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東名高速トリビアとSA・PAグルメをめぐる旅【東京→愛知】

東名高速トリビアとSA・PAグルメをめぐる旅【東京→愛知】

高速道路、SA・PAに隠されたトリビアを知ると、ドライブがもっとおもしろくなるかも?日夜、高速道路のことを考え続ける山形みらいさんが、東名高速にまつわるあれこれを解説します。不要不急の外出は控えねばならず、SA・PAの営業も制限されている状況で、落ち着いてドライブを楽しめるようになるのは少し先。また旅に出られる日までの予習として、ぜひご覧ください!

高速道路は長々とクルマを走らせる退屈な道?いやいや、そんなことはありません。高速道路とは土木技術者達の熱いロマンが込められた芸術作品であり、知れば知るほどおもしろい、トリビアの宝庫なのです。本稿では、日本サぱ(SA・PA)協会会長であり、高速道路の魅力をお伝えするべく、ハイウェイタレントとして活動する私、山形みらいが、知っていればドライブがもっと楽しくなる、高速道路トリビアの旅にご案内いたします。

今回ルートに選んだのは、多くのドライバーに利用されている、東名高速道路(以下、東名高速)。東名高速は、名神高速で培われた「自然との調和」をコンセプトとする土木技術と、技術者の英知の結集。そこには、利用者を飽きさせないための数多くの工夫と想いが込められているのです。

それでは、東京から愛知まで、東名高速に関するトリビアを、途中で美味しいサぱめしでも食べながら、一緒にたどって行きましょう。

<この記事の目次>

いざ出発!東京ICから語りたい「名前」のトリビアと、絶品豚汁

ちょっと待って!東名高速の起点は用賀じゃないの?

さっそく、東京ICから東名高速に乗る……のですが、ここにすでに小ネタが隠されているのです。多くの方が「用賀から東名に乗って……」と口にされるように、東名高速の起点は「用賀」と思われがちです。しかし実は、用賀とは「首都高速の出入り口」の名称であり、東名高速の起点を示すものではないのです。東名高速の起点を示す資料はいくつかありますが、「高速自動車国道の路線を指定する政令」では、「東京都世田谷区」と表現されています。また、日本道路公団が1970年に出版した『東名高速道路建設誌』では、起点は「世田谷区瀬田町(資料原文まま。現在の世田谷区瀬田周辺)」と表現しており、砧公園の一部を用地として取得した経緯も示されています(編注:国土交通省道路局の2006年の資料など、東名高速の起点を「東京都世田谷区砧公園」と表現するケースも見られる)。

東名高速と首都高速は双方を降りることなく行き来できるがゆえに、こうした勘違いが生まれるのかもしれませんが、東名高速が全区間開通した1969年は、東名高速と首都高速は繋がっていませんでした。それから2年後の1971年に東名高速は東京料金所から首都高速3号渋谷線へと繋がり、いよいよ「全線開通」となりました。そして東名高速の名称に関するトリビアは「起点」だけではありません。そもそも、「東名高速」の名にも、あまり知られていない事実があるのです。

「東名高速」という名前、実はニックネームなのです

多くの人は「東名高速」という名前に対して違和感はなく、日頃からそのように呼んでいると思います。しかし実は、その名前はニックネームで、正式名称は「第一東海自動車道」です。

「東名高速」という名は東京と名古屋を結ぶイメージを想起させますが、「第一東海自動車道」という名前からは、名古屋周辺など、「東海地方の道路」というイメージを持ってしまいます。ちなみに、「第二東海自動車道」は新東名高速を指しますが、一部伊勢湾岸自動車道も含んでいたり、国道指定されていたりと複雑怪奇なので、ここでは敢えて語らず、別の機会に譲ろうと思います。

通り過ぎると後悔するパーキングエリア、それは「港北PA」

名前の話ばかりで疲れてしまいましたか?では、そんなあなたにさっそく、絶品サぱめしをご紹介します。東京ICから少しクルマを走らせて、港北PAに入りましょう。港北PAは平日はビジネスドライバーで利用する人が圧倒的に多いです。なぜなら、首都高速3号渋谷線の東名高速方面にはパーキングエリアがなく、東名高速に入って最初の休憩ポイントが港北PAにあたるからです。


パーキングエリアはサービスエリアの補完的な役割として設置されており、港北PAもその役割をしっかりと果たす素晴らしいパーキングエリアです。そして、ここには素通りするなんてもったいない、絶品サぱめしがあるのです。

絶品手作り豚汁定食とは?

港北PAのオススメメニューは、なんといっても「手作り豚汁定食(640円)」です。ポイントは「手作り」というところで、いちから仕込んで手間暇かけて作っています。また、そのお値段もが良心的です。私たち日本サぱ協会が全国100箇所ほどのSA・PAを実地調査してみた結果、SA・PAにおける豚汁定食の平均的な値段は700円(2021年日本サぱ協会調べ)なので、お手頃に食事を済ませたい方にはありがたいメニューなのです。

さて、気になるそのお味ですが……これがまた美味しいのです!まず、具の野菜がごろごろと大きくて、量もたっぷり。豚汁というと濃厚なミソ味を想像しますが、こちらの1杯は、煮詰まった感じもなく、あっさりとしていて、食べやすい優しい味です。お箸を進めていくと、豚肉の旨みを吸ったタマネギと、ほんのり甘い豚肉の調和が楽しめます。さらに、刻みネギは提供直前に添えられるので、汁を飲むときにネギの香りがふんわりただよい、食欲をそそられます。

食券の販売機にも、こだわりの「手作り」の文字が。

定食には生卵もついてきますが、これを卵かけご飯にしてもいいですし、豚汁に入れても、また美味しいです。豚汁がしっかりと主役として成り立っているサぱめしは、なかなか貴重です。さあ、レアなグルメを堪能したら、次はみなさんの大好きな海老名SAに向かいましょう。

海老名SAは上下線を行き来できる時代があった?

サービスエリアの設置間隔は、例外はあれども概ね50~60kmごと(パーキングエリアのそれは、概ね15~25kmごと)ですが、東名高速を建設するとき、海老名SAは東京ICから約30km地点に設置されました。これは、東京から出発して最初に休憩したくなる距離が30kmという試算があり、かつ、建設当時は海老名SA付近より車線が3車線(片道)から2車線に減り、渋滞の発生が予想されました。こうした背景から、「ここで休憩しましょう、旅支度をしましょう」という機能を果たすべく、現在の位置に設置されたのです。

海老名SAの歴史には、おもしろい話がもうひとつ。サービスエリアは「景勝地に設置する」という意図を含む場合があります。しかし、海老名SA周辺は富士山が綺麗に見える、といったこともなく、景色を楽しむ点では特筆すべきものがなにもありませんでした。そこで、海老名SAでは東名高速開通当初、「高速道路を行き交う車」を名勝にしようと試みたのです。園地の内側に建物を建て、さらに上下線を跨道橋(オーバーブリッジ)で結び、訪問客が行き来できるようにし、跨道橋の上から高速道路を走るクルマを眺めて楽しめる仕掛けを作りました。

海老名SAの歴史が刻まれた遺構を訪ねる

さらに、この海老名SAの跨道橋上にレストランを作る計画がありましたが、当時の法律では道路の上空に建物を建てることは許されず、実現にはいたりませんでした。その結果、跨道橋だけが残ったのです。

今も残る跨道橋。(写真は海老名SA上り線で撮影)

開通から50年以上が経過した今でもその跨道橋が残っており、現在は横断幕や標識を付けるなどの役割を果たしています。現在は老朽化もあり補強工事を受けていますが、いまも東名高速をまたぐ跨道橋の下をくぐるとき、昭和から脈々と続く歴史に思い巡らせてみると、東名高速の旅が少しおもしろくなるかもしれません。

港北PAでご飯食べたあとは、EXPASA海老名でコーヒーでもいかが?

さて、海老名SAに寄ったのなら、少しコーヒーブレイクを。2020年7月、海老名SA下り線が「EXPASA(エクスパーサ)」になりました。EXPASAとは、NEXCO中日本エリアの複合商業施設のことです。この名は従来のサービスエリアを超えるという意気込みから、exceed(超える)、excelsior(向上)などの言葉をインスパイアしたものです。その名のとおり、新たなテナントが増えてこれまで以上に面白いサービスエリアになり、賑わいを見せています。

私のEXPASA海老名下り線のお気に入りはカフェで、特にサイフォンで淹れたコーヒーが美味しく、ぜひオススメしたい1杯。高速道路でサイフォン式コーヒーが楽しめるのはここだけで、コーヒーができる様子をガラス越しに楽しめます。もちろんテイクアウトもOK。私は必ず立ち寄って、コーヒーで旅支度してからGOします。この先の行程は長いですからね。

大井松田分岐「右ルート」or「左ルート」の謎

海老名SAを出発して少しすると、東名高速ドライバーならば一度は「ん?」と感じたことがある、あのポイントに到着です。そう、大井松田IC付近の「右ルート・左ルート」の分岐です。みなさんは普段、どちらのルートを走るでしょうか。

私たち日本サぱ協会が2020年5月に東名高速をよく利用する人195人にWebアンケートを実施したところ、「右ルート派42.7%、左ルート派48.2%、その他(とくに決めていない、など)4.6%」といった具合でかなり接戦の様子です。

こちらが分岐の様子ですが、追い越し車線側にいた場合、吸い込まれるように右ルートに導かれるので、先を急ぎたい人は右ルートを選択するようです。また、大型車が比較的少ないのも、右ルートの特徴です。一方で左ルートには鮎沢PAが設置されており、ひと休みしたい方がこちらを選ぶこともあるようです。

えっ?右ルートはかつての上り線?どういうことか詳しく!

さて、かくも悩ましい分岐ですが、実は、右ルートはもともと上り線だった、という事実をご存じでしょうか。

「大井松田IC~御殿場IC」区間は、天候が変わりやすく、山と谷が複雑で、さらに土質も工事に不向きという、道路建設においては三重苦ともいえる環境でした。そのため工事は難航し、東名高速の中で最後に完成した区間だったのです。

東名高速が開通した当初は上下線で2車線ずつ、計4車線の道路でしたが、交通量の増加とともに、この区間で渋滞が発生するようになりました。そこで渋滞解消のために車線数を増やすことになったのですが、その計画は……

1. 上り線を下り線にして、下り線を合計4車線にする
2. 上り線は別に3車線増設する

と、かなり大胆なものでした。この工事は1983年6月に計画され、完成したのは1991年12月。こうしてこの区間は上り線3車線、下り線4車線の計7車線となり、“あの分岐”も誕生したのです。

この区間は東名高速の中でも特におもしろい区間で、右ルートと左ルートが並走しているかと思ったら、上り線と下り線がクロスします。また、急カーブに急勾配が続くものの、道路にメリハリがあり、秋になると紅葉した山の景色が見られるなど、自然と調和する高速道路が楽しめる、魅力的な区間なのです。

ネタと美味いものの宝庫、東名・静岡エリアへ

そこはまるで「足柄サービスエリアランド」樹木に囲まれたサービスエリア

右ルート、左ルートが合流し、静岡県に突入すると足柄SA下り線が見えてきます。ここは2階の展望デッキから、天気がいい日は美しい富士山の姿が楽しめます。また、足柄SAは東名高速の中では特に緑の多いサービスエリアで、工事前から当地で生える樹木をそのまま活用し、サービスエリアが樹木で囲まれた設計になっています。本線側から見ても樹木で覆われており、内部の様子が見えにくくなっています。

これは、緑の多いエリアにすることで、ドライバーが落ち着いて休憩できるように、と配慮された設計なのです。また、サービスエリア内から富士山以外の景色をあえて見えないようにすることで、「足柄サービスエリアという世界の中にいる」と感じてもらい、利用者がよりサービスエリアを楽しめるように、さらに、ここから先も安心して運転できるよう、ゆっくりと休憩できるスペースにする、という意図が込められているのです。


周囲を見えなくすることによって、より世界観を感じやすくする、それは某有名テーマパークにも通じる考え方です。サービスエリアやパーキングエリアは、周囲の造園にも注目して立ち寄ると高速道路はもっと面白くなりますよ。

生まれは日本最古のパーキングエリア、大人気のハイウェイフード「アメリカンドッ君」の歴史

御殿場JCTから新東名高速へスイッチせずに、そのまま東名高速を走り続けると、駒門PAが見えてきます。本稿はここまで東名高速“下り線”を中心にお話してきましたが、駒門PAでオススメしたいのは、上り線。ここでは少し方向を変え、駒門PA上り線のネタをお伝えします。さて、駒門PA上り線は東名高速で最古のパーキングエリアであり、売店が収まる建物も、改修を続けながら現在まで生き残った年代物です。ここの名物はなんといっても手作りの「アメリカンドッ君」です。さまざまなメディアで紹介される人気グルメですが、誕生したのは今から15年程前の2006年1月初旬です。

そもそも、「アメリカンドッ君」の名を持つ前から手作りアメリカンドッグとして売られていたのですが、あるテレビ番組で紹介されたことで、その存在が一挙に知られるようになったのです。しかも、その番組が放送されたのは2005年のクリスマスイブ。年末年始の帰省シーズンだったことも影響し、かつては1日に10本売れたら多い方でしたが、1日に100本以上売れる大ヒット商品になったのです。

ところが、お正月を過ぎると、徐々に売れ行きは落ちてきます。「せっかくテレビに取り上げられたチャンスを生かして、何か特別なアメリカンドッグにしたい」ということから誕生したのが、焼き印で顔を付けた「アメリカンドッ君」だったのです。かくして生まれたアメリカンドッ君は、いまでは駒門PA上り線以外でも販売されるようになり、最大で1日に3000本が売れる名物ハイウェイフードとなったのです。

アメリカンドッ君と他のアメリカンドッグの違いとは?

アメリカンドッ君の特徴は、ボリューム感のあるフォルムにあります。ソーセージに生地をからめて、タテ型のフライヤーで揚げることでこの形になるそうですが、ナスにも似たフォルムが一見、顔の形に見えることから、かわいい顔を焼き印で描くことが考案されたのです。

また、アメリカンドッ君には専用のフライヤーがあり、他の揚げ物と混ざらないように丁寧に揚げることで、生地のふわふわ感と甘い香りが続くのもポイントです。さらに、アメリカンドッ君は皮なしのソーセージを使っているのも、こだわりのひとつ。皮があるとそこに油が溜まってしまい、やけどをしてしまう可能性があることから、皮なしのものを使っています。そして、その太さもポイントで、他のアメリカンドッグよりも太めの2.7cm径のソーセージを使い、ボリューム感が楽しめるのです。

さらにさらに、生地づくりに使う水は、アメリカンドッ君に使われる粉と偶然にもマッチしたという、駒門エリアに湧く富士山の伏流水(バナジウムを含んだ天然水)。ここまでこだわって生み出されたアメリカンドッ君なのですから、人気になったこともうなずけます。みなさんも、駒門PA上り線を訪れた際は、ぜひお試しを。

ちょっと一休み。東名高速と新東名高速の使い分けポイント

東名高速は2021年現在、全区間開通から50年以上が経過し、首都圏と中京圏を結ぶ重要な高速道路としての地位を獲得しましたが、一方で老朽化に伴う修繕工事や、海沿い区間の高波による通行止め、交通集中による慢性的な渋滞など、課題もさまざまです。こうした課題を解消すべく、東名高速のバイパスとして供用されたのが新東名高速です。新東名高速は、東名高速最大の欠点であった地形依存の急勾配、急カーブを極力なくすように設計されています。

並行しているからこそできる、from東名to新東名の華麗なる連係プレー

新東名高速は2012年に御殿場JCT~浜松いなさJCT(引佐連絡路を経由して三ヶ日JCT)間が開通し、2016年に浜松いなさJCT~豊田東JCT(伊勢湾岸道を経由して豊田JCT)間が開通したことで、御殿場JCT~豊田JCTまでの完全ダブルネットワークが実現しました。また、東京側も2020年までに海老名南JCT~伊勢原大山IC(圏央道を経由して海老名JCT~海老名南JCT)までの区間が開通していて、2023年までに伊勢原大山IC~御殿場JCTも開通予定で、これによって新東名高速が全線開通となる見込みです。

さて、ここで、改めて並走する2本の高速道路を見てみますと、東名高速と新東名高速は、御殿場JCT~豊田JCTまでの区間に2箇所の連絡路(清水連絡路と引佐連絡路)があることがわかります。実はこの区間を走行する方法はなんと8通りもあるのです!

例えば、東京方面から来て、御殿場JCTで新東名高速に入ったものの、「東名高速の浜名湖SAに寄りたくなった」としましょう。そんなときは、清水連絡路を使って東名高速にスイッチします。その後、引佐連絡路で新東名高速に戻る、ということも可能です。

また、東名高速で突発的な通行止めが発生した場合、連絡路経由で新東名高速にスイッチすれば、渋滞を回避できる可能性もあるのです。これがダブルネットワークの利点です。

メリハリある線形の東名、緩やかな線形の新東名

東名高速と比べて緩勾配、緩カーブになった新東名高速は、一定の速度で走り抜けたいドライバーにとっては快適な路線です。ところが、これには意外な「罠」が潜んでいます。それは「散漫になりそうな意識との戦い」です。

新東名はこのように、カーブの少ない線形が続きます。

東名高速は地形に沿った線形に設計されています。これは「コストのかかるトンネルや橋梁の建設を避けるために地形に沿わせた」という理由がありますが、もうひとつ、「線形に変化を与えて散漫になりがちな意識を運転に集中させる」という理由もあります。開通時期が古い高速道路にカーブが多いのは「意図的にそうした」という面があるのです。

東名高速と新東名高速のダブルネットワークが実現した今、十分に休息した体力のあるドライバーさんは新東名高速を、逆に体力にちょっと自信がない、というドライバーさんは東名高速、といった使い分けも可能です。もっとも、いずれの場合も睡眠不足や体調不良の状態で高速道路を走るのは絶対ダメ。ドライブを楽しむ前にはしっかり休んで、走行中もこまめに休憩することをお忘れなく!

変な名前のメニューがある愛鷹PA。そのキニナル内容とは?

東名高速をさらに走ると、愛鷹(あしたか)PAが見えてきます。ここは、トラックドライバーのみなさんの間では大人気の休憩ポイントなのですが、その理由はとにかくお腹いっぱい食べられる食堂があるから。そして、食堂のスタッフさんによる、サービス精神あふれる「ある戦い」が繰り広げられ、訪れる人を飽きさせないからです。

食堂の大人気メニューは「焼肉定食」で、820円という価格ながら、ご飯と味噌汁がおかわり自由。このガッツリ感が話題を呼び、度々テレビでも取り上げられるほどです。そしてこの人気ぶりが、「人気メニュー」の座を奪い合う、メニュー同士の戦いの火蓋を切ったのです。

焼肉定食の人気にジェラシーを燃やした丼ぶりメニュー勢が、「打倒焼肉定食」を掲げて打ち出したのが、その名も「ジェラシー丼」です。ニラを追加して辛めに仕上げたこの丼ぶりは、見事愛鷹PA下り線メニュー人気No.1の座を奪いとったのです。

下段中央が、「ジェラシー丼」。その他にも「燃えて豚ちゃん丼」など、ユニークなメニューがたくさん。

戦いはさらに激しくなっていきます。今度は麺類勢がNo.1を目指した結果、キャベツがたっぷりのったピリ辛ラーメン「しっとしてご麺」が爆誕したのです!このメニューが見事No.1を取れるかはみなさんの応援次第。ぜひお腹いっぱい食べて、応援してください。

なお、こういったメニュー設定の背景については、メニュー表などには一切書かれていないのですが、食堂で働く方々の「訪問客を楽しませたい」という工夫のたまもの。ユニークなメニューの裏側にある思いを想像すると、食事の時間がもっと楽しくなるかもしれません。

富士川SAと浜名湖SAから学ぶ「分離式」と「片側集約式」「上下集約型」の違い

サービスエリア、パーキングエリアにはさまざまな形があります。一般的なのは「上下分離式」で、上り線と下り線にそれぞれ施設が存在する形式です。これに対し、「片側集約式」は上り線か下り線のどちらか片方の土地に集約した形式です。さらに、「片側集約式」のなかでも、施設が上下線共通か分離しているかで、「上下集約型」「上下分離型」として区別されます。ちょっとややこしいので、以下の図のように整理してみます。


景勝地が上り線、下り線のいずれかにあった場合、土地になんらかの制約があった場合など、片側集約式が採用されます。そして、東名高速では「浜名湖SA」が片側集約式の代表例といえるでしょう。ここは浜名湖という景勝があったことから、サービスエリアを設置するに相応しい場所として選ばれました。

さて、景勝地といえば、富士川SA下り線を話題から外すわけにはいきません。

ご覧のように、同サービスエリアは東名高速のなかで富士山が一番綺麗に見える、といわれる場所です。しかし、この富士山の絶景の影響もあり、サービスエリアとしての構造が変わってしまう、という興味深い歴史をたどったのです。現在では富士川SAは「上下分離式」のサービスエリアですが、東名高速が全区間開通した当初は、施設が下り線側に集約された「片側集約式」で、さらに施設を上下線共通とする「上下集約型」でした。

しかし、高速道路利用客の増加、そして富士山見物客の増加にともない、富士川SAはいつ訪れても駐車場は満車で、本線まで渋滞が続くようになってしまったのです。長引く混雑を解消するべく、富士川SAの上下線を分離することが決定し、2000年になって現在の位置に富士川SA“上り線”を移設し、富士川SAは上下線に分離されました。

さあ、絶景を楽しんだら、いよいよ旅は終盤。クルマを走らせ、愛知県に突入です。

まもなく終点。愛知エリアをめぐる

下り線のみにあるパーキングエリア、豊橋PAで高速道路の歴史を感じる

愛知県に入って少しすると、豊橋PA下り線が見えてきます。ここが誕生したのは2019年4月と、比較的最近ですが、ここにはちょっとおもしろい遺構があるのです。

これ、なんだかわかりますか?ここにはかつて「チェックバリア」という設備があり、その名残なのです。チェックバリアとは、いわば検札所。かつての高速道路では、インターチェンジ入り口で渡された通行券(当初はパンチ式カード)を、チェックバリアで新しいものに交換する、というプロセスを採用していたのです。途中でチェックをはさむことで、キセルなどの不正利用を防ぐのが、その目的でした。

しかし時は流れ、磁気カードシステムの登場、ハイウェイカードの誕生を経て、ETCが生まれ、不正利用が減少していくと、チェックバリアはその役目を終え、次々と廃止されていきました。

「豊橋本線料金所」の名で稼働していた豊橋のチェックバリアも、2007年に役目を終えましたが、その跡地がパーキングエリアとして再利用されたのです。東名高速下り線では、浜名湖SA~美合PA間で、深夜の時間帯に駐車場の大型車マスが混雑しており、その緩和策たる新たなパーキングエリアの設置場所として、豊橋が選ばれました。現在は、大型車駐車マスの予約システムが社会実験として導入されており、豊橋PAは東名高速の過去と未来を感じられる場所になりつつあるのです。

「上郷SA」が「豊田上郷SA」へ。名前変更は珍しいことなのです

さあ、東名高速も残すところ40kmほどとなりました。ここに東名高速下り線では最後のサービスエリア「上郷SA」があります。このサービスエリアがあるのは豊田市ですが、名称の由来は豊田市に編入した上郷町に由来します。現在ではトヨタ自動車の上郷工場があることでも知られる場所です。

このサービスエリアは周囲に特徴的な景観がなかったため、施設やトイレをサービスエリアの内側に配置して、利用者が高速道路の景色を楽しめるように工夫していました。

また、下り線の敷地が狭かったため、当初はレストランを上り線のみに配置し、下り線からもレストランが利用できるよう、上り線と下り線が行き来できる跨道橋が造られました。跨道橋は現在でも利用可能で、東名高速本線をクルマが行き交う様子が楽しめます。

さて、これまで約50年もの間、「上郷SA」の看板を掲げていたサービスエリアですが、なんと「豊田上郷SA」へ名称を変更することが発表されました。こうした名称変更はかなりレアな出来事なのです。

どうやら、“豊田”上郷SAになる準備はできている様子……。(2021年1月撮影)

変更にいたった理由のひとつが、上郷SAに新たに設置されるスマートインターチェンジの利便性向上です。実際に利用する地元の方や自治体から、より知名度の高い「豊田」を付加することで認知性が向上するとの意見があり、それにあわせてサービスエリア名も近く名称変更される(編注:2021年02月12日、NEXCO中日本は3月27日のスマートインターチェンジの開通に合わせて、サービスエリア名を変更することを発表)こととなりました。「上郷」の名前が消えるわけではなく、より分かりやすい名前になることで、サービスエリアとスマートインターチェンジは今後多くの人に利用されていくことでしょう。

東名高速から名神高速へバトンタッチ、でもキロポストは続く

お疲れさまでした。東京ICからスタートした東名高速は、346.7kmの長い道のりを経てまもなく小牧ICでゴールを迎えようとしています。もっとも、終点といっても出口に追い出されるわけではなく、引き続き高速道路は続いていきます。そう、そのまま名神高速に引き継がれていくのです。

路肩にひっそりと「E1名神」の標識がありますが、意識していないと東名高速から名神高速にバトンタッチしたことに気付きません。さらに、高速道路の走行距離を表すキロポストも、東名高速から引き継がれて、346.8、346.9、347……と続いていくのです(ちなみに、路線が変わってもキロポストが延長していくことは数ある高速道路のなかでも珍しいことなのです)。そして、私たちの旅もまだまだこれから。東名高速以外にも全国に高速道路は広がっていて、その分、おもしろいネタもたくさんあるのです。いまは気軽に旅に出られる状況ではなく自重が必要ですが、また機会があれば、みなさんをめくるめく高速道路の旅にご案内します。それでは、安全運転で高速道路を楽しんでくださいね!


日本サぱ協会

・著書『東名・名神高速道路の不思議と謎』 (じっぴコンパクト新書)、『一度は買いたいSA・PAの「五つ星みやげ」』(サンエイ新書)

ブログ:*雨天決行*
Twitter:@Milkumatea

※緊急事態宣言などの影響から、SA・PA飲食関連施設の営業が制限されている場合があります。営業状況の詳細は、こちらのサイトからご確認ください。

編集:はてな編集部

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