心感を提供する保険会社があったりと、各社が独自性をもった特約やサービスを取り扱っています。保険の更新時には、前回の保険を契約した時点にはなかった新たな特約が登場している場合もありますので、契約内容の見直しは必ず行ってほしいですね。

――日常生活賠償(個人賠償責任補償)特約はクルマに直接関係のない損害も補償してくれるのですか?

例えば、飼い犬が他人に噛みついてケガをさせた場合や、小さなお子さまがデパートの商品を壊してしまった場合などの損害を補償する内容となっています。クルマが一切絡まない場面で生じた損害を自動車保険の特約で補償してもらえるのは心強いですよね。

ユーザーからの問い合わせ件数が増加中 「ドライブレコーダー付き保険」とは?

――最近出てきたドライブレコーダー付き保険とはどのようなものですか?

ドライブレコーダー付き保険については、お客さまからのお問合せがかなり増えてきています。どのようなメリットがあるかというと、もちろん保険会社によってドライブレコーダーの機能は異なりますが、中にはクルマへの大きな衝撃を感知するとドライブレコーダーから自動的にコールセンターへ通信がつながり、オペレーターが「大丈夫ですか?」と即座に音声で状況確認してくれるものもあります。また、一定の応答がない場合は救急車を手配してくれるなどの対応も迅速なので、常に保険会社が見守ってくれている安心感がありますよ。

ほかにも、自分では気が付かない運転のクセをドライブレコーダーが記録・分析するシステムを搭載したものも登場しています。これは高齢者ドライバーが免許を返納するタイミングを図る上でも重宝されるようになりました。家族内での感情的な説得では免許証を返納したがらなかった高齢者の方が、ドライブレコーダーの客観的な分析結果を知って自身の現状を知り、前向きに検討するきっかけになったというケースもあると聞いています。

走行中の映像を記録してくれるだけでも便利なドライブレコーダーが、個人の運転スキルを把握するにも役立つと聞くとぜひ活用してみたくなりますね。高齢者の免許返納時期について悩みや不安を抱えているという方は、保険会社のドライブレコーダーを導入してみるのもひとつの手かもしれません。

――最後に、事故や故障が発生した場合の対処方法を教えてください。

もしも事故が発生してしまったら、何よりも「命」を優先することが重要です。相手がいる事故の場合はまず相手にケガがないかを確認し、必要に応じて速やかに救急車を呼びましょう。それが済んだら、次は二次災害の防止措置を取ります。発煙筒やハザードランプを使って事故が発生していることを周囲に知らせ、可能であれば安全な場所にクルマを移動させるなどの対応が必要です。

現場の安全が確保できたら、警察に連絡を入れましょう。クルマの損傷が少なく、ケガ人が出ていないからといってその場で示談するのは絶対NGです。のちのトラブルを防止するためにこれだけは必ず守っていただくよう、私もお客さまに常日頃お伝えしています。

それから、事故の目撃者がいれば目撃者の方の氏名や連絡先などを聞き、最後に保険会社へ事故報告の連絡を入れます。事故やトラブルが起こった場合にかけるフリーダイヤルを各社が開設していますので、そちらに架電するのがスムーズです。実際の現場では気が動転してやるべきことがわからなくなると思いますが、とにもかくにも「ケガをした人のケアを最優先」を念頭に置いて行動してもらいたいですね。

「万が一」であっても「事故は起こる」ことを忘れずに!

「保険証券を見ても内容がよくわからないし、更新時だけチェックすればいいや」と保険をどこか遠い存在のままにしてしまいがちですが、松井さんに教えていただいたポイントを押さえればこれまでよりも保険がグッと身近に感じられるはずです。「万が一なんてどうせ起こらない」と高をくくる前に、「万が一だけど起こるかもしれない」とあらゆる可能性について想定し、自分自身にフィットする保険内容を見つけていきましょう。

※補償や特約の内容については各保険会社のパンフレット等をご覧ください

取材・文:吉田奈苗/編集:奥村みよ(PASSERBY GRAFFICS)+ノオト

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